台所仕事をめぐって、しばしば話題に上るテーマのひとつに「つくり置き」がある。〝あらかじめ多めに調理し、冷蔵庫に保存しておけば食事のたびに料理をする手間も時間もかからない〟という効率的な方法。たくさんつくって余っちゃった……のではなく、コトを計画的に進めていくのが「つくり置き」のキモである。私の友人にこれを得意とする料理上手のひとがいて、忙しい彼女の習慣は、日曜日は「つくり置きの日」。買ってきた野菜はすべて洗って水切り→せん切り→小分けして冷蔵保存。肉も、下味をつけたり冷凍したり、だいたいの料理の流れは決めてあるという。すごいなあ、と感心すると、平日に買い物に行かずにすむし、よけいな出費が避けられて合理的なのよ、という返事だった。
ただ、ひとそれぞれに性分というものがある。私の場合は、行き当たりばったりが気楽なほう。三、四日先に食べたいものや身体の調子もわからないし、台所で待機中の「計画」が気になって動きが鈍くなる。そんな傾向を自覚したのは、もちろん「つくり置き」を試したことがあるから。でも、私にはあまり向いていないようだ。
でも、手間も時間もかけずにおいしいものが食べられたらウレシイ。私の数少ない「つくり置き」路線のメンバーは、素きのこ。きのこを五種類くらい切って合わせて火を通し、あとは風の吹くまま、気の向くまま。あえて味をつけないのは、そのときの気分と事情でどうにでも化けられるように。
【材料】
いろんなきのこを組み合わせて約500g(しめじ、えのき茸、舞茸、椎茸、マッシュルームなどなんでも)
塩小さじ1 酒小さじ1 水50cc
【つくり方】
①しめじ、舞茸は小房にほぐす。えのき茸は短く切り、マッシュルーム、椎茸は厚めに切る。
②厚手の鍋にすべての材料を入れ、塩、酒、水を入れる。
③ふたをして、中火で7〜8分火を通す。途中でさっくりと混ぜ、全体がとろりとしたら火を止める。
最初は、えっこんなにきのこをたくさん!?と思うでしょうけれど、大丈夫。きのこから水分がたくさん出てしゅるしゅると嵩が減り、仕上がりはとろんと透明な一体感がある。塩は保存のため、酒はオマジナイ。
さあ、どのように生かしましょう。私のツートップは、きのこのパスタ(フライパンにオリーブオイル、にんにく、素きのこ、唐辛子を入れて炒めると、たちまちソースが完成)、きのこ炒飯(刻んだパセリとともにご飯に入れ、炒めるだけ)。きのこのあんかけもよくつくる。小鍋に入れて温め、水溶き片栗粉でとろみをつけて豆腐にかけたり、醤油とみりんを足してご飯にのせて小丼にしたり、オムレツや肉のソテーの付け合わせにも。
きのこ軍団の頼もしい声が聞こえる。いつ、どんなタマが飛んできてもきっちり拾いますよ、まかせてください!

