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恋愛部長「大人の恋の歩き方」vol.22 あなたの恋をぶち壊す、その執着の正体

恋愛部長「大人の恋の歩き方」vol.22 あなたの恋をぶち壊す、その執着の正体

前回のお話… vol.21 忘れられない恋だけが恋?


突然ですが私、昔っからすごい集中力の持ち主なんですよね。本とか漫画とか読み始めると、終わるまではずっとやめられないタイプ。ガーッと集中して、寝ても覚めてもそのことばっかり。

この集中力、勉強とか仕事に向いてくれればいいんですが、恋愛に向くと百害あって一利なし。ほんと、それ。「集中する」といえば聞こえはいいですが、要するに、病的なまでの「執着」になってしまう。
で、私、長年の恋愛人生の失敗を振り返ると、ほんとに、この「執着」こそが、恋愛のすべての敵だったんだな、と思うんです。

どんな素敵な恋愛も、相手に執着し始めると、おかしなことになる。うまくいっていて、ワクワク楽しかった恋が、七転八倒する苦しみに変わる。なぜ?ついこないだまでは楽しかったのに!彼に追いかけられて、わりと優位に立ってたはずなのに。いまは苦しい!彼のことばかり考えて、胸が痛い!

そう、それは、恋が苦しいのではない。愛しているから苦しいんではない。執着しちゃってるから、苦しいんです。

相手の態度がどうであれ、たとえ、相手が自分のことを大事にしているとわかっていても。執着の度が行き過ぎると、相手の態度、行動、言動にかかわらず、何もかもが不安で、満たされない気持ちになってくる。

例えば、送ったメッセージが既読のまま半日返事がない。普通の心理状態なら、相手が好きな人でさえなければ、「ああ、今日は仕事忙しいんだな・・」で済む。でも、いったん相手にロックオンして、執着している状態だと、急激に不安に陥ってしまう。「私が送ったメッセージの何か気に入らなかったんだろう?」「私のことなんかわずらわしいのかな?」「前みたいにもう私が一番好きなわけはないの?」「もしかして、最初っから私のことなんか、そんなに好きじゃない???!!!!」
ここまで考えが振り切れるまで、5秒。はたから見ていれば、いかに根拠がなくくだらない妄想かとわかるんだけど、当事者の私には、その冷静さがありません。

で、結局どうなるかというと、我慢の限界まで不満をため込んで、最後に大爆発。「もう別れるしかないよね?!」「だって私のこと好きじゃないんでしょ??!!」そりゃ、相手にしてみれば、青天の霹靂です。え?いきなりどうしたの?って。(爆)

私がかつてやらかした失恋は、大体こういう「いきなり爆発」「いきなり悲劇のヒロイン」が原因だった気がします。相手に非はほぼありません。私が、些細なことに気を取られ、悲劇的な妄想を膨らませ、勝手に自爆したことが原因。いま冷静になって振り返ると、ほんとくだらないことをいちいち気にかけてたなー、と呆れます。実際、相手に「君の妄想力にはついていけないよ」とぼやかれたこともあります。

でもそれだけ、恋愛中の私は全面的に依存しちゃってるんですよね。心理的に。

一日の関心事の一番が恋愛で。相手が自分をどう思っているかが大事。それを考えていると、もういても立ってもいられなかった。それは、恐ろしいまでの執着です。

で、ある時、この執着って、なんなんだろうと考えたんです。なぜ、私はそんなにも相手に執着するのか、と。

それは、人生何十回目かの失恋をした時でした。「もう彼しか考えられない!」と思った彼に去られ、忘れたくても、どうしてもあきらめがつかず。彼との写真ややり取りしたケータイメッセージなんかを毎日毎日眺めて涙に暮れておりました。「だって、彼みたいな人はもう二度と出会えないし、あんな素敵な恋愛をすることはないに違いない!」と私は絶望していたんです。

