職場の同僚のおじさん、高橋(角田晃広)が宇宙人であるという秘密を知った清美(市川実日子)と、その友達の葉月(鈴木杏)、美波(平岩紙)。彼女たちは早速、高橋の宇宙人ならではの能力を頼って「しょうもないお願い」を……。『ホットスポット』(日テレ 毎週日曜よる10時30分〜)2話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
1話レビューはコチラ。
『ホットスポット』2話「黒飴の伏線」なんて聞いたことがなさすぎる
「もう意図を汲む時代は終わったのかもしれない」

考察『ホットスポット 』2話
高橋さんのかっこよさと
「黒飴の伏線」
思わず「かっこいい〜!」と口に出しながら笑ってしまった。
高橋さん(角田晃広)が、中学校の体育館の天井に挟まったボールを取る。一見普通のおじさん、決してかっこいいとは言いがたい宇宙人が、「しょうもないお願い」に応える。ここまでは、かっこよくなる要素はなさそうだったのに。お願いを解決したのち、高橋さんは校庭に地上絵を描くいたずらを繰り返していた犯人たちに遭遇し、バレーボールを投げつけて倒す。一投目のあと、満月に照らされて体育館の屋上に立つ高橋さんのシルエット。そこに重なるヒーロー登場っぽい音楽!宇宙人が人類の敵を倒した!すごい!
天井に挟まっていたボールが3つ。犯人は4人組だったため、最後の一人には口に含んでいた黒飴を吹き飛ばして攻撃する。車で待機している遠藤清美(市川実日子)、はっちこと中村葉月(鈴木杏)、みなぷーこと日比野美波(平岩紙)、幼なじみの「貯金会」3人が遠足気分で買い込んだお菓子の中から渡されたもの。高橋さんを年寄り扱いして選んだ「渋い系」お菓子のひとつだ。いざ体育館に向かう直前、清美が一粒だけ持たせた黒飴の伏線。書いておいてなんだけど、「黒飴の伏線」なんてこれまで聞いたことがなさすぎる。そして、連続いたずら犯をやっつけたというなかなかのお手柄なのに、帰りの車での4人のトーンが淡々としすぎている。
高橋さんに「体育館の天井に挟まったボールをとってほしい」と頼んだのは、中学の教師をやっているはっち。お願いしておきながら、清美もみなぷーも、はっちさえも最初は付き添いもしないつもりでいた。1話で交通事故になりかねないところから高橋さんが清美の命を救ったところまではすごかったけれど、清美たちはそこから「もともとある能力を引き上げる」という宇宙人ならではの能力をちょっとしたことに利用する。嗅覚でホテルの備品持ち去り事件の犯人を見つけるのはかろうじて犯罪の解決だったけれど、そして結果的に偶然今回も犯罪を解決したけれど、「天井のボールをとる」はメンテナンスの部類だ。
身近にいる宇宙人に対する扱いの雑さ。日常と非日常がシームレスに入り混じって、すごいのにすごくない。カッコいいのに面白い。宇宙人といういちばん現実離れした存在が、「ただの学校あるある」という日常の極みに駆り出される愉快さ。日曜の夜にこんな1時間がある喜びを、改めて噛みしめる。
Edit_Yukiko Arai