銀座には、何十年も町の文化を支えてきた建築と、町の未来をつくる新しい建築とが共に並んでいる。この町で書店を営む森岡督行さんが、それらを案内。100年前のライカで写し、独自の視点で解説する。#森岡督行がライカと巡る銀座をつくった名建築10
🎨CULTURE
「SEIKO HOUSE/和光 本店」人々を見守る時計塔と鐘の音が、刷新し続ける町のシンボル
森岡督行がライカと巡る銀座をつくった名建築10
SEIKO HOUSE/和光 本店

銀座を見守る時計塔と鐘の音が
刷新し続ける町のシンボル
銀座を象徴するこの建築は、見る角度によって表情が変わるのが魅力です。下から仰ぎ見たり、近くのビルの上階から見渡したり(上の写真)。写真のアングルを探すようにいろんな場所から眺めれば、新鮮な姿と出合えるかもしれません。また、町に欠かせないのが正時に時計塔から流れる鐘の音。建物はほぼ真南向きで、朝から夕方まで日が射しています。つまり何十年にも渡って吸収した日光のエネルギーを、鐘に乗せて銀座に拡散し続けており、そのパワーはゴジラを倒すことさえできるのではないか、と私は勝手に思っているのです。ところで、実は地下にも“時計”があるのをご存知でしょうか。それは2024年に新装された「和光」アーツアンドカルチャーにある、時計の針を表した什器(下の写真1枚目)です。
樹齢1000年越えの杉で作った、新しい時を刻むデザイン。刷新し続ける町の誇りを感じます。



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SEIKO HOUSE/和光 本店
1932年竣工。渡辺仁建築工務所の設計で建てられた時計塔のある建物は、緩やかな曲面をもつネオ・ルネッサンス様式。建物の正式名称は「SEIKO HOUSE」。
住所_東京都中央区銀座4-5-11
tel_03-3562-2111
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森岡督行
もりおか・よしゆき>> 1974年山形県生まれ。一冊の本を売る書店、「森岡書店」店主。『銀座百点』でエッセイ連載中。GINZA SIXのポッドキャストでパーソナリティも。著書に『800日間銀座一周』(文藝春秋)、『銀座で一番小さな書店』(小学館文庫)。
Photo, Illustration_Yoshiyuki Morioka Text_Masae Wako
