「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は、vol.102 麻倉ももと希望の名前。ニューアルバムについてのインタビューはこちら。
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.103
ホ・オポノポノ
vol.103 ホ・オポノポノ
2月は朝起きて、なんとなく気持ちが落ち込んでいることが多く。理由を探しても特に思い当たる節はないし、どーしちゃった?自分、となだめすかしながら過ごしていた。物事に理由や意味をその場で見いだそうとするのは、生き急ぎすぎているサインだし、何より楽しくない。分からないけど、まずやってみる。やりながら感覚を掴んでいく。行動を起こしたご褒美は、その行動が完了した後、または少し遅れてやってくるのだと思う。挑戦する前から、そんなの無意味だ、と機会を見送ることを繰り返していると、自分自身の成長も人生の展開も止まってしまう。不調の時は不調なりのベストを尽くせば良い。そうのんびり構えられるようになったのは、歳を重ねていく喜びのひとつだと思う。
それでもやっぱり、どうしても気持ちが上がらない日があって、電車に揺られながら「2月 憂鬱」と検索すると、“ウインター・ブルー(冬季うつ)”という言葉がヒットした。日照時間が短くなることでセロトニン分泌量が変化し、倦怠感や眠気に悩まされたり、寒暖差で自律神経も乱れがちになるのだとか。人によるかもしれないけれど、私の場合は分からないものを言語化できると気持ちが楽になるので「あ〜軽いウインター・ブルーなんだ!」と思えた次の瞬間に足取り軽く降車駅のホームに降り立ち仕事に向かえていた。
そして私の周囲でもぼんやりとした感情の揺れや体の不調を口にする人が多く、春を迎える前に起こりやすい症状らしいことを伝えると、困った顔がだんだんと緩やかに解け、自分が本調子でない時にそれをそっと口にできる場所があること、寄り添ってくれるムードが日常にあることがどれだけ大切なのかを改めて知った。
中国、深圳での海外公演前に、イヤモニで凝り固まった頭皮や耳周りをほぐしに行ったヘッドマッサージで、ひょんなことから、「ホ・オポノポノ」の話になった。私がこの本に出会ったのは10代で、そこから悲しくなった時や整理がつかない気持ちになった時、自分をヒーリングする術としてハワイで生まれた「ホ・オポノポノ」を実践してきた。少しスピリチュアルな話に聞こえてしまうかもしれないけど、「ありがとう。ごめんない。許してください。愛してます。」を心の中で唱えるだけで、不思議と気持ちが落ち着き世界を新しい心で捉えることができる。過去に起こったことを目の前の現実に適応しないというシンプルな流れだけど、シンプルなことだけにとっても奥深い。少し前までは人生の全ての日が光り輝いて、悲しみなどなくなればいいのに、と思っていたけど、今は少し違う。悲しみは必ず気づきに変わるし、その流れがあるから光がより輝く。2月はたくさん学べた。3月の日差しに私は何を見つけるだろう。
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家入 レオ
Leo Ieiri
1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。
2023年2月、約4年ぶりとなるアルバム『Naked』をリリース。12月には自身初の海外公演となる「LEO IEIRI Live in Shanghai」を中国・上海で開催。2024年2月には上海公演での反響を受け「LEO IEIRI Live in Shenzhen」を中国・深圳で開催。3月には日比谷野外大音楽堂にて2日間にわたって「家入レオ YAON ~SPRING TREE~」を開催。ジャンル・国内外問わず、幅広い活動を続けている。
Text:Leo Ieiri Illustration:chii yasui