デンマークの首都コペンハーゲン(CPH)を拠点に活動するフォトグラファー 松浦摩耶さん(@mayanoue)による連載。第6回は、初の写真集「fugle」について。前回の記事はこちら。
デンマークに引っ越して5年。日常をまとめた初の写真集『fugle』の話。
mayanoueのCPH 通信 06

お久しぶりです!でいいのでしょうか?
何と書き出せば良いのか迷うくらい久しぶりの更新です。
そして例によって、また冬の鬱々としたコペンハーゲンを抜け出し、冬晴れが気持ちいい日本に来ております。温泉に浸かり、鍋を囲み、美味しいお酒を楽しむ日々。ただ今回の一時帰国の目的は、それだけではありません。
初めての写真集と、それにあわせたささやかな写真展のお知らせがあります!

初の写真集『fugle』
タイトルは「fugle」、デンマーク語で「鳥」という意味。「フウレ」と読みます。
この5年間、コペンハーゲンや日本はもちろん、スウェーデンやドイツ、フランス、イタリア、フェロー諸島など、あちらこちらで撮り溜めた日常の写真。ひとりベンチに座って、ぼーっと鳥を眺めているような、そんな時間を記録しました。

本のデザインを手がけてくれたのは、コペンハーゲンに住む友人でグラフィックデザイナーのMahmud Sahan。去年の1月に彼に写真集の相談をしたところから始まりました。
Mahmudとのミーティングは、ただの打ち合わせというより、なんだかセラピーのような時間でした。自分の頭の中にあるふわふわしたアイデアや感覚が、彼と話しているとだんだん形になっていく感じ。抽象的な言葉しか伝えられないことも多かったけれど、それをちゃんと汲み取って、さらに想像を超える美しい形にして返してくれるのが本当に嬉しかった。街中のコーヒーショップでカルダモンロールを頬張りながら、おしゃべりを重ねたあの時間は、思い返すと本当に愛おしいです。
今回の写真集は、スウェーデンの友人が持っていたバードウォッチャーのためのポケットサイズの鳥図鑑にインスパイアされて、小さめの判型にしました。文庫本のようなサイズ感で、ふとした瞬間に気軽に開いてほしいなと思っています。コーヒーを飲みながら、電車の中で、または公園のベンチでも。
印刷所narayana pressにお泊まり

写真集の印刷はデンマークのユトランド半島にあるGyllingという場所にあるnarayana pressで行いました。写真やアートブックの印刷で有名で、ルイジアナ美術館のポスターやカタログなども手がけている印刷所です。
従業員たちは施設内で共同生活をしていて、印刷だけでなく農業や養蜂を行い、自給自足の生活を実践しているユニークなコミュニティです。

実際にどんな仕事と暮らしをしているのか気になり、今回の写真集の印刷にあわせて、narayana press内にあるゲストハウスに滞在してきました。宿泊した部屋の冷蔵庫には彼らが育てているジャージー牛の牛乳やバター、野菜、手作りのパンやスープ、クッキーなどがぎっしり詰められていて、夢のような光景。

Photo & Text_Maya Matsuura