2022年、是枝裕和監督作『ベイビー・ブローカー』公開時の来日以来、2度目のGINZA登場。相変わらず、屈託なく笑いながら的を射た答えをくれる、とても感じのいい人だ。新作映画『緑の夜』(1月19日公開)では、意外な組み合わせのキャスティングが注目されている。長年、中国映画界のメインストリームを走ってきたファン・ビンビンさんと、韓国のインディーズ映画畑出身のライジングスターであるイ・ジュヨンさん。ジュヨンさん自身、互いの化学変化が楽しみだったそう。
イ・ジュヨン 映画『緑の夜』インタビュー
「映画作りは粘土遊びのよう。崇高で美しいプロセス」
──今回、共演者のファン・ビンビンさんから直筆の手紙をもらったことが、出演のきっかけになったとのこと。どのように感じましたか?
順を追って話しますと、最初はハン・シュアイ監督からオファーがありました。もともとお二人の間で、「イ・ジュヨンをキャスティングしよう」という話が出ていたそうです。脚本をもらった時は、「やります」と即答できませんでした。物語が静かに流れていくというより、時に強烈な表現もある作品で、監督が生かそうとしている独自のカラーを表現できるかどうかが心配でした。果たして自分にできるだろうかと、悩む時間が必要だったんです。
その間に、ファン・ビンビンオンニ(*「オンニ」は韓国語で「お姉さん」の意)と監督から直筆の手紙が届きました。そこには企画意図や、私と一緒に映画を撮りたい理由が書かれていて。誠意を尽くした気配りに心動かされ、出演を決めました。とにかく二人を信じてついていくのみだ!と。
──劇中では、ファン・ビンビンさん演じる、韓国で鬱屈と暮らしている中国人の女性が、イ・ジュヨンさん扮するミステリアスな緑色の髪の女と出会い、アンダーグラウンドな世界に誘われていきます。ジュヨンさんは以前、出演作を選ぶ際のポイントとして、「自分がこのキャラクターを演じたら何ができるかを考えている」と話していました。今回なら何ができると感じましたか?
監督から企画意図の説明があった時、惹かれた言葉がありました。それは「スクリーンの中で、異なる境遇の女性同士が頼り合い、満たされていないところを満たし合う。つまり、女性を助けられるのは女性なんだと伝えたいんだ」というもの。ファン・ビンビンオンニとお会いするのは初めてでしたが、お互いに国籍も違えば、これまで送ってきた人生も異なります。そんな私たちがスクリーンに映し出された時、監督の意図も相まり、どんな映画が生まれるんだろうと興味をそそられました。
──演じるのに苦労した部分はありますか?
グローバルな作品なので、きっと多くの方は、私が言語の壁に苦労したんじゃないかと想像するかもしれません。でも、是枝裕和監督による『ベイビー・ブローカー』の撮影をすでに経験していたので。是枝監督とコミュニケーションをとる中で、言語の違いによる難しさはないことは知っていました。
苦労したシーンをピックアップするのは難しいですね。撮影からかなり時間が経ったので、今となっては全体的な印象が残っているのみです。ただ、自分よりファン・ビンビンオンニが大変だったんじゃないかと思います。特に、バイクの二人乗りシーン。オンニが運転し、私は後部座席に座ったんですが、撮影時期が真冬だったので。私はオンニが風よけになってくれて大丈夫だったんですが、風が本当に冷たかったのではないかと。
──以前のインタビューで、バイクに乗るのが好きと話していたので、「バイクシーンは楽しかった?」と聞きたかったんですが、真冬でそれどころじゃなかったんですね。
そうなんです。原付にもバイクにも乗れます。実はあのシーン、「私がオンニを後ろに乗せて運転するのはどうでしょう?」と監督に提案してみたんです。でも、監督は私にどうしても後ろに乗ってほしかったようで、受け入れてもらえませんでした(笑)。
Text & Edit_Milli Kawaguchi