秋の高原でポッキーが食べたくなる!
トゥルリラは乙女の合言葉。

『野ばらのエチュード』は1982年10月21日発売。作詞・松本隆、作曲・財津和夫、編曲・大村雅朗。グリコポッキーのCMソングに起用され、サビのトゥルリラというスキャット風のフレーズが話題に。B面『愛されたいの』のイントロは2004年にMiss Mondayの『君に逢えてありがとう』でサンプリングされている。プロデュースしたLAアーティストが日本で出会った大村雅朗のサウンドに魅せられたのは、現在の世界的なシティポップブームを予感させる出来事だった。
M そして翌年のシングル『天国のキッス』に繋がっていく細野晴臣さんの起用。
W 『ブルージュの鐘』と『黄色いカーディガン』も名曲ですねぇ。松本さんから、細野さんと若松さんは合うと思うと推薦されて。なんといっても細野さんは天才ですし私も新しいチャレンジが大好き。ぜひにとお願いしました。はっぴいえんどやYMOのメンバーだった細野さんと聖子の組み合わせは大成功だったと思います。
M よく見るとこの2曲はドラムスのクレジットがないんですよね。
W アコーステイックなイメージがある曲ですが、実はリズムパートは打ち込みなんです。大村雅朗さんの片腕として音作りをしていた松武秀樹さんはYMOのサポートもしていた方ですから。松本さん、細野さん、大村さん、松武さんの組み合わせは最強。実験もたくさんしていただきました。
M アルバムにミュージシャンのクレジットを入れることについて以前に「リスナーに音楽的な意識を持って聖子を聴いて欲しくて」と語られていましたが、載る以上、逆にミュージシャンも手を抜けなかったでしょうね。
W (笑)それは私の意図した部分ではなかったですが、結果的にそうなっていたかもしれません。しかし本当に一流の方が参加してくれました。
M これだけ名曲揃いだと、ボツになった曲はなかったのか気になるところですが。
W ないない。もちろん修整してもらったことはありますが、みなさんいいものを作ろうという意識が強かったので全部がうまくいく。これはもう会社と一緒なんです。
M 若松さん、社長も会長も経験されているだけに。
W みんなが同じ方向を見ていると、どんなプロジェクトも必ず成功しますよね。みなさん聖子に真摯に対峙して才能を持ち寄ってくださっていたので。そこにはやはり松本隆さんの役割が大きかった。新しいクリエイターを紹介してくださり、聖子もそれにしっかり応えていました。持ち前の明るさと前向きな心でね。
M この連載、毎回人生勉強になります。そういえば昨年放送された聖子さんの40周年の特番で、『野ばらのエチュード』を作曲した財津和夫さんが、聖子さんの曲は聖子さんに合わせるより、いつも自分が歌うような気持ちで作っていたとお話しされていました。
W それは大正解だと思います!! 聖子に媚びて作るとどうしても新鮮さがなくなる。私がキャンディーズを担当したときも吉田拓郎さんに曲を書いていただきましたが、独創的なシンガーソングライターとアイドルのコラボは予想を超えた新しい世界を生み出すので。
M ラストの『真冬の恋人たち』では杉真理さんがデュエット・ヴォーカルで参加していて驚きました。杉さん、作曲もしたかったんじゃないですか?
W 私には何も言わなかったけれど(笑)、杉さんもいい曲書きますからね。このキャスティングは大村さんのアイデア。『Candy』は大村さんが、大滝詠一さんの曲とのバランスも含めてアルバム1枚を構築してくださっているので、大村さんの役割も大きかった。
M ♪かわいいね君~の部分は男性も歌いやすいので、全国の男子がここぞとばかりに聖子さんとの掛け合いを楽しんでいたんですよ。
W そうでしたか(笑)。
M 次回は、その杉真理さんも再び曲提供した傑作『ユートピア』のお話を伺います。お楽しみに。
