絶対に手放せないジャケットや、ずっとそばに置いておきたいバッグ。日々の表現を支える宝物は、いつだってクローゼットの中にある。ファッション好きなあの人が語る、残しておきたいものの話。#残しておきたい宝物
パフォーミングアーティスト・アオイヤマダの残しておきたい宝物:母から受け継いだスカート
大好きな母のおさがり

大好きな母のおさがり
観る人の記憶を刺激し、眠っていた感情をするすると引っ張り出す。そんなパフォーミングアーティストのアオイヤマダさん。大切にしているのは、母親のクローゼットからもらってきたかぎ針編みのスカートだ。
「母がこれを買ったのは、お腹の中に私がいた18歳の時。選んだ理由を聞いたら、〝人魚になりたかったから〟と返ってきて。母親からそういうワードが出てきたことにドキッとしたし、すごく素敵だと思いました」
服に興味をもったのは母親の影響。アオイさんが小学生の頃から、『VOGUE』などのファッション誌を毎月買ってくれたのだとか。
「古着の楽しさを教えてくれたのも母。学校へ行きたくない時は、二人で古着屋さんに出かけてたな……。だから上京した時もまず古着を探したのですが、東京にはお店が多すぎて、自分の好きなものが分からなくなってしまったんです。そんな時に思ったのが、身近な人の服っていいなということ。気持ちがあったかくなるものや思い出のあるものに触れたくて、長野の実家へ帰るたびに祖母や母のクローゼットから、服をもらっていました」
そうやって手元にやってきたスカートは、アオイさんいわく「服を超えた存在」だ。
「はいているとそばに母がいるようで安心するし、心がそわそわする時に着ることもある。色や雰囲気は穏やかですが、私にとってははっきりとした輪郭を感じる存在です」
これを着た日は褒められることが多く、人とつなげてくれる服だとも感じている。
「母のおさがりだと話すと、お母さんはどういう人?って会話が広がることも多いんです。ちなみにどんな人かといえば、蛍光イエローのTシャツに腿がピタッとしたフレアパンツをはき、このニットスカートを重ねばきして小さな私を抱っこした昔の写真があって。そういう姿がとてもカッコいい人です」
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アオイヤマダ
>> 2000年長野県生まれ。映画『PERFECT DAYS』への出演や東京2020オリンピック閉会式ソロパフォーマンスなど。所属するクリエイティブコレクティブ「海老坐禅」の作品集も発売中。©️Naoko Hasegawa
Photo_Toshio Kato Text_Masae Wako