料理研究家の有元葉子先生に皮付きで楽しむ玉ねぎレシピを教えていただいたあとの2人のプライベートトーク、どうぞお楽しみください。
森 星 × 旬の野菜 「半径5mのサステナブル」 VOL.2 「料理は引き算」について、有元葉子さんとトーク
素材のポテンシャルを引き出したシンプルな料理は、
体も心も喜ぶ
森 星「緊急事態宣言中ということで、今日はリモートで教えていただきまして。どうもありがとうございました!」
有元葉子「こちらこそ、ありがとうございました。私もリモートで作り方を伝えるのは初めての試みだったんだけれども、どちらもシンプルな料理だからスムーズにできましたね」
森 星「はい!それに、玉ねぎをはじめ野菜を皮付きで調理して、じゃがいもやにんじんは皮ごといただいて…。野菜の生命力をすごく感じられる料理で、パワーをもらえた気がします。『あれ、なんで今まで皮をむいていたんだろう?』って、不思議に思えるぐらいの(笑)おいしさでした」
有元葉子「それはよかったわ(笑)。こういうシンプルな料理は、できるだけいい素材を選ぶのも大事なのよね」
森 星「そうですよね。それに、こういう素材の力を活かしたシンプルなお料理をいただくと、体が喜んでいるなっていう実感がわきますね。いつも、この食材にはこういう栄養があって…、というのを考えながら食べているほうなんですけど、そういう情報にとらわれすぎて、頭でっかちになっちゃうのも違うなって。先生が前回おっしゃっていた『おいしいものを、おいしいと感じられる体にしておく』のがいちばん安心なんだって身に沁みました。その感覚やジャッジを信用できるような自分でいるというか」
有元葉子「そうよね。料理って、どんどん引き算をしていったほうがいいと思うんです。だから、たとえば玉ねぎを焼いただけのものを食べてみて、玉ねぎ本来の味を確かめてから塩加減を調整するとか、そういうことをしてみるのもいいかも知れないわね」
森 星「まさに今日のお料理も、味付けは塩とオリーブオイルだけですもんね!」
有元葉子「今日作っていただいた2品は、食材に手を加えずに火にかけた“料理の原点”ともいえるもの。『玉ねぎの丸ごとオーブン焼き』は、イタリアでの体験から思いついたレシピなんです。あちらには暖炉がある家が多くて、その灰の中に食材を入れてローストするのよね。じわじわと火が入るからとってもおいしく仕上がるの。そのイメージで、オーブンで玉ねぎを皮ごとじっくり焼くとおいしいんじゃないかしら、と思ってやってみたんです」
森 星「へー、そうだったんですね!今は食材や調味料、調理器具、調理法…本当にいろんな選択肢があるけれど、こういう素材そのもののパワーをいただけるシンプルな料理=引き算をした料理って“人をよくしてくれる”ものなんだろうなって感じました」
有元葉子「私も、こういう食べ方がいちばんおいしいなあって思います。それから、火の使い方って“退化”させたほうがいいと感じていて。電気よりガスのほうがやっぱりおいしくできるし、さらに薪や炭を使うと別格のおいしさ。それに、薪や炭で火を熾して料理をすると、同じ時間でも濃さみたいなものが変わってくるのよね。常に忙しく過ごしていると、時間っていつの間にかさらさらと流れていってしまうじゃない?でも赤く燃える火を見ながらじっくり料理をしていると心が満ち足りていくし、結果的に生き方も変わってくると思うのよね。都会で暮らしているとなかなか難しいんですけど」
新たな試みは、
自然と触れ合うデュアルライフ
森 星「先生は日本で薪や炭を使って、料理されることもあるんですか?」
有元葉子「長野県の野尻湖のほうに別荘があって、家の中で焚き火ができるような設備を入れてもらったのね。ちょっと変わった暖炉という感じかしら。なので、別荘に行ったときは、薪で火を熾して料理を楽しんでいます」
森 星「わー、それ最高ですね!! 実は、私も二拠点生活を始めようかと思っていて、いま物件を探しているところなんです」
有元葉子「あら、いいじゃない!」
森 星「最近、土にすごく興味があるんですけど、私は東京生まれの東京育ちで、土にそこまで触れてこなかったからか、土の扱いが上手じゃないんです。土壌教育からすごく離れている世代、というのもあるのかな。私も母もコンポスト(※)や家庭菜園をやっているんですが、母の土は“生きている”いい土になるのに、私の土はすぐに砂漠化してしまう。“生きている”いい土にするための感覚を一生懸命、肌になじませようとはしているんですけど、なかなか難しくて…。それから、こうして食と向き合う機会をいただいて、自分の口に入れるものについてもさらに深く考えるようになったのも、きっかけのひとつかも知れません。そんなことが積み重なって、もっと自然と触れ合うことのできるライフスタイルに変えていきたいなと思ったんです」
有元葉子「すごくいいと思います。土や木の香りとか、風の音とか、森の色の美しさとか、自然の中って本当に素晴らしいものだらけなのよね」
森 星「そうですよね!そういうものを肌で感じて、いろいろな野菜を育てて、ちょっとヴィレッジみたいにできたらいいなって。そんな新たなチャレンジに向けて、今、いろいろ考えています」
有元葉子「若い方たちがそういう暮らしを楽しみながら、自然を大事にしていくようになるってすごくいいわよね。ぜひ、その先頭に立ってくださいね」
森 星「はい、有元先生に教わりたいことがいっぱい!いろいろ教えてくださいね!」
※生ゴミなどを微生物の働きを活用して発酵、分解させて堆肥にするもの
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森星
1992年生まれ。東京都出身。モデルとして国内外で数々のファッション誌や広告などで活躍。明るく天真爛漫なキャラクターで2015年から「公益財団法人プラン·インターナショナル·ジャパン」のBecause I am a Girlエンジェルに就任。また、発酵人の田上彩氏らとともにサステナブル・フードトラック「edain」を運営。「farm to table(新鮮でオーガニックな食材を、農場から食卓へ)」をテーマに、体にも環境にも優しい食を提供している。公式YouTubeチャンネル『Hikari Mori』では、自身の見ている世界・価値観をシェアするための、さまざまなコンテンツを配信。
Instagram: @hikari
YouTube:『Hikari Mori』
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有元葉子
料理研究家。3人の娘を育てた専業主婦時代に、家族のために作る料理が評判となり、料理家の道へ。素材の魅力を引き出したシンプルでおいしい料理、洗練されたライフスタイル…。本質を見極めた軽やかな生き方は、多くの女性の憧れの的。著書に『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』(SBクリエイティブ)、『「使いきる。」レシピ』(講談社)など多数。
公式サイト: https://www.arimotoyoko.com/
Instagram: @arimotoyokocom
Photo: Natsumi Kakuto Hair&Make-up: Mifune(SIGNO) Edit&Text: Sayoko Imamura