夫婦も子育てももっと自由にしていい。家族の在り方を考えさせられる作品 21世紀のロマンティックコメディ案内vol.5

夫婦も子育てももっと自由にしていい。家族の在り方を考えさせられる作品 21世紀のロマンティックコメディ案内vol.5

長いお休みはお家でゆっくりしたい。そんな時はハリウッドのロマコメ映画を観ましょう。たった2時間で胸がキュンキュンできるのはもちろん、 恋愛観や家族観についてもとことん考えられるんです。前回に続きロマコメの魅力を徹底解剖します!


オルタナティブな家族の作り方

妊娠出産の最終的なカードは女性が握っているというのは、『セレステ∞ジェシー』の箇所で確認したとおりです。ところで、21世紀のロマコメにおいて、これはほとんど言わずもがなの前提のようです。それを証拠付けるのが、赤の他人の精子をバンクから買って、人工授精によって子どもを授かろうとする女性が主人公の作品。だいたい彼女たちは40歳くらいで社会的に成功しているけれど特定の恋人がいない女性なんですが、その行為を特別なこととは見なしていません。『アラフォー女子のベイビー・プラン』に関しては、赤の他人のものと思っていた精子が実は意中の男性のものであることが発覚しますので、恋する男女が愛し合った結果として子どもを授かるという王道ストーリーのバリエーションと言えるでしょう。しかし、『カレには言えない私のケイカク』はさらに攻めています。ヒロインのゾーイは人工授精治療をしたその直後に、幸か不幸かいい感じの男性スタンに巡り合ってしまうのですから。まだ妊娠は発覚していないからとゾーイは彼と体の関係を持ってしまうのですが、その後に産婦人科に行ってみると、なんと双子を妊娠していると言うではありませんか。一度は別れを決意する2人ですが、最終的にはよりを戻し、スタンは血のつながらない子ども(と血のつながっている子ども)の父になる準備を始めることになります。

こんな具合に妊娠出産に対する考え方も変わってきているわけですから、当然のように家族のかたちも変わっています。そこで触れたいのが、血のつながらない家族が登場するロマコメです。たとえば、ひょんなことから尻軽女のレッテルを張られてしまう女学生オリーヴをエマ・ストーンがいきいきと演じた『小悪魔はなぜモテる?!』の家族。両親ともに白人であるにもかかわらず、オリーヴの弟はどう見ても肌が黒いのです。彼は一家団欒のシーンにおいて、自分の体が小さいことを嘆きます。これに対しママが「うちの家系は成長が遅いの」とたしなめると、弟は「僕は養子だろ!」とツッコむのですが、「なんで知っているんだ?時期を見て話すつもりだったのに!」と激高するのはパパです。どうやらパパなりのジョークらしいのですが、彼は続けてこう言います。「いいかい、僕とママのように愛し合っていても実を結ばないこともあるんだよ」と。いくらでもシリアスに描けるテーマを、物語の本筋ではないところでカジュアルに取り入れちゃうあたり、ギャフンと唸るしかありません。

いっぽう、こうしたテーマを作品のど真ん中に据えたロマコメもあります。『かぞくはじめました』です。ヒロインのホリーは親友カップルの紹介でエリックとデートをすることになりますが、このデートはお互いにそりが合わなさすぎて、ごはんをする前に解散という最悪の結果を迎えます。しかし、そんな2人を再び急接近させる出来事が起きます。件の親友カップルが結婚し、ソフィーという赤ん坊を授かったのです。会えばいがみあう2人でしたが、それはそれは愛くるしいソフィーへの溺愛ぶりにおいては互角。しばらくは幸せな日々を暮らすことになります。そんなある日のこと、2人にさらなる試練が訪れます。親友夫婦が交通事故で亡くなってしまったのです。しかも、夫婦の弁護士はこう言うではありませんか。「夫婦の遺言にはこうある。自分たちにもしものことがあった場合、ソフィーの親権はホリーとエリックに委任する」と。戸惑いながらも協力してソフィーを育て始める2人……。というわけで、オルタナティブの極北みたいな家族の誕生です。最初こそお互いの私生活には踏み込まずに暮らしてきた2人が、子育てを通じてだんだん惹かれ合うのは言うまでもないでしょう。自分の遺伝子を持った子どもを育てたいという気持ちはわからないではありません。しかし、血なんかつながってなくても、幸せな共同体を築くことは全然可能ですよとこの作品は教えてくれます。

 

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文・鍵和田啓介 Keisuke Kagiwada

ライター。「POPEYE」「GINZA」「BRUTUS」など雑誌を中心に活動。著書に「みんなの映画100選」。来春、インディペンデントファッション雑誌「PENDING MAGAZINE」を立ち上げる予定。


絵・カナイフユキ Fuyuki Kanai

イラストレーター、コミック作家。エッセイも交えたzineの創作を行っており、過去3年間のzineをまとめた書籍『LONG WAY HOME』の発売に合わせ、SUNNY BOY BOOKSで個展を開催中(1月10日まで)。fuyukikanai.tumblr.com

GINZA2018年11月号掲載

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