カッコいい大人の男を模索する2人が、普段はあまり来ないという銀座にやってきた。とある日に、ゆるりと〝銀ブラ〟しながら、男の〝粋〟とは何か探し求める。
前編はこちらから
心に残る銀座の粋なエピソードは……柄本佑さんと太賀さんが銀ブラしながら考えてみた! 後編
太賀 今日行った「銀座しまだ」も、料理が本当にうまかった。すごかった。
柄本 カニクリームコロッケ(¥1,400)、衣とクリームがゼロ距離。あと、からすみそば(¥1,600)ね。僕、尿酸値が高くて、あんまり食べちゃダメなんだけど。本当においしかった。そばの香りもいい。
太賀 からすみ、たっぷりでしたもんね。きっと、今日で痛風にチェックメイトかもしれない(笑)。
柄本 このメニュー、もう、〝痛風〟って名前にしたほうがいいね。そう、この店の並びに「由松」という天ぷら屋があって、そこは津川(雅彦)さんに連れて行ってもらったことがある。
太賀 いいですね〜。
柄本 で、その後に「慎太郎」というクラブに行ったわけ。そうしたら、後日、ママの慎太郎さんから立派なお椀とお箸とお手紙をもらったの。ご贔屓にしてくれた挨拶ってことなんだろうけど、すごい場所で飲んでたんだなって思ったね。
太賀 すげー!
柄本 そうやって、先手を打つことが粋だよね。俺なんて後手人生だから(笑)。
太賀 でも、先輩に夜の銀座に連れて行ってもらうの、うらやましいです。
柄本 この業界は、先輩に奢ってもらうカルチャーが、まだあるよね。ただ、大体は断っちゃうんだけど。
太賀 そうなんですか!?
柄本 昔からね。でも、それは事前予約の場合。その日に「飲もうよ!」と盛り上がって行くみたいなフットワークは軽い。仕事関係なく、友だちとでも、「来週のこの日に飲みに行こう」と約束すると、日にちが近づくにつれて嫌になってきちゃう。「違うことができなくなる」って。「7時に集合だと……?俺が7時に何をしているかも知らないくせに……」とか思うのよ。相手と相談して7時って言ってるのにね(笑)。で、直前に「風邪引いちゃった」って連絡するの。
太賀 ドタキャンするんですか(笑)!
柄本 うん、俺はする。2日前の約束でギリかな。だって、その日に何をしているかとか、どんな気分かなんてわからない。
自分へのご褒美に贅沢をしてもいい。太賀 銀座のお寿司屋さん、予約が1年待ちのお店もあるじゃないですか。
柄本 絶対に忘れちゃう。ねえ、『人喰いの大鷲トリコ』ってゲーム知ってる?発売日が延期になって5年後に発売されたんだけど、予約した人には、ちゃんと5年後に届いたんだって。感動だよ。1年待って寿司を食べるって、そういう感じなのかな。そういうのんびりさって、粋だよね。
太賀 僕、もうひとつ、銀座でやりたいことがありました。「理容米倉」という有名な床屋さんで髪を切りたい。
柄本 バーバーってこと?
太賀 そうです。90歳くらいのおじいちゃんがやっていて、たしか、2万円くらいだったはず(スペシャルコース ¥18,900)。
柄本 何それ!
