前回（私と部屋 vol.131）ご登場の田口さんご夫妻にご紹介いただいたのは、遠藤昭彦さん。
🛋LIFESTYLE
私と部屋 vol.132 心踊るマテリアル
時を刻んだ質感とハンドメイドに宿る魂
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遠藤昭彦
1997年にヴィンテージ＆セレクトショップ「BOW＆ARROW」を大阪梅田の中崎町でオープン。2010年に全国のヴィンテージバイヤーが集まりブランディングした〈ライズヴィル コーツ アンド ジャケット〉（現〈ファー イースタン エンスージアスト〉）でデザインを担当し、その後ショップブランド〈ビーエーエー コスチューム〉を発足。
遠藤さんの暮らしの3ヵ条
1. ハンドメイドであること
2. 再生すること
3. 受け継ぐこと
ハンドペイントサインや、ドローイングに惹かれます。アナログで描かれた物は立体感があり迫力が違う！アメリカ買付時にフリーマーケットで、ジミ・ヘンドリックスと、ジョン・レノンのドローイング画を2枚セットで発見。一目惚れで購入しました。
壁一面に造り付けたダイナミックな棚。黒い化粧板などは使わずに、黒ペンキでわざと刷毛目を出すように塗りました。普段の生活でできてくるペンキの剥げもインテリアの一部に。見せる収納として、企業名が入った味のあるアンティークの木箱に、子供のおもちゃや雑多な物たちをぽいぽい入れています。
我が家へ入った時のインパクトはキョーレツです。よく使い込まれたヴィンテージの建具にアンティークのドアをはめ、あえて生活感をインテリアとして取り込みました。
町工場の床に長年使われていた鉄板で造作した、重い鉄扉。奥には家族3人分のクローゼットが。レザーフェチの私の大量のアイテムを管理する上で、湿度対策も完璧です。トルソーの一着は、自身でデザイン／生産したアイテムの元ネタであるモーターサイクルジャケットで、1930〜50年代にあった伝説的レザーテーラー「Peter's TAILOR MADE」の名作。
玄関からトイレ、バスルームへ行くためのドア2つ。ここは白を並べて、アイアンの無骨な黒とのコントラストを楽しめるように。
LDKの手前には、第二の玄関として、珍しい上開きの窓が付いた仕切りを設置。「648」は使われていた当時から刻印されている数字。剥がさずに歴史をそのまま使用しています。
コンクリートの躯体と鉄の配管に馴染むよう、無垢板とステンレスで造作したキッチン。ダイニングテーブルも70mmの無垢板にアンティークのインダストリアルテーブルの鉄脚を取り付けたもの。
キッチンとダイニングの床も土間になっていて、その上をアンティークトライバルラグで埋め尽くすことに。その魅力に取り憑かれた結果…、仕事にしてしまいました（笑）。京都の大型アンティークモール、BUFF ANTIQUE MALLにて販売、自店のInstagramでもチェックしていただけます。
住んでいる箕面市は大阪の北部に位置し、山と隣接する自然豊かな市街地。空間の顔となる建具やドアノブなどは、京都府亀岡市の BUFF ANTIQUE MALL を運営する「BUFF STOCK YARD」さんで購入。家にあるインテリアは自作か、アメリカでの買付時や国内外でのフリーマーケット、アンティークショップを巡って集めたものがほとんどです。
バスルームはユニットバスではなく、モルタル壁に全面タイル張り。規則正しく並ぶ白タイルに、昔懐かしいステンレス製の浴槽。本物の素材でしか味わえない空気感や安心感。永く暮らす家ごと、可能な限りそうでありたい。
雛壇型マンションなので、まるで戸建て気分のバルコニー。植物好きな友人から挿し木をもらったり、小さな苗から大きくしたり、瀕死の激安苗をお世話してみたり。お金も時間もかけずに楽しんでいます。コウモリランやミルクブッシュなど耐寒性のない子は、寒くなると家の中に入れてあげて。あとは基本ほったらかしで大丈夫。りんご箱をリメイクしたコンポストも3年ほど継続中。3人家族の野菜くずなら、余裕で分解してくれます。
リビングで育っているエバーフレッシュ。植物は日々の積み重ねの中で育まれるアート作品です。壁掛け時計には、1940年代イギリスのSMITH社製のものを。元は手巻き式でしたが、故障してからクォーツ式に改造し、永く使えるように。他にもUS NAVYのCHELSEA CLOCK社製の船舶時計など、お気に入りのアンティーク時計が家の中にちらほら。
1940年代US NAVYで使われていたハンモックをリメイクしたカーテン。打ち込みのしっかりしたキャンバス生地で分厚く、遮光性もばっちり。
リビングの傍らに事務仕事用スペースを。右側は出窓になっており、ここも鉄のL字鋼で出来ています。工業デザインのフォルムは、そのすべてが使用することを前提に緻密にデザインされたもの。惚れ惚れします。
ジャケット制作は、ヴィンテージショップ歴28年で得た知識とコネクションを最大限に活かし、個人所蔵のコレクションや資料をもとに行っています。これはヴィンテージサンプルの世界観を表すため、裏地のないスタイルをそのまま再現したもの。スウェード面から粉が出ないよう丁寧にコーティング剤を塗布。本物の角ボタンにこだわり、山で鹿の角を集めたり、猟師さんに仕留めた獲物の角を譲っていただいたりして、一年かけてすべて手作業で完成させました。大手のメーカーには絶対に真似できない付加価値の高い仕事を目指し、ものづくりをしています。
クローゼットに家族の靴がずらり。キャンバススニーカーやワークブーツがメイン。1940年代のものから、最近のものまで。仕事を通じて自身がデザインしたアイテムも含め、すべて現役で使用しています。
1910年代のUS MILWAUKEE CHAIR社製のヴィンテージチェア。座面の高さ、奥行き、背もたれの角度を鋳物金具とスクリューの組み合わせで細かく調整可能。脚部のキャスターに至るまですべてがオリジナルパーツでできた個体は大変貴重。
リノベーション祝いに友人からいただいたジェルデランプ。1950年にフランスのエンジニアJean-Louis Domecq が開発した工業用で、考案者の頭文字を取って名付けられたもの。機能性、デザイン性ともに世界中に認められ、ポンピドゥーセンターの展覧会に出展されるなど、高い評価を得ています。ロングセラーですが現在でも創業当時と変わらない製法で、一つ一つ職人の手によって作られています。
遠藤さんの紹介する次回のゲストは、橘 徹さんです！
Edit&Text_saori uemura
