かわいい。その言葉の重さや意味合い、使用頻度は人それぞれ。そこへさらに“ネオ”=新しい、が付くとどんなことを思い浮かべる?多様なジャンルで活躍する5名の表現者に問いかけた。
グラフィックデザイナー・田部井美奈|自由に広がる! ネオかわいい論 vol.5
偶然生まれたものと集合体の魅力
田部井美奈
グラフィックデザイナー
「安易に“かわいい”って言葉を使わないようには意識しています。仕事上、共通言語として発することはありますけどね、“いい”という意味合いで。でも振り返って考えてみると、ひとつひとつ独立した別のものたちが、あるルールの上に組み合わさって、自然と現れてくる面白さや愛おしさに、そう感じることはあるのかも。たとえば、旅行した時にふと見かけた、リサイクルショップのショーウィンドウ内に置かれている、動物の置物、花瓶、ゴムホース。脈略が無いようで、何かしらの意志によって置かれたその3つの関係性とその佇まいは、見過ごすことができない、不思議な魅力があります。
同じく、デザインにもそのような考え方があると思うんです。オランダ出身のアーティスト、ウタ・アイゼンライヒの作品[A NOT B]は、果物や文房具を一見ランダムに置いただけの様に見えますが、組み合わされた相手によって、それぞれのモノが持つ特性や造形が際立ち、また写真にもかかわらず、デザイン的魅力を強く感じる作品となっています。大げさな演出はせず、たまたま出くわした関係性から面白さを導きだしています。
あとは、スキポール空港で1週間の間に旅行者から没収されたすべての品物を本にしたり、一頭のブタからつくられる全製品を分類した本を出版しているクリスチャン・メンデルツマの作品も、とても好きです。私も、コントロールしすぎず、なりゆきや、偶然現れたシチュエーションを見逃さずにいたい。これに対しては、自信を持って“ネオかわいい”って言えると思うんです」
tabei’s neo kawaii
🗣️
田部井美奈
2014年田部井美奈デザイン設立。書籍や広告など多岐にわたり活動。最新作は石川直樹が飛び込み競技の青少年を撮影した『MOMENTUM』(青土社)。