さらに未知なる音楽体験を。小山田圭吾を知るための10のこと

さらに未知なる音楽体験を。小山田圭吾を知るための10のこと

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〈Cornelius(コーネリアス)〉こと小山田圭吾さんの新作『Ripple Waves』が9月19日にリリースされる。昨夏、11年ぶりに発表されたオリジナルアルバム『Mellow Waves』でメロウなラブソングに胸を打たれ、まだまだ心地よい余韻に浸っている私たちの気持ちを察してくれたかのようなタイミングだ。本作では一体どんな音楽体験を届けてくれるのか?世界中のリスナーたちも、彼の未知なる音を心待ちにしている違いない。アルバム制作のエピソードやファッションのことなど、気になる10のことを尋ねてみた。


現在開催中の「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」でディレクターを務める中村勇吾さんの序文には、昨年GINZAでショーン・レノン氏がCorneliusについて綴ったエッセイからヒントを得て展示の構想を練り始めた、とあった。その一節とは、「He paints a kind of audio architecture.=彼は音のアーキテクチャ(建築)を描いている」というもの。なるほど、その言葉を浮かべながら『Ripple Waves』の15曲を聞けば、さらにその浮遊感を楽しめるかもしれない。本作は、前述の展覧会のために書き下ろした楽曲や、Spotifyで公開され話題となったDRAKE「Passiofruits」のカバーを含む未発表曲に加え、80年代UKネオアコブームを率いたFELTのフロントマン・ローレンス、NYのホットなインディロックバンド、ビーチ・フォッシルズ、もはや説明不要のスペシャリストである細野晴臣さんや坂本龍一さんといった、国内外のアーティストが〈コーネリアス〉の楽曲をリミックスした音源など、贅沢な音で溢れている。色や形が異なるサウンドやリズムのパーツによって構成される〈コーネリアス〉の音楽はいつだって予測ができない。

 

ーーQ1.今回のアルバムタイトル『Ripple Waves』について教えてください。

アルバムの前半には、昨年『Mellow Waves』を出した後に、いろんな場所で発表してきた曲が収録されています。ニューヨークのSpotifyスタジオで録った音源や、NPRというラジオ局の「Tiny Desk Concert」に出演した時の音源、展覧会用に作ったものなど。後半は、『Mellow Waves』に収録していた曲を6名のアーティストにリミックスしてもらった曲が続きます。それらの曲をまとめている時に、なんとなく『Mellow Waves』の波がこう、波紋(Ripple Waves)となって広がって出来上がったもの、みたいなイメージだったんです。

 

ーーQ2.年齢も国籍もバラバラの6名のアーティストさんに、今回リミックスの作業をご依頼される際、小山田さんからはそれぞれにどんなリクエストをされたのでしょうか?

坂本さんと細野さん以外、会ったことも話したこともない人たちだったんですけど、6人それぞれの音楽が好きで頼んでいるので、基本的にはその人の味が出たらいいなと思ってあまり注文はしていません。ひとつだけ、「声を使ってください」というリクエストを海外のみなさんにお伝えしました。「Surfing on Mind Wave Pt2」という曲をリミックスしてもらったローレンスだけは、どんなものが出てくるのか、最後まで全く予想できない感じでした。リミックス自体たぶん人生で初めての経験だったと思うし、相当な変人と言われている人で(笑)。もともと彼が80年代にやっていたFELTというバンドがあって、僕が高校生の時に大ファンだったんです。送られてきた曲を聞いたら、何度も「コ〜ネリア〜ス」って囁き声が入っていて、期待通り素晴らしくヘンテコなものを作ってくれたというか(笑)。自分にとってのヒーローの1人なので、嬉しかったですね。

ーーQ3.7曲目の「Inside a Dream」では、夢の世界に迷い込んでしまいそうな不思議なサウンドと共に、「人間は歳をとると、とかく童心を失うものだ…」という、ドキッとする台詞が入っています。これはどなたの声なのでしょうか?

「人間は歳をとると」と言っている声は、僕のおじいちゃんなんです。NHKのアナウンサーをやっていた時の声が、カセットで残ってたんですよ。たぶん昭和30年代くらいのものじゃないかな。そのカセットを見つけた時に、この音を使って何かできないかなって思ったのが始まりです。それで、「君は?」と言ってるのが叔父さん。「小山田圭吾!」は、子どもの頃の自分の声です。叔父さんは母親の弟なんですけど、俳優と歌手みたいな人で、僕が3歳ぐらいの時、その叔父さん夫婦が「ラブラブショー」というテレビ番組に出たことがあって。70年代に放送されてた芸能人の夫婦やカップルが出るバラエティ番組で、お互いの親戚がぞろぞろ出てきて歌ったり話したりするんですよね。僕も親戚として呼ばれて出て、これはその時の音声なんです。夢に出てくるような、断片的な昔の風景だったり、子どもの頃の声だったり、幼少時代の記憶がコラージュされて出来上がったような曲ですね。

 

ーーQ4.米ラジオ局「NPR」の人気シリーズ「Tiny Desk Concert」で演奏された際の映像は、日本のファンの間でも話題になっていましたが、世界で活躍する数々のミュージシャンたちが演奏してきたあの空間は、実際どんな雰囲気なんですか?

