誰しも着こなしの要となるアイテムがひとつくらいはあるはずで、その人らしさを形づくるエッセンシャルと言えるのではないか。スタイルに一家言ありな6人に不可欠な私物を見せてもらった。これだけは譲れない、“とっておき”があるって素敵じゃない?#あの人のスタイルに欠かせないもの
イラストレーター・一乗ひかるのスタイルに欠かせないもの
美大時代からトレードマークになっているキャップ
イラストレーター・一乗ひかる
各所で買い集めたキャップ

「作業用に被っていたものが、いつしか私のアイコンになりました」
普段あまりアクセサリーをつけないし、服装はTシャツにデニムのようなシンプルな格好が多いので、アイテム不足で見た目が殺風景になることが多くて。そんな時にキャップがあると全身の収まりが良くなるし、物足りなさが減るなあと思って被るようになりました。服がおとなしいぶん、カラフルで、刺繡やワッペンが際立つものが好き。「あの人に会うから」「この場所に行くから」と意味を考えながら選ぶのも楽しいです。
キャップを被るようになったのは美大生の頃。制作をしていると下を向くことが多く、よく髪の毛が垂れてきて邪魔だったんです。キャップを被ると気にならないし、都合が良かったんですよね。当時よく被っていたのは古着店で買ったマルボロの赤いキャップ。ロゴも可愛いし、コーデュロイの質感も好きで。遠目からでも赤が目立つから、「今日もいるね」って私のトレードマークみたいになっていました。それ以来、目に留まったら少しずつ集めてきて、この間整理したのですがそれでもだいたい20個くらいはあると思います。なかでも知り合いのブランドから販売されたもの、友人が手掛けたマーチ、美大の先輩が作った作品のようなパーソナルな帽子はすごく身近で、愛着が湧きますね。ちなみに、田原町の「メイプルピザ」のキャップは、私がピザボックス用にデザインした手描きの文字が刺繡で入っています。
以前は取材を受ける時はキャップを外していたのですが、ある時ふと、男性のアーティストは普段のままの服装で、帽子を被って取材を受けているなと思ったんです。女性でそういう人をあまり見なかったからなんとなくキャップを外していたけど、イラストレーターという職業だから許されることもあるだろうと。“既成概念を壊す”なんて大きな話じゃないですけど、自分なりにちょっと試してみようと思って、今はキャップを被ってメディアに出ています。

Photo_Takao Iwasawa Hair&Make-up_Kazuyoshi Miyamoto Text_Neo Iida
