銀座には、何十年も町の文化を支えてきた建築と、町の未来をつくる新しい建築とが共に並んでいる。この町で書店を営む森岡督行さんが、それらを案内。100年前のライカで写し、独自の視点で解説する。#森岡督行がライカと巡る銀座をつくった名建築10
🎨CULTURE
「東京銀座資生堂ビル」赤レンガ色の温かなビルは、今も昔もこの町の出発点
森岡督行がライカと巡る銀座をつくった名建築10
東京銀座資生堂ビル

赤レンガ色の温かなビルは
今も昔も銀座の出発点
「誰がこの美しい銀座の町の礎を築いたか」と、もしも聞かれることがあれば、私は〈資生堂〉初代社長の福原信三さんだと答えるでしょう。デザインと仕事の全てが丁寧で繊細。その姿勢が周囲へも伝わって、町全体をよくしてきたのだろうと思います。建築についても同様です。2001年に完成した「東京銀座資生堂ビル」は、「高さ制限56m」という銀座地区ルールが適用された最初のビル。これが出発点となって周囲の建物も変わりはじめ、新しい銀座の町並みがつくられました。〈資生堂〉はまた、1872年の創業以来ずっと、人々の喜びに寄り添ってきた企業だとも思います。自由に恋愛をし、働き、表現活動に挑戦する女性たちを、いつでも支えてきた。ビル外観の赤い色(下の写真)を見ると、資生堂の「人を喜ばせたい」気持ちが今も昔も町へ広がって、誰かを応援しているように感じます。



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東京銀座資生堂ビル
1872年に資生堂が創業した場所に、2001年落成。基本設計はスペインのリカルド・ボフィル。地上11階、地下2階建て。
住所_ 東京都中央区銀座8-8-3
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森岡督行
もりおか・よしゆき>> 1974年山形県生まれ。一冊の本を売る書店、「森岡書店」店主。『銀座百点』でエッセイ連載中。GINZA SIXのポッドキャストでパーソナリティも。著書に『800日間銀座一周』(文藝春秋)、『銀座で一番小さな書店』(小学館文庫)。
Photo, Illustration_Yoshiyuki Morioka Text_Masae Wako
