子どもの頃にきっと一度はしたことがある「好きな花」の話。誰がどんなお花を好きなのか、大人になった今でも気になる。さまざまなシーンで活躍する人に尋ねてみました!
🎨CULTURE
作家・乗代雄介が見かけるとうれしい気持ちになる金蘭:あの人の好きなお花Vol.7
作家
乗代雄介
好きな花
金蘭
ラン科・キンラン属。花期は4〜5月。低山や山地の林の中に生息。環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に登録されている。
栃木県の山道で見つけた小さいながらに生命力を感じる姿
僕は野の草花を観察することが好きなので、旅先でノートとペンを持って山に入り、野花の形や色、まわりの環境を文章で描写しています。山に咲く花々の中で特に気に入っているのが、金蘭という小さな黄色い花。螺旋を描いて茎を抱くような葉のつき方と力強い葉脈、小さいながらも鮮やかな色合いと花のつくりに目を奪われます。静かに凛と咲いている姿も好みですね。
初めて金蘭を意識して見たのは栃木県足利市にある大坊山のハイキングコースで、狭い野道の真ん中に咲いているのを見つけました。気になってその場で調べてみたところ、金蘭は乱獲のせいで野生のものがどんどん減ってしまっているとのことでした。この道を通る人々が慎重に踏むのを避けていたおかげで無事に花を咲かせられたんだなと感じて、それ以来、山で金蘭を見かけるとうれしい気持ちになります。
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乗代雄介
1986年生まれ。『十七八より』で群像新人文学賞、『本物の読書家』で野間文芸新人賞を受賞。最新刊は『最高の任務』。
Illustration: Ryuto Miyake Text: Momoka Oba