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食品廃棄物を美味しい一品に。豊かさの裏と向き合うレストランへ。 エディター天野志穂のLONDON 10

食品廃棄物を美味しい一品に。豊かさの裏と向き合うレストランへ。 エディター天野志穂のLONDON 10

こんにちは。エディターの天野です。今回は百貨店セルフリッジズに期間限定で登場した風変わりなポップアップレストランのお話。実は、ここの料理はすべて、基本的に“捨てられてしまう運命にある素材”を使用していて、レストランの名もズバリ「wastED LONDON」。2015年にNYで開催されたポップアップ企画がロンドンに渡ってきたとうことで、さっそく友人とランチへ。

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セルフリッジズの1階から専用のエレベーターでレストランへ。イエローをベースにした装飾もスタッフのユニフォームも今回のポップアップのためにデザインされたもの。

 

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エレベータを降りて植物の植えられたほんのり薄暗いエントランスから長い廊下へ。そこには食品の連鎖を彷彿させる写真やフィルムが映し出されています。

 

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レセプションもナチュラルなしつらえ。

 

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薄暗かったエントランス周りから一変、レストランは最上階のルーフテラスなので採光もたっぷりで明るく気持ちいい空間。

 

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所々に廃棄素材のディスプレイが配されていて、レストランのテーマが一目瞭然。

 

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廃材をリサイクルしたテーブルには、ひとりひとりにメニューとその裏には食材(どんな部分が廃棄されているか)の説明が入った封筒がセットされていて、説明によると廃棄されるのは規格外の野菜だけでなく、チーズを作るときにできるホエイ(乳漿)や小麦ブラン(ぬか部分)、牛脂などなど。

 

料理はこんな感じ。英語メニューのまま紹介しますね。

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“Wasted Bread”:bran and barista milk bread, pea skin hard bread, Napoleonic margarine, whipped jamon drippings, whey ricotta

小麦ブランとカフェで残ったラテ用ミルクのパンと豆の皮のパン。ナポレオンのマーガリン(ナポレオン3世が19世紀に作らせたという牛脂とスキムミルクでできたもの)と生ハムの脂のホイップ、ホエイのリコッタ。

 

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Broccoli Stems : whey béchamel, dry-aged beef end crumble

ブロッコリーの茎にホエイのベシャメルソースに熟成牛の端のクランブル。

 

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Rescued Veal Nuggets : smoked tomato seconds ketchup, mango scrap and ginger mulch chutney, ash mayonnaise

乳牛の仔牛(オス)のナゲット。スモークされた傷物トマトのケチャップ、マンゴーの残片と生姜の搾りかすのチャツネ、炭マヨネーズ。

 

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Lamb Tail Lasagne : pasta trim, parmesan rinds

ラムテイルのラザニア。パスタの端切れとパルメザンチーズの皮。

 

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料理を運んでくるスタッフが材料について毎回きちんと説明してくれるので、なるほどと納得しながら食事ができ、テーブルでの話題もいつもよりちょっと社会派に(笑)。ただメニューだけでは想像できないものもたくさんあって、他のテーブルに運ばれる料理も気になって仕方ない。例えば、写真の木のようなものとか!

 

知ってました? 世界の食品廃棄は年間約13億トンで、全世界で生産される食品の約1/3相当だとか! 英国でも社会問題になっていて、スーパーやレストランで贅沢なほどふんだんに供給される食品の裏で、食べられるのに捨てられてしまうものの多いこと、多いこと。今回のレストランは、みんなが見て見ぬふりをしてしまいがちな廃棄される食品の運命に注目し、シェフたちのアイディアで美味しい料理へと変身させることで、食べる人たち全員が改めてこの問題について考えるきっかけを作ってくれた、そんな気がしています。


wastED LONDON
http://www.wastedlondon.com



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天野志穂

Shiho Amano
エディター&ライター。出版社の雑誌編集者だった2013年、ロンドンに住むチャンスに恵まれ、二つ返事で渡英。以降、フリーランスとして活動中。ロンドンのごみ収集にはリサイクル(ビンや缶、プラスティック、紙など)とリサイクルできないゴミ以外に、“フードウェイスト”という分類もあって、食品廃棄問題に自治体が取り組む姿勢は日本より一歩先をいっているのかもなぁ。なんて少しでも協力できることを考えるこの頃。“ガーデンウェイスト”専用のバッグがあるのも庭いじり好きな人の多い英国らしくて微笑ましい。

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