日本では北欧デザインがほんとに人気。なかでもフィンランドのデザインの代表格といえば、建築家のアルヴァ・アアルト。その建物を知らなくても、シンプルなスツールや、イッタラから出ているガラス器をみれば、あ、このデザイン!とわかるだろう。
世界を巡回してきたアアルトの大回顧展が、満を持して日本にもやってきた。神奈川県立近代美術館 葉山で2018年11月25日まで開催されている。
代表的な三本脚のスツール。現在も同じデザインのまま生産され続け、四本脚のスツールもある。
アルヴァ・アアルト《スツール 60》1933年 Stool 60, Alvar Aalto, 1933
©Vitra Design Museum photo: Jürgen Hans
アアルトの特徴といえば、有機的なフォルムと木の使い方。日本の建物の多くは木造なので、自然に近い素材や形には馴染みがあるしホッとする。でも、そのデザインは静かなるアンチテーゼでもあったのだ。アアルトが頭角を現した1920-30年代、世界はコンクリートとガラス、鉄で作りあげるモダニズム建築に湧いていた。新しい人工的な素材で、大量生産をする建築こそが未来を切り拓くニュースタンダードとして礼賛されたのだ。一方で、木造や自然素材は、むしろ時代遅れの古いものとして見捨てられつつあった。急激に変わっていく建築に疑問を感じたのだろう、アアルトは自然が持つ有機的な線や木のしなやかさを一貫して自身の作品に取り入れていく。