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日常から見つける新しい景色『金沢民景』 Magazine isn ’t dead Vol.12

日常から見つける新しい景色『金沢民景』 Magazine isn ’t dead Vol.12

独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア「Magazine isn’t dead. 」を主宰する高山かおりさん。世界中で見つけた雑誌やZINEから、毎月お気に入りの1冊を紹介します。前回紹介したのは『FeelsZine


旅とは、必ずしもどこか遠くへ行くことだけに限らないと思う。現代を生きる私たちは映画や音楽、本などを通して、いともたやすく動かずに旅の世界に浸ることができる。また、よく見慣れた場所でも視点を少し変えるだけで新しい発見が待っているかもしれない。それもまた旅と呼べると思う。日常に身を置きながら、非日常を見つける。その行き来こそが旅の醍醐味なのではないだろうか。そんな風に強く感じるようになったのは、『金沢民景』というリトルプレスに出合ってからだ。

探していたアートブックを購入するため恵比寿のNADiff a/p/a/r/tへ足を運んだ2019年のある日のこと。店内の平台にちょっと異質な空間を見つけてしまった。石臼や瓦などとともに並ぶ手のひらサイズのカラフルな冊子。表紙には、「バーティカル屋根」「私有橋」「キャノピー」など建築については門外漢の私にとって聞き慣れない単語がずらっと並んでいた。

右端にそっと添えられている「金沢の路上で見つけた」というコピーに惹かれページをめくると、1枚の写真と約200字のテキストという固定フォーマットでバリエーション豊かな民家の紹介が続いていた。創刊号の「門柱」の1ページ目にはこうある。「友人宅に遊びに行くと、家の前に素朴な2本の柱が立っていた。柱だけが佇む光景に見とれていると、横に小さな基礎が立ち上がっていることに気が付いた。(本文冒頭のみ抜粋)」

なんとマニアックな視点!柱が佇む光景に見とれるだなんて、柱をロマンティックに昇華させた表現に嫉妬(笑)。次のページには、「木製の塀は20年以上丁寧にメンテナンスされているため〜(本文より一部抜粋)」とある。つまり、鋭く観察するだけでなく実際に住民に話を聞いているということだ。私は目的の本を買うことも忘れ、『金沢民景』シリーズをごそっと掴んでレジへ向かった。

 

それから1年後の2020年2月。私は金沢で、縁あって企画者で発行人の山本周さんにお会いすることができた。山本さんは、住宅などの設計を手がける建築家で神戸市の新興住宅地育ち。大学進学を機に来た金沢で、様々な時代の建物などが混ざり合っている街の姿に衝撃を受けたのだという。

卒業後上京し数年過ごしたのち、北陸新幹線が延伸した2015年に再び金沢へ。すると、学生時代にいいと思っていた風景が変わっていた。「これからもっと大きく変わるかもしれないから、この状態で一度記録してアーカイブとして残したら面白いかなと思って写真を撮り始めたんです」と振り返る。

当初はソロ活動だったが、知人を集めコミュニティ化。写真の枚数が増えていく中で形にすべくメンバー間で構想を開始、本誌が生まれた。1つのテーマにつき約15の民景が紹介されているが、実際に撮影している写真は100枚以上(つまり1テーマで100箇所以上!)あり、冊子にまとめるにあたり厳選。

その後、掲載許可を取るため撮影した民家を正式に訪問。怪しいセールスマンに間違えられそうだが、「こちらとしてはいいと思って話を聞いているので、こういうところが素敵だと思うのですが…と切り出すと、実はこれはおじいちゃんが作ったもので…などと自然と話してくれますね。ダメな方は本当に門前払いですが(笑)」。勇気を出した突撃スタイルあってこその本誌なのだ。感動の秘話が綴られていたりするので、ぜひじっくりと読んでみてほしい。

ちなみに製本は全て手製本で、注文が入るたびに印刷した1,000部をひとつひとつ丁寧にミシン縫いで仕上げる。愛と努力と汗の結晶である。しかもそれがまさかの100円。なぜこんなに安いのかを問うと、「フリーペーパーにしようと思っていたのですが、こだわりを詰めすぎたのでフリーだともったいないね、となって。捨てられないように付けた値段が100円でした」。

 

『金沢民景』に続くような、○○民景はきっとすぐそこにある。わざわざ遠くのどこかへ行かなくても、違う色の眼鏡をかけて街を歩いてみると、新たに広がる世界があるかもしれない。

 

『金沢民景』はこちらで販売しています。

 

この連載では、ginzamag.com読者の手作りZINEを募集しています。決まりがなく、自分を自由に表現できるのがZINEの魅力。オンラインストア「Magazine isn’t dead. 」の高山かおりさんに、自分のZINEを見てほしい!という読者のみなさま。ぜひGINZA編集部まで送ってくださいね。

郵送先 問い合わせ先
〒150-0001 東京都中央区銀座3-13-10 マガジンハウス
GINZA編集部 「Magazine isn’t dead. 」宛
ginzamag@magazine.co.jp


※ZINEと一緒に住所、氏名、年齢、電話番号、メールアドレスを明記した紙を同封してください。
※ご送付頂いた作品はご返却できません。ご了承ください。
※個人情報は、この企画のために使用し、その他の目的では利用いたしません。
※個人情報の管理については、GINZA編集部が責任を負い、これを厳重に保管・管理いたします。

高山かおり Kaori Takayama

独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead. 主宰。ライター、編集者としても活動している。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」で5年間販売員として勤務後都内書店へ転職し、6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、国内外の雑誌やZINEなどのあらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。「今回紹介した金沢民景はこちらのムービーの39:00頃〜でも紹介しました。ご興味をお持ちくださった方はぜひチェックしてみてください!」

Photo: Natsumi Kakuto Text: Kaori Takayama

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