自分らしく装うこと。思春期にmc SisterとOliveからその種をもらった。 いつかきちんと実らせたくて、編集Kがチープ・シックの達人を訪ねて考えた。
教えて!チープ・シック先生01 スタイリスト井伊百合子さんに聞く「キッズサイズの面白さ」
まずは身近な先生から、と思い、産休から復帰されたばかりの井伊百合子さんに「チープ・シックについて話をお聞きしたい」と連絡すると、「休み中にテレビを見ていたら『ショッピングモールで全身コーディネート』という企画をやっていて、私ならもっとうまくできると思いました」と返事が来た。ストイックで知的な雰囲気なのに、お茶の間トークも欠かさない人だ。でもそのモール企画とほぼ近いことを彼女とはすでにやっていた。ファストファッション全盛時代を逆手にとって「How much do you think this is?」と題した、安価な服でも頭とセンスでシックになれるはずという思いを込めたページだ。また、「スケーターの男の子のスタイルが気になる」と言われ、彼らを取材してファッションページを作ったこともあった。井伊さんのアイデアはいつもファッションの枠を越えたところからやってくる。社会で起きていることや文化の面白みを誌面で表現しようとしてるみたいに思う。そんなわけで、今回はキッズサイズを着る楽しさを教えてくれた。仕立ては大人並みなのに価格は手頃、極端に小さいサイズに袖を通すとまるで新しいフォルムが生まれて面白いのだという。「なによりサイズが刻まれてて豊富なのがいいです。自分にしっくり来るフィット感を選べます」。しっくりもなにも本当に子ども服になんて袖を通せるの? のっけから不安気な私に、大人の女性に着せて見せてくれた。
大人が着ても嫌じゃないワンポイントの子ども服も狙い目。フロントを閉じると肩のあたりにしわが入るがそれもデザインみたいに見える。「モデルのあぐりさんには130cmがぴったりですが私が着るなら140cmかな。10cm単位で刻まれてるなんて大人の服にはないですよね」(井伊さん)
アシスタント時代に古着屋で出合ったキッズサイズ(サイズ6)のステンカラーコートを井伊さんは、今も愛用している。大人(モデルの身長は161cm)が着ると5分袖のショートジャケットみたいになる。基本的に前開きのものなら意外となんでも着られてしまう。
スタイリスト 井伊百合子さん
GINZAをはじめさまざまなファッション雑誌や広告で活躍中。アシスタント時代は自由になるお金が少なかったので一見難しそうないただきものでも子ども服でも「なんでも着こなしてやる!」という気持ちでおしゃれをしていたそう。さすがです。