女優・江口のりこインタビュー:GINZA編集部が今会いたい!

女優・江口のりこインタビュー:GINZA編集部が今会いたい!

誰に評価されなくても、信頼できる人と
めっちゃ楽しいと思える仕事がしたい

画面にこの人が映ると、とたんに予定調和が消え去るような感覚を覚える。少しだけ居心地が悪そうで、でも淡々とたしかにそこにいて。口を開けばおのずと話の芯を突くような。ドラマでもバラエティ番組でもおためごかしは通用しない。そんな稀有な存在感。

──バラエティ番組での江口さんは、どんな大御所が相手でもどんな質問でも物怖じしない印象です。

「映画や舞台などの宣伝でお話をいただくんですが、やっぱり苦手で……。だいたい、最近なにかありませんでしたかと打ち合わせで聞かれるんですね。でも私にはなんの趣味もないし、面白いことはないんですと。じゃあ、なにか腹の立ったことはないかと聞かれて、渋々しぼり出したのがあのありさまなんです。最近はいきなり『腹が立ったことは』って聞かれるようになっちゃって。それもいやだなあと物事を悪く言うのはやめようと思っているところです」

 

──一回出るとそのキャラクターを求められるようになる。

「そうなんです。悲しいですよね」

 

──一方で、『ぴったんこカン☆カン』での江口さんは幸せそうです。

「あ、それは安住(紳一郎)さんが好きやから。特別なんです」

 

──安住さんはほかの方とどう違うんでしょう。

「うーん、自分にないものをもってるっていう憧れですかね。北野武さんとの番組でもそうですけど、いろんな人の良さをひきだしたり、ニュースを届ける言葉を持ってたり。私なんか人付き合い苦手やから食事に誘われても、今日ダメなんですーって逃げてしまうんです。でも安住さんは人に対して逃げない。声も好きですね。昨日もテレビ見てたけど、なんか顔がお疲れやったような気がして心配です」

 

──そんないたわりの心で……。しかしどういう種類の〝好き〟?

「人間としてです。いや男としても好きかな。人間としてはああなりたいと思ってもなれないから。でも安住さんを一生見ていきたいなと思います。安住さんの成長とともに自分も成長していきたい。甥っ子姪っ子が大事なのといっしょで、安住さんも大事なんです」

 

──そんな高レベルの愛情!

「死ぬまで見続けていたい人。それが安住さんです(きっぱり)」

 

──甥っ子、姪っ子の話をするときの江口さんはいつも優しげです。

「もう、いちばん好きです。あの子たちのことを考えるとほんとに希望であふれますよね。姪っ子がいま3歳で甥っ子が4歳。でもまた男の子が生まれるんですよ。ドイツとアメリカに住んでるからなかなか会えないんですけど」

 

──江口さんご自身はふたごなんですよね。スタッフが間違ってお姉さんに声かけたこともあったとか。私もふたごなので似た経験があります(担当編集Y)。

「ちょっとさみしい気持ちになりますよね。むこうも損してるから。間違われたり、比べられたり。なんかそういうことへの反抗心みたいなのもあった、子どもの頃は。でも中学を卒業して違う道に進んだから、趣味も別々になって、ようやく違う人間になったような気がする。何も気にならなくなって」

 

──ふたごであることはあまりお話されてませんよね?

「やっぱり、大事な存在なんですよね、お姉ちゃん。なので、私が喋ったことがまっすぐ伝わらなかったり、そういうつもりじゃないのになあってことがあるから自分から話したいとは思わないですね」

 

──でも支えにはなっている?

「なってますよ。仕事でもなんでも! 100パーなってます。姉だけやなくて父、母、兄、妹、家族みんな。大切な存在です」

 

──舞台『奇跡の人』の稽古中とうかがいましたが、映画やドラマと仕事のスタンスは違いますか?

「違います。でも芝居することには変わらないし、むしろ誰と一緒に仕事するかが大事で。舞台は好きやけどつまんなかったなあというのもあるし、ドラマも、この監督がいたからドラマの良さを知ったなあというのもあるし。特に演出家ですね。今は、森新太郎さん演出の舞台ですけど、本当に楽しい。厳しさがあるんです、物事を簡単に済まそうとしない。いったんでき上がっても、ちょっと待ってと疑うことのできる人。人の心を動かすのはそんな簡単なことじゃないと必死になっているから信用できるし。なんやろ、この人の言うことを聞きたいと思う」

 

──江口さんはよく、ひょうひょうとしてるとか、独自の存在感が、という表現で語られます。

「言われますねえ。落ち着いてみえるんかなあ。でも、あきらめは早いかもしれない。そんなところで反抗したって周囲がバタバタするだけやし、もういいよと」

 

──飲み込んでしまう?

「自分が抗って、なにかが特別光りだすこともないと思うし。でも、心のなかが煮えたぎってるときもある。絶対許さん、と」

 

──完全な平和主義とは違う。

「嘘はつきたくない。だから気持ちは伝えるけど許せるところは許そうよという……いつからこんなんなったんでしょうねえ。やっぱり仕事してからですね。期待通りにはいかないことの連続じゃないですか、仕事って。自分じゃ決められないんだなあということを思い知らされる。でも結局は誰にも評価されなくても、この人と一緒に仕事してめっちゃ楽しかったと思えたらそれでいい。だから今は、すごくいい稽古ができていて楽しいです。8時間ぶっ通しでごはん休憩もないくらいですけど」

 

──体力仕事です。

「でも運動もしてなくて……休みの日は歩くようにしてます。とりあえず1万歩歩こうと。リュック背負ってちょっと遠くのスーパーまで買いものに行ったり」

 

──お料理されるんですね。

「ごはん、作ります。自分の作るごはんがいちばん好きなんです(しあわせそうに)。忙しい時は、朝は納豆とごはんと味噌汁。味噌汁はジャーに入れて稽古場に持っていって。夜はパスタ。すぐ作れてすぐ食べられるから。家で作って食べることで、日々のバランスをとってるような気がしますね」

江口のりこ

メッシュタートル ¥19,000、ワイドパンツ ¥46,000(共にタロウホリウチ)/ピアス ¥ 17,000(エンフォルド)/右手バングル ¥28,000(キリハ)、リング シルバー ¥48,000、ゴールド ¥50,000(共にアキラナカ | 以上ハルミ ショールーム)/左手バングル クリア ¥23,000、ベージュ ¥24,000(共にリジー フォルトゥナート | トゥモローランド)

江口のりこ えぐち・のりこ

1980年生まれ、兵庫県出身。2002年、三池崇史監督『桃源郷の人々』で映画デビュー。4月19日より公開の映画『愛がなんだ』、4月16日スタート・TBS系列のドラマ『わたし、定時で帰ります。』出演。ヘレン・ケラーの母親役で出演の舞台『奇跡の人』は東京、富山、鳥栖、大阪、浜松で上演予定。

Photo: Yasuhide Kuge Styling: Yumeno Ogawa Hair&Make-up: Taeko kusaba Text: Yuko Ota

GINZA2019年5月号掲載

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