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松田聖子の80年代伝説 Vol.1 永遠のトロピカルリゾートが広がる1stアルバム『SQUALL』

松田聖子の80年代伝説 Vol.1 永遠のトロピカルリゾートが広がる1stアルバム『SQUALL』

昭和から令和へと変わってもトップアイドルとして輝き続ける松田聖子さん。カセットテープ1本から彼女を発見し育てた名プロデューサー・若松宗雄さんが、24曲連続チャート1位という輝かしい伝説を残した松田聖子さんのシングルと名作アルバムを語る連載。80年代カルチャーで育ったライター・水原空気がインタビュー。

第1回目は聖子さんの初々しいパワフル・ヴォーカルが光る1stアルバム『SQUALL』について。


 

渡されたバトン。80年代の扉は松田聖子が開いた。

ライター水原(以下M) 当時の聖子さんはどんな女の子だったんですか?

若松宗雄さん(以下W) 初めて会ったときは良家のお嬢さんという感じで。清楚なブルーのワンピースを着ていました。雑誌セブンティーンとCBSソニーが主催したコンテストの福岡大会で優勝して。でもお父さんの大反対にあって全国大会は辞退。そのときのテープを聴いて、ものすごい才能を感じまして。それで何度も福岡まで会いに行ったんです。

M 若松さんはキャンディーズを手がけた後ですよね?80年代に向けて新人を発掘したいと?

W 常に新しいことをしたいと思ってました。そんなときに聖子の明るい伸びのある歌声と出会い、『SQUALL』は、いま改めて聴いても、高校を卒業したばかりの溌溂とした声がいいですよね。

M 1980年は山口百恵さんが引退した年で、百恵さんも同じレコード会社。『ザ・ベストテン』という生放送の歌番組で、一度だけ共演されたのは印象的でした。百恵さんがラストシングル『さよならの向う側』でランクインして、聖子さんが『青い珊瑚礁』で1位で。

W 百恵さんが陰影のある和の魅力だとしたら、聖子は明るい洋の魅力。時代の区切り目と言われましたが、私たちは目の前のことを夢中でやっているだけで。

M この時期、一般の人も海外に出かけたりスキーやリゾートを楽しんだり。バブル期に向けて日本がますます上向きになっていき。1stアルバム『SQUALL』にも爽快なリゾート感が溢れています。

W 例えばシングル『青い珊瑚礁』のタイトルは、日比谷のスカラ座で同じタイトルの映画の予告編を目にしまして。その印象が鮮烈で付けたんです。南の海っていいなぁと。確かに時代性もあったかもしれませんね。

POPなピンクのジャケットで時代も上昇気流に!!

M 『SQUALL』のピンクのジャケットはどんなイメージで?

W カメラマンの武藤義(ただし)さんが、南太平洋の詞の世界と聖子をイメージして撮ってくださって。髪を濡らすアイデアは、写真のバリエーションの中で最終的に私が選んだものです。アルバムの世界観を、強いメッセージで打ち出せたと思います。

M まさにスコールに打たれた感じですからね。結果的に大ヒットしレコード店にこのジャケットが並ぶさまは圧巻でした。70年代までのアイドルはアルバムは売れないという印象でしたが、聖子さんがそれを変えて。その証拠に、その後複数のアイドルがオーディション番組等で、聖子さんのシングルではなくアルバムの曲を歌って受けています。

W 確かにアルバムのクオリティも非常に高いものが残せました。アイドルにありがちなフレーズもないし。歌謡曲の作家ではなくロックやニューミュージックと呼ばれたジャンルの方が関わってくださったので。作曲家の小田裕一郎さんは、『アメリカン・フィーリング』という曲を自分が大好きだったので思いきってオファーしたらご快諾いただき。南の海の雰囲気をキーに、一緒にアルバム全曲の世界観を作っていただけたと思います。『青い珊瑚礁』も冒頭のフレーズは小田さんのアイデア。ご自宅での打ち合わせの際に、その場でギターで作ってくださって。作詞家の三浦徳子さんも小田さんの世界に合わせて文学的な詞を書いてくださった。

M 実は作曲家の筒美京平さんにも初期にオファーされたと聞きました。

W そう。歌謡界の大御所にね。でも順番待ちが多くて叶わず。でもそれが結果的に良かったと思います。自分の感覚を頼りにお願いしてみたら、作家陣がいままでにない新鮮な方々になりました。

M 編曲家の信田かずおさんも小田さんの紹介で?

