明治以降の近代化のなかで数多くの名建築が作られ、今も大切に受け継がれている京都。洋風建築や学校建築、近代和風建築、モダニズム建築など多様な建築を巡るのも楽しみのひとつ。建築史家・倉方俊輔さんに、今訪ねたい京都のモダン建築とその魅力を聞いた。前編はこちら。
京都のモダン建築とその魅力とは?後編
フランソア喫茶室、国立京都国際会館etc.

KEYWORD 4
ものづくりの街としてのサロン文化
入り交じる西洋建築の趣が
もてなしの心を伝える
喫茶文化が脈々と根づく京都で、昭和9(1934)年創業の「フランソア喫茶室」は、現存する喫茶店のなかで3番目の古さを誇る。戦時下の日本にあって、社会主義運動家だった創業者・立野正一は平和や未来、文学、芸術について自由に語り合えるサロンとしてこの店を開いたのだ。昭和16(1941)年に北側の町家を手に入れて改装し、戦後の昭和25(1950)年に南側の改装を終えると、南北2棟の現在の姿となった。
北棟の設計を手掛けたのは立野の友人である、京都大学のイタリア人留学生、アレッサンドロ・ベンチヴェンニ。外観はゴシック様式の尖塔アーチ、コロニアル様式のベランダ、ロマネスク様式の装飾を備え、今と変わらない姿が当時の写真に残されている。内観も同様にゴシックやバロック、古典主義など、西洋のさまざまな建築様式を取り入れたデザイン。古代ローマの建築に通じる折天井とドーム、アーチを描いた漆喰の壁、重厚な円柱。さらに画家・高木四郎によるステンドグラスと、彫刻家・山崎脩がデザインした椅子が彩りを添え、ほかにない優雅な趣をたたえている。
「工芸品から身近な日用品まで、ものづくりの街でもある京都。訪れた人に喜んでもらえるようにと、タイルや木を駆使して工夫を凝らし、丹精込めて完成させた空間は、京都のものづくりともてなしの精神の象徴。そのデザインが今も健在で、そこに身を置いて過ごせるのが喫茶店ならではの魅力」
供されるのは濃い目のブレンドにフレッシュクリームが浮かぶオリジナルのコーヒー。クラシックが流れる静寂のなかでも、人々の会話で賑わうひとときでも、この空間ならではの心地よさに包まれるだろう。
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フランソア喫茶室
2003年に喫茶店として初の国の登録有形文化財に登録された。
住所_京都府京都市下京区西木屋町通四条下ル船頭町184
tel_075-351-4042
営業時間_11:00〜22:00(フード20:00LO、ドリンク&ケーキ21:30LO)
定休日_12/31〜1/2
Photo_Kiyoshi Nishioka Text_Mako Yamato





