アニメ「オッドタクシー」のクリエイター、木下麦(監督・キャラクターデザイン)と此元和津也(原作・脚本)が再タッグを組み、死にかけのヤクザが人生を賭けた大逆転を描くアニメーション映画『ホウセンカ』(10月10日公開)。独房で孤独に死を待つ無期懲役囚の老人・阿久津実。彼に声をかけたのは、人の言葉を話す一輪のホウセンカだった。W主演の声優を務めるのは、主人公・阿久津の“過去”と“現在”を演じ分ける小林薫と声優初挑戦となる戸塚純貴。阿久津のパートナー・永田那奈の過去を演じた満島ひかりと戸塚が語る、『ホウセンカ』の世界で過ごした忘れがたい時間のこと。
戸塚純貴×満島ひかり
映画『ホウセンカ』がつなぐ、ふたりの関係

──今回、声優としてご活躍の満島さんと、声優初挑戦の戸塚さんは、パートナーである阿久津と那奈という役を演じるうえで、どのように関係性を作りながらレコーディングを進めていったのでしょうか?
満島 声の収録は2日間だったのですが、戸塚さんとも初めての共演で。スタートはやっぱり緊張しちゃったけど、この限られた収録時間の中で二人が一緒に暮らしている日常をどんなふうに声にできるか、立ち止まって話しながら作っていったと思います。もちろん声を合わせることもそうですが、空気や呼吸を合わせていくために録ったものを聴いてみて、「もっとこうしたいね」ってパーツごとに確かめながら、最終的には流れで全体を録っていきました。木下監督の描きたい世界観が見えるまで、どんな声を出したらいいのか、どこまでのテンションでやればいいのか、時間が少し必要だったというのもあって。戸塚さんと私だから生まれることを、丁寧に探せる環境がありがたかったです。
戸塚 僕は声優が初めての経験で、作業的にも技術的にもわからないことだらけだったんですけど、なんとなく自分の耳を信用しながら、聞いた声、セリフの中から入ってくる音の中で違和感ややりづらさを覚えて、うまく気持ちがはまってないなとか、会話ができてないなと心の中で感じていたんです。そうしたら、満島さんが僕が思っていたことを全部汲み取って、「ここ、ちょっとやりづらくない?」と言ってくれたので、まるで内臓を取り出されているかのようでした(笑)。自分の中の疑問をあまり伝えられない性格なので、自分が考えてできることを頑張ってやろうとしていた中で、満島さんがすごく演じやすい環境を作ってくれました。
満島 2人での時間なので、何か合わないときは私も同じような気分になっていたんだと思います。私たちがどんなふうに一緒にいるのか絵の中から聞こえてしまうはずなので、違和感があるときは木下監督に演出をもらいながら、何度か試させてもらいました。いつもちょっとこわいのは、プレイヤー(演じ手)になって物語の世界に生きているときと、クリエーションするスタッフの一員になって現実的に考える頭の動きが違うこと。そのバランスを取ることはどの現場でも大変で。できればプレイヤーだけでいたいから、どうしても話さなきゃなと思うときだけ伝えるようにしています。収録の2日間、戸塚さんのこのなんとも言えない空気が……。
戸塚 ボーッとしてる。
満島 (笑)。呼吸が深いというか、ゆっくりしてるというか。現場でも、「休んでる?」という感じがちょっとあって(笑)。
戸塚 まあ、そうかもしれない。
満島 人や場所に左右されないマイペースな感じがあるから、どんな話をしていても、物語の住人に戻りやすかった。
戸塚 伝えるって、かなりエネルギーを使いますからね。
Photo_Mai Kise Styling_Onizuka Miyoko(Ange_Totsuka), Kazuro Sanbon(Mitsushima) Hair_Kohei Nakashima(UNVICIOUS_Totsuka) Make-up_Kohei Nakashima(UNVICIOUS_Totsuka), Naoki Ishikawa(Mitsushima), TETSU(SIGNO_Mitsushima) Text&Edit_Tomoko Ogawa














