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菅田将暉×神木隆之介×仲野太賀『コントが始まる』6話。芳根京子が風呂から飛び出した場面が泣ける理由

菅田将暉×神木隆之介×仲野太賀『コントが始まる』6話。芳根京子が風呂から飛び出した場面が泣ける理由

『コントが始まる』(日本テレビ 毎週土曜夜10時〜)には、おしゃれなスイーツやセンスのいいカフェなど、Instagramにあげたくなるようなシーンがない、いわゆる「映え」要素がない。ドラマもお笑いも大好きなゲーム作家・米光一成は、そこに脚本の強い意思を感じた。6話、主要登場人物が大集合し、このドラマとしては大人数のパーティシーンで起こったことに感動するのは、それが成功しているからだと考察する。


「マクベス」が結成された聖地へ

第6話、コント「金の斧銀の斧」。
『コントが始まる』には「映える」シーンは出てこない。美しい夜景、トレンディな場所、豪華なディナーは出てこない。
たとえば、マクベスの3人と中浜姉妹が訪れた「ポンペイ」は、どの町にもありそうな、なんでもない中華料理屋だ。だが中浜里穂子(有村架純)にとっては貴重な場所。なにしろ大ファンであるコントグループ「マクベス」が結成された場所だ。聖地だ

もうひとつの食事場面は、もしかしたら『コントが始まる』史上、最高の豪華さだったかもしれない。といっても、ささやかな餃子パーティー。マクベスの3人+中浜姉妹、さらに潤平の彼女である奈津美(芳根京子)の6人。最大人数!

断片すべてがピタリとハマる

「映える」シーンがないだけじゃない。そこだけ切り取ってもわかるような感動的なセリフや叱咤激励の言葉もない。
にもかかわらず感動させられる場面は、たとえば6話だと、奈津美が風呂から貝殻を持って飛び出してくる場面だ。
そこだけ観てる人には感動の場面だなんて想像ができないだろう。ずっと登場人物たちの時間に寄り添ってきた者だけが涙を流せる場面になる。

いままで観てきたたくさんのシーンが、この場面を生み出している。

潤平が部屋に入るときに足を洗うこと(第3話)
しかもそれは奈津美に言われてやってること。
足湯の旅行のこと。
噴水から出てくる潤平のサプライズ失敗(第5話)
723(な・つ・み)のナンバープレート72枚の写真をプレゼントした場面。
春斗の「人を笑顔にするために72枚のナンバープレートを集める不器用な優しさと、こんなくだらないことにこれだけの人間の協力を得られるその人柄に感動したのだ」というナレーション。
折って渡した単独ライブのチラシの裏に書いてあった計画表(姉がチラシを折らないでよって言ったこととの対比)。
「だって変わるのなんて簡単じゃん。大人のふりして、ガキくさいことを全部否定すればいいんだからさ。でも一度ガキくさいことを否定したら、もう二度と戻れないんだよ」という春斗が奈津美に言った言葉。
元クラスメートの「おまえ高校から時間止まってんじゃないの」 というセリフ(第5話)。
「この10年が無駄じゃなかったと思ってもらいたかった」という春斗の祈り。
里穂子の「三人で過ごしてるあの時間は、後悔するような時間には見えませんでした」という言葉(第1話)。

無造作に散らばめられたかのような場面場面の断片すべてが、実は重なり合うことで精緻な透かし絵としてピタリとハマる。

日常から遠く離れていない言葉が響く

金子茂樹の脚本の凄さは、そこにある。
生田斗真主演の金子茂樹脚本ドラマ『俺の話は長い』(2019年)もそうだった。エピソードの積み重ねで、屁理屈ばかり言ってるダメ男をいつのまにか応援してしまっていた

ついつい「見事な伏線回収」と評価したくなる。だが「見事な伏線回収だ!」と感動しているわけじゃない。
登場人物それぞれの個性を描く場面の積み重ねによって、人物が、ほんとうに存在し、観ている自分と共に生きてると思わせる。喜びや、くやしさや、切なさは、それまでのその人の生きてきた積み重ねがあることで生み出されるのだ。
だから、派手な場面や、派手なセリフではなくとも、ふつうの食事場面での出来事や、日常から遠く離れていない言葉によって、心動かされる。

さらに、その脚本上で構成されている登場人物を、物語のキャラクターとしてデフォルメして表現するのではなくて、本人のなかに溶け込ませて新たに存在させることに成功している役者陣の取り組みが、ドラマに魂を込めた。

風呂から飛び出て「あなたが今日の海鮮餃子に入れたいのは北海道産の帆立ですか広島産の牡蠣ですか」と言ってる奈津美(芳根京子)で泣かされるなんて、誰が想像しただろうか。

『コントが始まる』第7話は、コント『無人島』。
今季は『コントが始まる』『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ)『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK)と、凄いドラマが多いよね。

『コントが始まる』公式サイト(日本テレビ)

脚本: 金子茂樹
演出: 猪股隆一、金井紘
出演: 菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀、有村架純、古川琴音、松田ゆう姫 他

主題歌: あいみょん「愛を知るまでは」

Profile

Writer 米光一成 よねみつ・かずなり

1964年生まれ、広島県出身。ゲーム作家。代表作は「ぷよぷよ」「はぁって言うゲーム」「変顔マッチ」等。
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Profile

Illustrator オカヤイヅミ おかや・いづみ

漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。趣味は自炊。
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Edit: Yukiko Arai

菅田将暉×神木隆之介×仲野太賀『コントが始まる』6話

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