でも、ふと考えた。「もう彼しかいない、という執着が、実はこの苦しみの原因なのでは?」と。

二度と戻ってこない彼を想い続けていても未来はないので、なんとか立ち直るには、この執着という化け物をなんとかしなきゃいけないんじゃない?と思ったんですね。そもそも執着とは、「彼は唯一無二」という発想に起因しているんだと思うんです。彼は他人と、こんなに違う。こんなに素晴らしい。だから、彼にとって代われる人はいない。その、「この人しかいない」という思い込みが、執着を加速させる。もしも「彼のような人は他にもいくらでもいる」と思えていたら、たぶん、さっさと次の恋を探しに出かけ、軽やかでいられたはず。でも、そう思えないのが、執着。

では、唯一無二って、どうして思うんでしょうか。理由は、人それぞれだと思います。「東大や京大出」の学歴かもしれないし、「弁護士とか医者、もしくはIT企業の社長」みたいな肩書かもしれない。「甘え上手で褒め上手」な性格かもしれないし、「ものすごい芸術的才能や、未来を見通す天才的な慧眼」とかかも知れません。大体はそのポイントが、単体ではなく複合体になっているせいで、ますます希少価値が上がって余計「唯一無二」になっていくんだと思います。

たとえば、「東大出の有名雑誌編集者で、才能にあふれ、茶目っけのある彼」とかね。魅力的な要素がいくつも組み合わさるほどに、100分の1しかいない価値が、100×100×100分の1(つまり1000000分の1!)の希少価値になる、みたいな。

そうやって、この人はもう二度と私の人生では出会えない人!と思えば思うほどに、その人への執着は強くなります。そして、執着すればするほどに、失うのが怖くて、常に不安や恐怖にさらされるようになってしまうのです。

では、そんな時はどうすればいいのか。執着はどうやっても解けないのでしょうか?私が思いついたのは、「魅力の因数分解」です。

いろいろな魅力要素を複合的に持ち合わせる相手に、「もうこんな人いない!」って思い込むんだから、その、自分を縛り付ける魅力的な要素を、分解して、分析しちゃえばいいんじゃないかと(笑)。

ぼや~っと感覚的に、「こんな人いない」って思うからこそ、わけがわからず苦しいのです。客観的、理性的に分析してみれば、もしかしたら対処法がわかってくるかもしれないじゃないですか。

で、さっそく私は当時執着していた彼について、魅力の要素を分解して、分析してみました。その結果、彼が唯一無二だと思われる理由は、実はたったひとつの要素に起因していることに気づきました。それは、彼が、「海外に住む外国人」だった、ということです。

もちろん、複合的な魅力はありました。何カ国語も操って国際的な活躍をする職業だったり、情熱的でロマンチックで、女性差別なんかがまったくない知的な人だったり。彼との恋は、仕事先の海外で知り合ったこともあって、それはロマンチックでした。

でも、それもすべては、彼が「海外に住む外国人」だからなんじゃないかなと思います。何カ国語もしゃべれるのは彼の国では当たり前のことでしたし、彼の考えや、語ることが新鮮だったのも、彼が、ヨーロッパの人だったから(彼の本国では当たり前の発想だったのかもしれない)。そして、そもそも彼が海外に住んでいたからこそ、私は彼によって、息苦しい日本を抜け出して、新しいキラキラした世界に連れ出してもらえる!と思ったんだと思います。

彼が私にとって特別で唯一無二だったのは、それは当然です。日本に住んでいれば、ヨーロッパに暮らしている彼のような人と、出会う機会なんかないに等しいのですから。

でもそれは、出会いの希少性の問題であって、決して、「彼のような人はもういない」わけではないのです。

たとえば、もし私がヨーロッパに移り住んだなら、彼のようなヨーロッパ人は全然珍しくもないでしょう。そして、ロマンチックに恋を語ってくれる人も、きっとほかにもいたはずです(日本人以外は大概の国の男性がロマンチックに口説いてくれます)。さらには、海外に住みたい!という願いがあったとしても、それは、自分の力で叶えることができるのです。別に彼に頼らなくったって、何とかなる部分だったりします。つまり彼への執着とはすなわち、私自身の中の、理想の人生が原因だったというわけです。

