12 Jun 2022
木造民家を体感する粋人リノベ物件|クリエイターたちの快適空間に潜入 vol.6 「MABOROSHI」 「GEN GEN AN幻」主宰・丸若裕俊さん

独創的な活動を展開している人たちは自宅もオリジナルな魅力たっぷり。個々の感性が作る心地よいインテリアが素敵な暮らしを覗いてみました。
木造民家を体感する粋人リノベ物件
丸若裕俊
「MABOROSHI」 「GEN GEN AN幻」主宰
九州を中心に京都なども回る仕事柄、コロナ禍前は「月の3分の1ほどしかいなかった」という丸若裕俊さんの家。下町情緒が残る東東京の築80年の昭和の長屋を復元するように修繕した、映画のセットみたいな佇まいが特別すぎて驚く。
「古民家に住んでいる人も、床暖房やオール電化などとたいてい快適に過ごす手立てを施していますよね。でも僕は、“その当時”を体験したかった。すべてはお茶と香りの魅力を知るための思考を巡らす実験的なアトリエという気持ちです」
今では珍しい模様入りのガラスや木戸を残し、建物正面はよりイメージに近い古物の4面木戸を用意。“当時”を感じるべくすみずみまでこだわり手を入れたことで、電気の照明ではなく美しい自然光への感度が高くなり、1年中その変化ごと楽しんでいる。もちろん、寒い季節は厳しいけれど、朝起きる時に暖をとる順序など、不便からも智恵を得る毎日だ。
「少々理解されにくいリノベですが、おかげでお茶、香はもちろん、家具や空間の姿が陰影の中で神秘的にすら感じられるんです。実際に住めるこうした家と都内で出合えるのは、今後ますます難しくなる。最新住宅の魅力もありますが、こんな経験ができるのは今がギリギリです。周辺に友人が集まってきているのも、その貴重さが伝わるからだと思うんです」
丸若裕俊 まるわか・ひろとし
茶と香を通し、日本の風土が育む美を発信。2022年「MABOROSHI」を立ち上げる。
Photo: Yuka Uesawa Text: GINZA
GINZA2022年3月号掲載