太賀 総理大臣とかが来てるらしいです。
柄本 なるほど、そういうことか。
太賀 名物店主の方がひとりで切っていらっしゃるみたいで。
柄本 髪型は、選べるのかな?でも、どうせならおまかせで切ってほしいね。
太賀 どんなカットなんですかね。
柄本 電気のヤツが出てきたら笑うね。ウィーンっていう……。
太賀 くっくっく(笑)。それは、ちょっとケンカになるかもしれません。きっと、カットはもちろん、その人と向き合う体験にお金を払うんだろうなって。
柄本 カットうんぬんじゃない何かがあるんだろうね。2万円で髪を切って、でも、そんなの一時的なものだし、すぐに伸びる。だけど、自分の身の丈に見合っているかどうかはわからないけど、高い金を払って、自分へのご褒美をあげるということが、あっていい気がする。30歳を過ぎてから、そう思うようになったね。
太賀 喜びですよね。
柄本 昔、友だちが「20万円の絵を買った」と言ったんです。そのときに、俺、とうとうやっちゃったなと思ったの。しかも、色紙くらいのサイズのもので、「それに20万円払ったの?」って。そいつにも、どう思うか聞かれてそう答えたし。でも、よくよく考えてみると、違うんだなって。その絵は玄関に飾られているんだけど、落ち込んで帰ったときにちょっと元気になったりするんだろうなとか、毎朝見るたびに違う絵に見えるのかなとか、そういうことを想像してみたら、割と安いのかなって思っちゃった。だって、すごく豊かな気持ちになれるから。そう思って、俺は蓄音機を買ったんです。
太賀 贅沢をすることに対して肯定的じゃない風潮もあるけど、合理的じゃないところに価値があったりするから。絵はネットで見れるけど、手元に置くことに価値があったり。蓄音機も、1000円で何万曲も聴ける時代だけど、1曲を7000円で買って聴くという。
柄本 4分のために、10円の針を1本使うからね。銀座は、そういう贅沢を受け入れてくれる街だと思う。クリント・イーストウッドの映画みたい。こまごましてなくて、おおらかにつかんでくる感じ。通い始めたらハマっちゃいそう。
銀座に似合うのは、余白のある女性。太賀 どんな女性と来たいですか?
柄本 100点っていうより、80点くらいの格好で来るような女性がいいな。20点ほどの余白を残しているような……。
太賀 好みのタイプではなく(笑)?
柄本 そうかもね(笑)。いや、ほかの街で100点を叩き出そうとする女性は、いいと思うんです。でも、銀座で100点を叩き出そうとする女性には、「あなたは、銀座という街で100点を出せると思ってんの?」って言いたくなる。その気持ちがもう、0点なんだよって。
太賀 技術点じゃなく演技点が0(笑)。
柄本 背伸びしたい気持ちはわかるけど、やっちゃだめ。
太賀 厳しい〜!
柄本 粋には、逃げ道があると思うんだ。100点を出したい欲望と戦って、やりすぎずに逃げ道を作ることがカッコいい。
太賀 それが20点の余白がある80点っていうことですね。勉強になります。
柄本 でも、銀座は100点を出した女も受け入れてくれると思う。でも、俺は許さない。銀座の優しさに甘えるな!
太賀 GINZA読者が震え上がるから、やめてください!80点の女の子と銀座でお買い物をして、100点に近づけるデートをするのも楽しそう。
柄本 たしかにね!
太賀 みなさん、銀座に来るときは、20点の余白を残してくださいね(笑)!
太賀銀座は〝贅沢〟を受け入れてくれるよね。
柄本その価値を教えてくれる街だと思う。
〝粋〟な店
銀座しまだ
カウンターメインの立ち飲みが楽しめる店。季節の食材を使った本格的な和食がつまみ。日本酒、日本ワインとともに。
住所: 中央区銀座8-2-8 高坂ビル1F
Tel: 03-3572-8972
営業時間:17:00〜23:00(22:30LO)
休: 日祝
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柄本 佑
1986年、映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。『素敵なダイナマイトスキャンダル』『きみの鳥はうたえる』に続き、主演映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』が現在公開中。
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太賀
1993年、東京都出身。主演映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』が公開中。ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系/日曜夜10時30分〜)に出演中。次号より、連載がスタート。お楽しみに。
Photo: Masumi Ishida Stylist: Michio Hayashi Hair & Make-up: Shinya Kawamura (mod’s hair_Tasuku Emoto)/Masaki Takahashi (Taiga) Text: Aya Shigenobu