昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.13は横浜、石川町駅のすぐ脇にある、ふわふわタマゴサンドが名物の「モデル」へ。看板がいっぱいある不思議なお店でもあるのです。
前回訪れたのは九品仏「パーラー ローレル」。
昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.13は横浜、石川町駅のすぐ脇にある、ふわふわタマゴサンドが名物の「モデル」へ。看板がいっぱいある不思議なお店でもあるのです。
前回訪れたのは九品仏「パーラー ローレル」。
石川町「純喫茶モデル」
石川町駅の北口改札を出て右にぐるりと回っていくと、すぐに見えてくるたくさんの看板。「純喫茶モデル」がこの場所にオープンしたのは1974年。それ以前に西区の伊勢町で10年ほど営業していたというから、厳密には1964年に開業した大変歴史のある喫茶店なのだ。店名はオーナーが「モデル」という言葉に憧れていたことに由来。オープン当時に洋裁を習っていて洋服のモデルもするうちに、自然とその響きに惹かれていたそう。店内にはオープン当時のハイカラな空気がたっぷりと残っている。本物のレンガのパテーションやステンレス製の天井、三角帽子のようなランプ、レースのカーテンなど、懐かしい70年代の少女漫画に出てきそうな空間にときめく。
ふわふわのタマゴサンドには、塩と胡椒をほんの少しかけるとさらに美味に!
イエローのシートに映えるメロンフロートの神秘的なグリーン。
タイル張りのテーブルも、いまや希少。大輪の花のような図柄がテーブルの上に円を描いて広がる。映えるメニューといえば、なんといっても出来立て熱々のタマゴサンドと涼やかなメロンフロート。イエローとグリーンは、時代を超えて愛される組み合わせなのだ。横浜中華街とは駅の逆側にあるので、ちゃんと場所を知っていないとたどり着けないけれど、少しずつ増えてしまったという看板が、まるで大勢で手を振ってくれているかのように迎えてくれる。その看板、何個あるかは現地でぜひ確認を。13個という説もあるけど自分が確認できたのは10個でした。
パフェやフードメニューもあるので、元町商店街に行く前に腹ごしらえもできます。もう一つの名物は女の子の横顔が描かれたコースター。独特のイラストが昭和っぽくておしゃれ。ぜひ記念に撮影したい。冷たいドリンクの足元に添えられて登場します。
この店の帰り道に聴きたい80年代の名曲
『メロンのためいき』
山瀬まみ
今回のおすすめは、少しアルトな歌声が光る山瀬まみさんのデビュー曲『メロンのためいき』。松本隆さん作詞、呉田軽穂さん作曲。文学的な松本さんの歌詞と、ユーミンらしい乙女心あふれる音階を何度でも聴いていたくなる名曲です。もっとカバーされるといいのに、といつも思ってしまうけれど、初々しい山瀬さんのオリジナルは超えられないのかもね。♪太陽がご機嫌斜めなの〜という始まりで一気に松本先生の世界へ。タマゴサンドとシートのイエローに映えるメロンソーダを見ていると、極彩色の夏の景色が浮かんできて、ついこの歌を口ずさんでしまうのです。
水原空気のひとこと
「純喫茶モデル」がオープンしたのは、戦後まだ20年も経っていない頃。まだまだ洋服は高価で、自分で作る家庭洋裁が全国的に流行していました。この時代どの家庭にもミシンがあって、型紙付きの雑誌や布屋さんも大人気。「モデル」の中にいると、本物のレンガやイエローのシートから1960〜70年代の景色が次々に思い出されてきます。お母さんが着ていたツイードの大きな千鳥格子がふと頭に浮かんだりして。少しレトロなファッションで訪れて、元町へ散歩してみるのもいいかも。
イエローの庇もシートの色とお揃い。
80年代好きライター。夏の扉を開け秘密の花園へ時をかける探偵物語。GINZAウェブ「松田聖子の80年代伝説」でインタビュアーも。