ロンドンを拠点に、90年代から一貫して“リアルな女性像”を撮り続けてきた写真家アンジェラ・ヒル。35mmフィルムのみを使用し、ヘアメイクも照明もスタジオも使わない。その揺るがないドキュメンタリー性と透明なまなざしは、2025年 〈ミュウミュウ/Miu Miu〉ホリデーキャンペーンにも強く息づいている。
撮影の舞台はイギリスのエリザベス朝様式のマナー・ハウス。若い女性たちが歴史と記憶の層の中を歩く姿を、Super 8 とフィルムで捉えた本キャンペーンについて、アンジェラ・ヒル本人に話を聞いた。
ジジ・ハディッド、デデ・マンスロらを起用した2025年ホリデーキャンペーンの撮影舞台裏について独占インタビュー

ロンドンを拠点に、90年代から一貫して“リアルな女性像”を撮り続けてきた写真家アンジェラ・ヒル。35mmフィルムのみを使用し、ヘアメイクも照明もスタジオも使わない。その揺るがないドキュメンタリー性と透明なまなざしは、2025年 〈ミュウミュウ/Miu Miu〉ホリデーキャンペーンにも強く息づいている。
撮影の舞台はイギリスのエリザベス朝様式のマナー・ハウス。若い女性たちが歴史と記憶の層の中を歩く姿を、Super 8 とフィルムで捉えた本キャンペーンについて、アンジェラ・ヒル本人に話を聞いた。

――今回のキャンペーンでは「時の移ろい」「家族の館」といった詩的なテーマが掲げられています。どのようにビジュアルへ落とし込んだのでしょうか。
私のアプローチはどの作品でも共通しています。すべてをできる限り“リアル”に見せること、そして自分の記憶や子ども時代の感覚に触れることです。若い女の子たちが古い遺跡や歴史的な場所を探検する──それは私自身が子ども時代に両親とよくしていたことでもあり、とても自然に感じられました。
――エリザベス朝のマナー・ハウスという歴史的な場所での撮影でした。どんなインスピレーションがありましたか?
とにかくインスピレーションにあふれていました。緑の多さ、石のにおい、建物に生えた苔……そして〈ミュウミュウ〉の服は美しく、着ると自然に“無理なく”馴染む。場所と服が互いに引き立て合っていました。
――これまでの作品でも一貫してフィルムにこだわられていますが、今回Super 8を用いた理由、そしてデジタルにはない魅力をどのように感じていますか?
私はこれまで一度もデジタルで撮影したことがないんです。Super 8 の“偶然性”が大好き。予測できず、コントロールできない。その不確かさが、むしろ自由にしてくれる。最終的にどう仕上がるかまったくわからないところが魅力なんです。
――ジジ・ハディッドやデデ・マンスロら多くのモデルがキャンペーンに登場してますね。自然な表情はどのように生まれるのでしょう?
私は撮影中ずっとモデルに話しかけます。家族のこと、これからの夢、普段の生活……そうした会話の中で、彼女たちは自然と心を開いてくれる。お互いがカメラを忘れて友人のようになるんです。私は、彼女たちが一番気を抜いた瞬間、ふとした仕草や表情を撮っています。
――90年代から一貫して “リアルな女性の姿” を記録してこられましたが、今回のキャンペーンにおける〈ミュウミュウ〉が描く女性像とは、どのような点で親和性があると感じますか?
大きく通じるものがあると思います。着る人が自然体でいられて、背伸びをしなくてもいい──〈ミュウミュウ〉を選ぶ人は、個性的で知的で、自分自身であることを大切にしていると感じます。
――今後、どんなテーマに挑戦したいですか?
これまでと同じように、若者を記録しつづけたいと思っています。それからもっと映画的な作品、動く映像にも力を入れていきたいですね。
アンジェラ・ヒル>>90年代から現在まで一貫してストリートキャストの女の子たちを35mm フィルムのみで撮り続ける写真家。ヘアメイク・ライティング・スタジオ不使用という徹底したミニマルな手法で知られ、素のままの少女/女性像を写し出してきた。
著書に『SYLVIA』『EDITH』『X GIRL SHOW』など。現在は Super 8 での映像制作も行い、『The Face』、『Marfa Journal』、『Fantastic Man』ほか多数のファッション媒体で活躍中。
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