宇宙人の高橋さん(角田晃広)の過去が明かされる 『ホットスポット』(日テレ 毎週日曜よる10時30分〜)8話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。7話レビューはコチラ。
『ホットスポット』8話。丁寧に積み重ねたからこそ成立する実験回
レイクホテルができる前の大衆浴場の温泉がホットスポットだったのよ

考察『ホットスポット 』8話
放送時間の8割をかけて
喫茶店で喋る回
『ホットスポット』8話はかなりの実験回ではなかったか。
貯金会の3人がおなじみの「もんぶらん」に集ういつもの光景。そこで、ホテルの長期滞在客・村上さん(小日向文世)が50年後の世界からやってきた未来人であること、村上さんからホテルがなくなると知らされたことを清美(市川実日子)がみなぷー(平岩紙)、はっち(鈴木杏)に共有する。7話ラストから8話冒頭にかけて描かれた、驚愕の真実だ。3人はホテルがなくなって一番困るのはホテルの温泉で体力回復している高橋さん(角田晃広)であることに思い至り、彼を呼び出す。高橋さんは自分が宇宙人のくせに未来人の存在を信じない。ここで会合は一旦終わるが、ホテルがなくなることが真実だと判明する描写を短く挟んで、再び舞台は「もんぶらん」へ。改めて4人が集まっている。そして、ここから最後まで、8話は基本的にはずっと、「もんぶらん」での会話が続くのだ。正確にはホテルのオーナーと支配人のやりとりが短く2度挟まるし、高橋さんが自分は地球人ではないと知ったところから人生を辿っていく話は回想シーンとして描かれるのだが、それにしても! 8話で最初に「もんぶらん」のシーンに突入するのがTVer時間で開始7分38秒。ホテルのシーンを30秒挟んで、再びの集合が12分45秒。そこから最後まで、放送時間のおよそ8割を費やして、登場人物たちはずっと、言ってしまえば喫茶店でしゃべっているだけ。視聴者はまるで自分たちも同席して、高橋さんが過去を詳らかに語る様子をリアルタイムで見守るかのような視聴体験をする。
この「もんぶらん」回が成立した理由のひとつは、回想シーンが魅力的だったことだろう。なんといっても安藤サクラ! 高橋さんの母親として登場した彼女に、一瞬『ブラッシュアップライフ』(2023)で彼女が演じた主人公・麻美の何回目かの人生で、山梨で母親になった回があっただろうかと考えてしまった。けれど、その邪念はすぐに消えていった。彼女が演じる高橋さんの母親が、息子と夫を深く愛するとてもチャーミングな女性だったから。『ブラッシュアップライフ』の麻美とは違う、昭和の女性らしさを醸し出しながらも普遍的な魅力をたたえていた。1話の冒頭で登場していた父親(野間口徹)もまた、慎みがあり、家族への愛情の深い男性だった。高橋さんの回想シーンは、もうひとつのドラマを観るかのような見応えがあった。
Edit_Yukiko Arai