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“分かち合う”喜びこそが日々の時間を豊かにしてくれる。窪田裕介さん&藤原花恵さんのサステイナブルな生活

“分かち合う”喜びこそが日々の時間を豊かにしてくれる。窪田裕介さん&藤原花恵さんのサステイナブルな生活

自分にとって今本当に大切なこと、必要なものを見極めながら過ごす。東京で、そして地方へ移住して、サステイナブルな生活を実践する人の話。


窪田裕介、藤原花恵
Soif. オーナー、スタッフ

軽やかに暮らすフィロソフィー 窪田裕介、藤原花恵

“分かち合う”喜びこそが
日々の時間を豊かにしてくれる

近年、東京からの移住先として注目を集めている山梨県北杜市。車でも電車でも都内から2時間強とアクセスがいいにもかかわらず、豊かな自然があるのが魅力だ。自然派ワインの専門店「Soif.」を営む窪田裕介さんとパートナーの藤原花恵さんも移住組。JR中央線の長坂駅から徒歩5分ほど。住宅街の中にモルタルの箱を2つつなげたようなオシャレな建物が見えてくる。向かって左の扉がショップ、右のドアが自宅に続く、“職住一体”のスタイルだ。

窪田さんは山梨県甲斐市出身。東京の大学で学び、海外へと旅立った。

「バックパッカーみたいな感じでいろいろな国をまわるうち、その土地ごとに個性豊かなビールやワインがあることを知って、お酒って文化のひとつだと深く興味を抱くようになりました」

帰国後、日本酒専門店で働き始める。さまざまなお酒に触れるなかで、自然派ワインに出合ったことが大きかったという。

「ヴァン・ナチュールと呼ばれるワインは、ぶどうの栽培や醸造工程で農薬や酸化防止剤などの添加物を極力使用しません。発酵に用いられる酵母もぶどうの皮についたものなので、その土地で育ったぶどうの味、醸造家の個性がダイレクトに感じられる。そこが面白くて」

出店場所に北杜市を選んだのは、生まれ故郷に近く、澄んだ空気のなかでワインを楽しんでほしいとの気持ちから。

「ヴァン・ナチュールは自然とともに生き、そこから生まれるワイン。だからこそ、緑が豊富で空気が綺麗な場所でゆったりと味わってほしい。もちろん僕自身もそうありたいですから、ショップ兼自宅にして、ここで暮らすことにしたんです」

ワインのように時間をかけて
丸みを帯びていく暮らし

設計を手がけたのは、建築家である父親。当初、事務所として使用していたが、来客用としてリフォーム。その後、ふたりの居住空間となった。

「北杜市の移住者にはオーガニックの農家やレストランのシェフなど、食関係の人が多いんです。みんな自然が好きでこの土地にやってきた人たちなので、いつの間にか仲良くなって、お互いの家を行き来して食事をともにするように。農家さんが持ってきた野菜をシェフが料理するという贅沢な時間が日常になったので、それをより楽しもうとの思いから、大きなアイランドキッチンにして、設備も拡充しました」

東京での暮らしでは想像できなかった、自宅での豊かな食事時間。「ワンルームで家飲みっていうと、僕の場合は缶ビールとコンビニのおつまみでしたから」と笑う。

「勉強のためにヨーロッパへ行った時、ワイナリーに滞在したことがあったんです。レストランなんてほとんどない場所でしたが、そこに知り合いのシェフが来て、地元の食材とワインでもてなしてくれて。すごく自然体で、構えるところがない。そんな食事とワインの楽しみ方がすごくよくて。自分もいつかこんなことができたらいいなと思っていたんです」

移住したことで理想に少し近づいた窪田さん。部屋の様子も、東京時代からは大きな変化が生まれた。リビングにテレビは置かず、好きなレコードを静かにかける。窓は大きくとり、そこから季節ごとの自然や星空を見られるようにした。ゲストが多くてもゆったり過ごしてほしいと、ダイニングテーブルは大きめに。以前から集めていたハンス・J・ウェグナーのYチェアがよく似合っている。窓際に設置され、調理スペースも備えた薪ストーブは、食事の時間をより豊かにしてくれる存在だ。そして、この街に来てから、ふたりで少しずつ集め始めたというのが日本の作家ものの器だ。

「うちで食べる料理は、野菜をグリルしてオイルと塩をかけただけといったシンプルなものが多いんです。素材がおいしいので過剰に手を加えない。そういう料理には、やっぱり飾り気のない素朴な器がよく似合う。好きなのは船串篤司さんやKeicondoさん、山田洋次さんが手がけた皿やスリップウェア。素朴さがあり、気兼ねなく使えるものが好きですね。毎日使っているうちに質感が変わってくるのもうれしくて、愛着も増していきます。年月を経るごとに深みが出て、丸くなってくるのは、ワインと似てますね」

パートナーの藤原さんは秋田県出身。日本各地、さまざまな場所で働きながら暮らすスタイルを続けてきたが、農業に挑戦してみたいと北杜市に腰を据えることを決めた。

「地元の人が快く受け入れてくれる点が決めてでした。同年代で活躍している人が多くて、コミュニティになじみやすかったのもよかった」

最初は客として窪田さんと出会い、日々をともに過ごすなかで、同じ想いを抱いている。

「どんなワインも時間と場所をみんなでシェアできる喜びがあってこそ、より味わい深くなるんだなって」

知らない土地に移住し、同じ心地よさを共有できる仲間やパートナーができる。だんだんと土地になじみ、その一部になっていく。ふたりの暮らしは今まさに熟成に向かっているとき。日々穏やかな丸みを帯びて深みを増している。

窪田裕介 くぼた・ゆうすけ

2017年にナチュラルワイン専門店「Soif.」をオープン。

藤原花恵 ふじわら・はなえ

ショップで働きながら、地元で自然農法を学び、実践している。

Photo: Yuri Manabe Text: Yuriko Kobayashi

GINZA2022年3月号掲載

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