食べて、美味しいだけじゃない。そこで過ごす時間も含めて特別な体験を味わえるから、わざわざ訪れたくなる。行き届いた設えと店主の審美眼に触れられる、京都の3軒をピックアップ。#この1軒が京都旅の目的になる
京都「Farmoon」まるでインスタレーション。五感が奮い立つ食体験を
この1軒が旅の目的になる

フードマニアのおすすめコメント
「キッチンとの境界が曖昧な不思議な空間。ここに集まる人は食に加え、場の持つパワーにも惹かれているのだと思います」(フォトグラファー・嶌村吉祥丸)
「何かの節目や自分へのご褒美として行きたくなる場所」(手芸屋「yuge fabric farm」・川勝裕哉)
まるでインスタレーション
五感が奮い立つ食体験を
銀閣寺からほど近い場所に、料理家・船越雅代さんが「Farmoon(ファームーン)」を構えたのは8年前。以来、世界中からアーティストが訪れては、コラボレーションを重ねてきた。レジデンスやギャラリー、週末の日中は茶楼として開かれる、アトリエ兼レストランだ。彼女のキャリアはニューヨークから始まった。彫刻を学んだ後に料理の道へと進み、「Blue Hill」「WD50」などで研鑽を積む。世界を旅する船上シェフを経て、2012年より京都を拠点に活動する。
「京都に住んで13年。生産者との距離がより近く、深くなってきています。料理はいつも、素材ありき。週に何度か大原に通い、野菜は直接農家から、魚は『セルフィッシュ』、肉は『南山』から。信頼する生産者、お店から届く素晴らしい食材との出合いで、素材の魅力を引き出す、より〝シンプルな料理〟へと向かっていると思います」


シンプルでありながら、その世界観はジャンルを超えた〝船越ワールド〟そのもの。例えば、ズッキーニのカルパッチョも、透けて見えるくらい薄くスライスしたズッキーニにトマトのジュを凝縮した透明なソースを合わせ、味の想像が予定調和では利かない見た目の美しさと味わいを表現する。料理を盛る器は、作家の作品や、国や時代の異なるアンティークを交え、もはやインスタレーション作品のよう。そんなお店の楽しみ方を船越さんはこう話す。
「特等席は調理台前のカウンター。料理を仕上げていく姿、音や香りも間近で楽しんでいただけます」
まさに、五感で食を体験する唯一無二の場所。憧れのプライベートレストランだが、実は昼間の茶楼を訪れた人には、予約用のメールアドレスが伝えられるという。いつかの京都旅で、その扉を開けてみたい。
この日のメニューは、ズッキーニのカルパッチョ、きのこのトロフィエ、焼きナスのビーツタルト、フラットブレッド。コースは野菜3〜4品、魚 or 肉のメイン、パスタ、デザート、おまかせ全7〜8品にペアリングが付いて¥24,000〜。
Photo_Yoshiki Okamoto Text_Midori Nagase