W はい。信田さんもTOTOやボズスキャッグスなど洋楽的なAORを意識して作ってくださった。本格的な大人のポップロックに聖子の歌の娯楽性が加わって、極上のサウンドが生まれました。

M 聖子さんのレコードは、今でもアナログプレーヤーの視聴に欠かせないそうです。誰もが知る楽曲であり、音響メーカーでもあるソニーが創立したレコード会社だけあって音質もいい。そしてミュージシャンが豪華でした。

W ミュージシャンのクレジットも楽曲ごとに入れました。アイドルとしては初めてだったかもしれません。そうするとリスナーのみなさんも音楽的な意識で楽曲を聴いてくださるので。今でもそういった部分が支持されているのは嬉しいことです。

M ファーストアルバム『SQUALL』の曲について。1.『〜南太平洋〜サンバの香り』、2.『ブルーエンジェル』は、まさに南太平洋の雰囲気ですね。

W シングル候補を寄せ集めたわけではなく、コンセプトアルバムとしてストーリー展開しています。

M タイトル曲の3.『SQUALL』や6.『ロックンロール・デイドリーム』もファンにおなじみで、いま聴いても心躍ります。

W アップテンポでコンサートに欠かせいない曲になりました。アレンジは共に大村雅朗さん。大村さんも洋楽的センスが抜群で、その後の聖子サウンドに欠かせない存在となりました。なんといっても『SWEET MEMORIES』の作曲も大村さんですから。

M 『SQUALL』はハイトーンのヴォーカルがサビで二重になります。

W 重ねていくのは小田さんのアイデアだったと思います。聖子についてはいわゆる歌手の音域にとらわれずに、曲作りしてもらいました。ここから裏声になりますよという打ち合わせはしているんだけど、とらわれすぎると、どんどん曲がつまらなくなる。キーを半音下げると歌いやすくても、そのままの方が歌に表情やインパクトが出るので。すごく感覚的なことですけど、聖子もパンチのある声で自分の歌にしてしまうので、常に楽しい作業でしたね。

M  後半はメロウな曲調も。

W 1stアルバムから既にいろんなタイプの曲を歌っていました。鍵になるフレーズをつかんで、より魅力的にしてしまうのは松田聖子の天賦の才能。少し落ち着いた曲調も歌えてしまうので、4.『トロピカル・ヒーロー』や7.『クールギャング』など、メリハリのある大胆な構成ができました。

M ラストは、夏の終わりを感じさせる9.『九月の夕暮れ』10.『潮騒』。

W 季節感を常に大切にしていたので。エンディングに向けての展開も重要なファクターでした。

M 曲順も若松さんが?

W もちろんです。帯のキャッチフレーズも全部。

M 昔レコードには宣伝コピーが書かれた帯が巻かれていましたよね。「珊瑚の香り、青い風、いま聖子の季節」。ジャケ買いする人も多くて。

W タイトルと写真とキャッチコピーで買う買わないが決まりますからね。だからこそビジュアルのメッセージは大切でしたし、ラジオやテレビの歌番組も重要でしたね。

 

続きはVol.2で。デビュー当時の快進撃、シングル『裸足の季節』『青い珊瑚礁』のレアエピソードが満載です!

Profile

若松宗雄/音楽プロデューサー わかまつ・むねお

一本のテープを頼りに松田聖子を発掘。芸能界デビューを頑なに反対する父親を約2年かけて説得。1980年4月1日に松田聖子をシングル『裸足の季節』でデビューさせ80年代の伝説的な活躍を支えた。レコード会社CBSソニーではキャンディーズ、松田聖子、PUFFY等を手がけ、その後ソニーミュージックアーティスツの社長、会長を経て、現在はエスプロレコーズの代表に。Twitter@waka_mune322、YouTube「若松宗雄チャンネル」も人気。

Text: Kuki Mizuhara Photo: Hiromi Kurokawa

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