NPRっていう、アメリカのラジオの国営放送局に音楽のセクションがあって、そこのオフィスの片隅で演奏するんですよね。ご覧の通り本棚やデスクが雑然と並んでいて、楽器がギリギリ置けるくらいの狭いスペースで(笑)。始まる時に「やるよ」って声をかけると、オフィスで働いてる人たちがワーって集まってきて。普段やらないような環境で一発勝負ですし、しかも小さな音量でやらなきゃいけないから、声もほとんど生声に近い。そういう部分はちょっと大変だったけど、楽しかったです。

ーーQ5.21_21 Design Sightでは、本作にも収録されている「AUDIO ARCHITECTURE」をさまざまなクリエイターが映像に落とし込んだ展示が開催されていますが、実際に展示空間を見てみて、いかがでしたか?

曲は書いたものの、展示の前日まで、どうなるのか全然わからなかったですね。「本当に1曲で大丈夫かな」とか、不安の方が大きかったんですけど、蓋を開けてみたらどの映像作品もおもしろくて、贅沢な空間の使い方とかも含め、すごくいい展示でした。座れるし、クーラーも効いてるし。今年の夏は暑かったから(笑)。あとは、「体感する」っていう感覚も強い展示だったなと。映画とも、コンサートとも、ライブとも展示とも言えない、エンターテインメントなのかアートなのか分からないけど、楽しめる場所だなと思いました。

 

ーーQ6.今年3月に回られたアメリカツアーで、特に印象に残っている都市はありますか?

メキシコに初めて行ったんですけど、すごくよかったですね。街全体が盛り上がっている感じがしました。街にいる若い人たちが、とにかくみんな楽しそうなんですよ。ライブのお客さんも、だいぶノリがよくて。僕のライブって、特に日本では、決して声をあげて盛り上がる雰囲気ではないんです。だけどメキシコでは今まで経験したことのないぐらい客席が盛り上がっていて、ちょっとびっくりしました(笑)。

ーーQ7.国内のみならず海外の音楽シーンでご活躍されている小山田さんは、国内の若手ミュージシャン達にとって憧れの存在です。小山田さんが海外で成功された理由や、受け入れられた部分はどこだと実感されていますか?

なんですかね、他にあんまりない感じだからじゃないですかね。向こうの人から見ても、新しかったんじゃないかと。1997年に発表した『FANTASMA』というアルバムは、初めて海外のレーベルからもリリースされて、それを機に、活動がだいぶ変わりました。海外ツアーをやるようになったし、海外アーティストのリミックスの仕事がくるようになりましたね。

 

ーーQ8.新しい音楽はどのような方法でキャッチされていますか?最近出会ったおもしろい音楽があったら教えてください

spotifyのオススメをよく聴いてますね。あとは、少し前まで息子がレコ屋で働いていて、彼も音楽好きなので、教わったりもします。最近だと、クルアンビンっていうテキサスの3人組がおもしろいです。タイの音楽とかが好きみたいで、音はすごく独特な感じなんですけど、絶妙に好みでよく聴いてますね。3人とも、ルックスもいいんですよ。彼らのライブ映像はYoutubeにたくさんあがっています。

ーーQ9.ファッションのこだわりや、永く愛用しているアイテムはありますか?

パンツはもうずっと黒ですね。あと、靴はコンバースをずっと履いています。あ、最近コンバースの色が変わりました。ここ3年ぐらい黒のローカットだったんですけど、白のハイカットになりました。フジロックに遊びに行ったらドロドロに汚れちゃって、仕方なく家にあった白を履いたら「あ、意外といいかも」と思って。

 

ーーQ10.息子の小山田米呂さんも東京のファッションアイコンとして注目を浴びていますが、息子さんとは音楽以外に、洋服のお話もされますか?

「Tシャツはインの方が正しい」ってよく言われるんですよ。「出してると、すごくおっさんっぽい」って(笑)。昔はインがおっさんって言われてたじゃないですか。今は逆なんだなと。Tシャツは、たまにもらったり、あげたりしますね。彼は背高いし痩せてるから、もうTシャツぐらいしか共有できないんですよ。


Cornelius Mellow Waves Tour 2018
7月21日(土)全公演チケット一般発売
オフィシャルHP先行受付
http://sp.wmg.jp/cornelius/entry/688
http://www.cornelius-sound.com/
受付期間:5/16(水)12:00~5/27(日)23:00
受付URL:https://l-tike.com/st1/mellowwaves2018

小山田圭吾 おやまだ・けいご

1969年東京都生まれ。89年にフリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、93年にCornelius(コーネリアス)として活動開始。98年『FANTASMA』を米マタドール・レコードからリリース。以降、国内外のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。2017年6月に約11年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Mellow Waves』をリリース。今年7月から開催されている「デザインあ展 in TOKYO」、「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」で音楽ディレクターを務めた。10月からは全国ツアーをスタートさせる。

 

 

Photo: Takuroh Toyama Text: Satoko Muroga  Edit: Kaori Nakamura

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