長いお休みはお家でゆっくりしたい。そんな時はハリウッドのロマコメ映画を観ましょう。たった2時間で胸がキュンキュンできるのはもちろん、 恋愛観や家族観についてもとことん考えられるんです。前回に続きロマコメの魅力を徹底解剖します!
永遠の命題「男女の友情は存在するの?」に終止符!21世紀のロマンティックコメディ案内vol.2
男女の友情は存在するの?
21世紀のロマコメ映画界において、ひとつのムーブメントをなしていると言っても過言ではないのが、男女の体だけの関係をテーマにした作品です。あけすけな言葉で表現するなら、セフレものですね。『抱きたいカンケイ』、『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』、『ラブ&ドラッグ』、『ステイ・フレンズ』などがこれに当たりますが、見逃してちゃいけないのは、以前だったらケシカランと顔を顰められていたこうした関係が、ごくありふれたものとしてポジティブに描かれているところ。誰かに迷惑をかけているわけでもないし、自分の責任においてやるなら本人たちの自由でしょ?というわけです。なにはともあれ観てもらいたいのは、若年性パーキンソン病と闘う芸術家肌のマギーと製薬会社のセールスマンのジェイミーが主人公の『ラブ&ドラッグ』です。なぜって、アン・ハサウェイ演じるマギーが無敵なキュートさを湛えているから。ルーズめなシルエットのケーブルセーターに、いい感じに色落ちしたジャストサイズのデニムをあわせて、人生に悩むジェイミーに優しい声をかけるマギーといったら!必ずや真似したくなるはずです。
けれども、21世紀のロマコメにおいてより重要なのは、互いに真剣交際に疲れたジェイミーとディランが、スポーツ感覚で体の関係を持ち始める『ステイ・フレンズ』です。2人は体だけじゃなく性格も相性抜群で、もうニヤニヤしちゃうほど親友って感じなんですが、前述したセフレものの男女が最終的には真剣交際に発展するのに対し、『ステイ・フレンズ』では最後までそのままの関係を維持しようとしているのが重要たるゆえん。同作が「男女の友情は存在するのか?」といういまだに高い人気を誇る例の問いかけに一石を投じているのは明らかでしょう。考えてもみてください。肯定派も否定派も恋愛と友情の境目には、体の関係の有無を据える傾向にあるようです。しかし、ジェイミーとディランが実践しているのは、体の関係がある男女の友情関係。「いやいや、それを人は恋愛と呼ぶんだ」という意見もありましょうが、何が何でも友情と恋愛をわけなきゃいけない理由なんかこれっぽちもありません。この作品はそんなことを教えてくれていると言えるんじゃないでしょうか。
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文・鍵和田啓介
ライター。「POPEYE」「GINZA」「BRUTUS」など雑誌を中心に活動。著書に「みんなの映画100選」。来春、インディペンデントファッション雑誌「PENDING MAGAZINE」を立ち上げる予定。
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絵・カナイフユキ
イラストレーター、コミック作家。エッセイも交えたzineの創作を行っており、過去3年間のzineをまとめた書籍『LONG WAY HOME』の発売に合わせ、SUNNY BOY BOOKSで個展を開催中(1月10日まで)。fuyukikanai.tumblr.com