ドラマの人気を後押しする衣装を深掘り＜スタイリスト編＞
毎週火曜よる10時からTBSで放送中のドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。無料配信再生回数が歴代のTBS全番組で最多というほど、高い人気を博している。ストーリーはもちろん、視聴者の目を惹きつけるのは、どんどん変わっていく山岸鮎美（夏帆）と、ちょっとダサめとも言われる海老原勝男（竹内涼真）のファッション。今作で主演の2人と鮎美の友人、吉井渚（サーヤ）の衣装を担当したスタイリスト Babymixへの取材を通して、衣装を掘り下げる。
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「おかずが全部茶色い」と恋人が作った食事にダメ出しをしてしまう化石男・勝男が、彼に尽くしてきた料理上手な鮎美に振られたことをきっかけに、自炊に目覚め、お互いが変わっていく成長と再生の物語。原作者の谷口菜津子が、「トレンディドラマを見過ぎた人が選んでしまった服みたい」と微笑むほど、勝男のファッションは今っぽくない。ハイスペックなのに時代遅れという役柄を的確に表現しているが、チェックシャツに柄ネクタイや、Vネックの肌着など、どこか愛らしいスタイルはどのように生まれたのだろうか。
竹内との最初の衣装合わせでは、今どきのスーツや古着のジャケットなど、いくつかの選択肢を用意して相談。竹内が選んだのは後者。現在の勝男スタイルだ。「その方向に竹内さんがいかれたことに、ちょっと驚きました」（スタイリスト・Babymix）
「勝男に関しては、序盤は結構嫌なことを言っているから、今どきのシュッとしたスーツを着ると本当にイケすかないキャラクターになりそうで、丸みのあるどこかかわいいキャラクターに見えるような方向を考えてフィッティングで監督、竹内さんと相談しました。結果的に昔のアメリカの大学生みたいな、1980年代から90年代のアイビーの様なスタイリングになりました。ほとんど古着ですね。とにかく竹内さんはルックスだけじゃなくいろいろと男前な方ので、何を着てもサマになる。ボクとしてはいろんな心配しなくてよい楽さがありました（笑）」
そして勝男のファッションで特筆すべきは、自宅で料理する際にいつも着ているVネックTシャツだ。第5話では、Vネックのまま空港へも行ってしまった。
「最初はクルーネックだったのですが、フィッティングの直前にVネックだとひらめいて、竹内さんとよく相談しました。この辺り、ボクはフィッティング最中、既に竹内涼真さんじゃなく海老原勝男さんと話していたのかもしれません。だからあえてVを選ぶという、勝男の時代からズレている感じが自然に出来上がった。ボクは、作品に参加するときは何か象徴的なアイテムがあったらいいなと思っています。そういう意味で、勝男っていったらあの白Tだよね、とみなさんの記憶に残りそうなアイテムができてよかった。それに関しては、きっかけはスタイリストでも、使いこなしていたのは竹内さんであったことは間違いありません」
そのような衣装の方向性は監督から具体的な指示が来るのだろうか。
「監督とはいろいろな話をします。たとえば、『ホットスポット』の時は監督から『ツイン・ピークス』という単語が出て。そこにみんなで肉付けするというか。でも結局スタイリストは服がないと組めないから、動いてみた結果、もっとこっちの方がいいかな、あっちの方がいいかな、というアプローチで作り上げていきます。今回伊東監督とは監督の目指すコメディラブストーリーというものを、監督が昔観ていらしたというキャメロン・ディアスの映画などを観たりして、あれこれ相談しました」
そしてドラマの中で一番ファッションが変わるのが鮎美だ。勝男と付き合っていたときは愛され系コンサバスタイルだったが、別れたあと髪をピンクに染めてから、古着などカジュアルに変化していく。落ち着いたブラウンヘアにしてからは、さらに洗練されていく。
「7～9話ぐらいで一番衣装が変わるんですよ。例えばジェーン・バーキンみたいな、ミニマルでセンスのいい人を目指しました。勝男の環境はあまり変わらないけれど、鮎美は大幅に変わるので、環境の変化と共にどんどん垢抜けていく。なので、後半にいくにつれ洋服の幅が広がって、時にはラグジュアリーブランドのお洋服をスタイリングしたりしています」
勝男と付き合っていたときは、ピンクのコンサバ風トレンチコートが定番。©TBSスパークル／TBS
ミナト（青木柚）が働く酒店でテキーラに目覚めた鮎美は、高円寺らしい古着Tシャツ。©TBSスパークル／TBS
8話では、グレー×イエローという洗練された配色。シャツと同色のタイがさりげなくおしゃれ。©TBSスパークル／TBS
Text_Mika Koyanagi
