これまで数多くのクリーチャーを生み出してきた超オタク監督ギレルモ・デル・トロの最新作は、冷戦下のアメリカを舞台に政府の極秘研究所に囚われた魚のような不思議なクリーチャーと、そこで働く口がきけないイライザのラブストーリー。筋書きだけ聞くとディズニー映画感は否めないが、心配ご無用。そこはギレルモ監督、下ネタ、エロ、流血を可憐かつユーモラスにちりばめた大人のファンタジーに仕上げている。サリー・ホーキンスは、声以外の全身を使い、たくましくもチャーミングなイライザを好演。デル・トロ作品のクリーチャーとして常連のダグ・ジョーンズが“彼”を演じる。3月1日より全国公開。
©2017 Twentieth Century Fox
『リバーズ・エッジ』
岡崎京子が、1993年から94年にかけて漫画『リバーズ・エッジ』で描いた高校生たちの“終わりなき日常”と隣り合わせの“平坦な戦場”を、漫画原作の監督は初となる行定勲が実写化。スクリーンを前に、90年代当時の混沌と暗く乾いた空気に飲み込まれそうになった。無力で、無気力で、生きてることを実感できない。不安と焦燥感でまさに窒息寸前。90年代に生まれたキャストたちの声にならない声は、かつての私たちが発したものだった。不感症の主人公ハルナを演じた二階堂ふみはもちろん、いじめられっこの山田に扮した吉沢亮の、山田君は君にしか成し得ない感に拍手。そして、いつだってオザケンの曲は暗闇に差す光。2月16日よりTOHOシネマズ新宿ほか全国公開。
©2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
パキスタン出身でシカゴに暮らす男性コメディアン、クメイルはアメリカ人の大学院生エミリー(ゾーイ・カザン)と恋に落ちるが、同郷でイスラム教徒の花嫁しか認めない母に強いられ、隠れてお見合いをしていたことがバレて破局。ところが数日後、エミリーは原因不明の病で昏睡状態に陥ってしまう。ありきたりな難病モノね、なんて思うのは早い。この話、主演のクメイル・ナンジアニ(本名)と脚本家エミリー・V・ゴードンの実話なのだ。事実は小説よりも奇なり。多様性が問われる今こそ観てほしい、最高にキュートなロマンティック・コメディだ。2月23日よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開。
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