魅力を因数分解していくと、その要素の中のどこが自分にとっての最重要点かが見えてきます。私の場合は、彼への執着は、結局は自分の中の「海外に住みたい」「対等な関係の相手と」「ロマンチックな恋をしたい」という単純な願望に帰結していった、というわけです。

であれば、です。私にとって人生のパートナーは、必ずしも彼である必要はない、のです。

私の隠れた願望の前に、その時は確かに、彼が理想的な相手だったでしょう。でもそこまで執着して、彼しかいない、と思い込むのは早計です。

私が最重要とする要素を満たしていて、なおかつよりぴったりの相手がいる可能性だってあるんですから。私の場合は、「海外で活躍していて」「外国人的なものの見方、考え方」をしていれば、日本人だっていいわけです。そうやって、可能性を広げることで、ようやく、「彼しかいない」という執着は解くことができるのです。なおかつ、自分がどう生きていきたいのかの指針が見えることで、本当に探すべき相手を考え直すことができるのです。

恋をしたら執着したくなるのは当然です。こんな人はもういない、この人しかいない!と思い込みたいのは当然の成り行きです。でも、よくよく考えてみれば「この人がいなければ成立しない人生」なんてありません。そこまで相手に依存する人生は、決して健康的ではありません。

一番いいのは、相手がいるいないに関わらず、自分の目指すべき未来が見えていて、自分の力でそこへ到達しようと努力できること。一人でもきちんと完結して幸せでいられる。自分を幸せにしてあげることができることです。

そのうえで、隣に考えが同じ伴走者がいる、それこそが、最高の関係です。

執着とは、自分の存在をなくしてしまい、相手の存在に全面的に依存することです。「この人がいなければ幸せになれない」と思い込み、「この人でなければならない」と思い詰めることです。たとえば、「この人と一緒にいるときだけは楽になれる。彼だけが私を救ってくれる」という相手に執着してしまうとしましょう。そうなると、彼への執着は到底解きがたくなるはずです。彼がいなければ自分の存在自体が危うくなってしまう、なんて状態は、依存以外の何物でもないからです。

でも本当は、そんなことはありません。彼がいなければ幸せになれないのも、彼だけが自分を理解してくれて、本当の自分を解き放ってくれるのも、幻想です。思い込みです。魅力を分解していってみれば、きっと、彼だけが特別ではないとわかるはずです。そして自分の願望が、実は何なのかも。

もしかしたらそれは、必ずしもパートナーに叶えてもらわなければならないことではないかもしれない。一人信頼のおける友人ができれば満たされることなのかもしれない。

そう、すべての執着は、思い込みなのです。

その正体を突き止めていけば、その執着の原因はほかのものに置換可能だったりする。そしてそれは、恋の皮をかぶった、自分自身の隠れた野望だったり、願望だったりするのです。

もしも今、どうしようもなく誰かに執着してしまって苦しかったら、一度冷静に、その人の魅力を分解していってほしい。そして、その要素に対して、自分が何を期待しているのかを考えてみてほしいのです。

案外、その正体が見破れた瞬間に、その執着は、するするとほどけていくかも知れませんよ。

恋愛部長 れんあいぶちょう

20代に恋愛で失敗を繰り返したことから、様々な独自の恋愛理論を編み出し、2008年から恋愛ブログ「恋はいばら道」をスタート。過去の失敗談を披露したり、多くの人の恋愛相談に乗ったりしている。私生活では、38歳で留学を機に当時結婚を考えていた彼氏と別れ、40歳で知り合った現在の夫と結婚、出産。現在は、広告代理店で働くかたわら、1男1女を子育て中。著書に、『28歳からの必勝ルール~恋愛部長の恋のムチ』『にっちもさっちもいかない恋がうまくいく本』(大和出版)。

HP: http://renaibucho.com
NOTE(恋愛相談): https://note.mu/renaibucho


カシワイ

装画や挿絵などのイラストレーションや漫画を描く。リイド社より単行本『107号室通信』を刊行。

HP: sankakukeixyz.wixsite.com/kfkx
instagram: @kfkx_
twitter: @kfkx_

Text: Renaibucho Cover Illustration: KASHIWAI

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