キリコ(柴咲コウ)の弟にして「真のインビジブル」キリヒト(永山絢斗)が現れた。姉と弟の対決!その中で志村(高橋一生)は最大の危機に陥るが……。『インビジブル』(TBS)6話を、ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが振り返ります。5話はこちら(レビューはネタバレを含みます)
高橋一生×柴咲コウ×永山絢斗『インビジブル』6話。父から犯罪英才教育を受けてきた姉弟の対決
事業を継ぐ難しさの物語
キリコ(柴咲コウ)の弟・キリヒト(永山絢斗)が、親切にも志村(高橋一生)に順を追って説明してくれたおかげで、6話開始早々インビジブルの真実がほぼ見えた。インビジブルとは、そもそもキリコとキリヒトの父を指していたこと、犯罪の英才教育を受けてきた姉弟が10代から父の仕事を手伝ってきたこと。さらにキリヒトは父を殺してインビジブルに成り代わり、金のためならどんな依頼も受け、関係ない人まで巻き込む“殺人コーディネーター”に成り果てていることもわかった。
強硬派・拡大路線の弟と父のやり方・伝統を重んじているらしき姉。姉弟間の方針にはズレが生じていた。内容こそ犯罪という非日常ではあるけれど、その実「事業を継ぐことの難しさ」を描く物語が突然ここに立ち現れた。
高橋一生×銀粉蝶の緊迫感
再び姉と事業を拡大したいキリヒトは「今受けている依頼のターゲットを一人でも救えたらキリコを諦める」と言う。キリコと警察は協力して犯人の“ドクター”、そして次に狙われるターゲットを探る。キリヒトは「警察がいかに無力か知ってほしい」「ハンデをあげる」とターゲット情報を知らせてくるが、一人はすでに死亡。警察はもう一人のターゲット、建設会社社長の中根沢(岡部たかし)を警護する。しかし、中根沢は隙をついて車で逃げ出してしまう。それを自転車立ち漕ぎで追いかけた志村はドクターの居場所に飛び込み、ドクターを拘束した……かと思いきや、その男(吉沢悠)は母の言いなりの助手に過ぎず、真のドクターは母(銀粉蝶)だった。志村があわや命の危険に晒されたところで、キリヒトと取引をして志村の居場所を突き止めたキリコがやってきて志村を救う。
「黒幕は子どもかと思ったら親だった」は2話の「調教師」と同じパターンだ。奇しくも親を殺してまでインビジブルに成り代わったキリヒトの存在が顕わになったタイミングで、キリコたちが対峙するのは残虐な犯罪を重ねる母と、その手助けを続ける息子。やっぱりこれは「仕事を継ぐ」話なのか?
余談だが、高橋一生と銀粉蝶といえば、朝ドラ『わろてんか』で母子を演じた仲。今回はクールな殺し屋とギリギリまで抵抗する刑事という敵同士を、緊張感たっぷりに演じていた。
刑事として人を救おうとする志村
この事件、実は中根沢こそが殺人の依頼者だった。殺された2人に脅迫されていた中根沢は2人の殺害を依頼し、さらにはドクターに自分も殺させて保険金を会社と家族に残すつもりだったらしい。志村は「家族を守りたいなら生きて守れ」と中根沢の命を救うが、結果中根沢は殺人教唆で逮捕されて家族はマスコミに晒される。キリヒトの言う「警察の無力さ」とはこのことだろう。
それでも志村は刑事として人を救うことをやめない。「(キリヒトに)今してることをもうやめさせたい」と本音をこぼすキリコに「助けてほしい人間を助けるのも、俺の仕事だ」「俺は刑事だ」という。犯罪者であってもある種のプライドと節度を持っていたキリコが、暴走する弟を止めるために警察と組んだ。その真実がわかったいま、二人の絆はより強固になったように見える。
シリアスな展開の中で、観ていてほっとするのがキリコについている刑事・島袋(後藤剛範)のシーンだ。なにかとキリコに翻弄され、しかし彼女を「キリコさん」「インビジブルさん」と呼んでかなりキリコ側に立っている彼の存在はいつもくすっとさせてくれる。6話でもまー君(板垣李光人)といっしょになって志村をスルーし、「お前もなにか言え」と言われているのがかわいい。
6話ラストでは、キリコによって捜査一課内にインビジブルとつながっている人間がいることが語られる。今回やけに意味ありげなカットが挿入されていた犬飼(原田泰造)が怪しいが、「と見せかけて」の展開が多いこのドラマ、まだまだわからない。
脚本: いずみ吉紘
演出: 竹村謙太郎、棚澤孝義、泉正英
出演: 高橋一生、柴咲コウ、有岡大貴、堀田茜、原田泰造、桐谷健太 他
主題歌: Dragon Ash『Tiny World』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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