『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ 月9)は、田村由美の同名人気マンガのドラマ化。連続殺人事件の応援で別の署の捜査本部に参加する風呂光(伊藤沙莉)は、整(菅田将暉)不在で捜査に奔走する。「episode2.5」と銘打たれ、我路(永山瑛太)たちも関わってきそうな最後の事件になだれ込む11話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。オカヤイヅミのイラストもお楽しみください。第10回はこちら(レビューはネタバレを含みます)。
最終話直前考察『ミステリと言う勿れ』11話。風呂光(伊藤沙莉)の成長は整(菅田将暉)のバディになるため?
整と並走してきた風呂光という軸
11話を観て、やはり今回『ミステリと言う勿れ』のドラマ制作陣は、整(菅田将暉)と風呂光(伊藤沙莉)の二人を軸に物語を考えたのだなと感じた。ライカ(門脇麦)の登場によってあぶり出された、ほんのりとした恋愛要素のことではない。一般人でありながら、その観察眼で出会う人に新たな視点を提供し、目の前の事件の真相を解き明かす整。いっぽうで風呂光は、刑事という本来事件の真相を追求せねばならない立場でありながら、まず周りに「女だから」と必要とされず、自分の存在意義を見つけられない状態で登場する。そして、整と話すなかで自分のできることを見つけてゆく。
整はライカと出会って新たな感情を覚えていったけれど、それを成長というのはなんだか違う気がする。整は最初からフラットな目をもっていた。そして最後まで自分の感情よりも相手の願いが叶うことを喜んだ。
むしろ、描かれてきたのは整と出会ったことによる周りの人の変化と成長だ。1話で改めて自分たちを見直す機会を得た青砥(筒井道隆)や池本(尾上松也)、2〜3話のバスジャックに遭った面々……。その最たるものが風呂光だろう。11話ではバスジャックで初めて犯人逮捕を経験し、「犯人逮捕=事件解決」ではないと感じたあとの彼女が活躍する。
「お客様体質」を乗り越えられるか
連続殺人事件の応援で別の署の捜査本部に参加する風呂光。3人めの遺体の凶器から被害者以外の血液が検出される。それは22年前の羽喰玄斗(千原ジュニア)による殺人事件の被害者の血液だった。風呂光は猫田(松本若菜)と組んで捜査に。いっぽう、我路(永山瑛太)は妹・愛珠(白石麻衣)の遺書のようなハガキを見つけ、バスジャックまでして犯人をあぶり出したはずの事件が解決していないことを悟った。ハガキにあったジュートという人物を探す中で、現在起こっている連続殺人犯が「羽喰十斗」と名乗っていることを知る。
羽喰玄斗といえば、5話で整がベッドの上で解決した事件の登場人物。実は刑事に殺害されていたのだが、この時点では再捜査の手は伸びておらず、警察には忽然と姿を消したと思われている。風呂光は捜査のなかで寄木細工ミュージアムの職員・辻(北村匠海)が十斗だと気付き、一人で彼に会いに行った猫田を追う。。そこで十斗に刺された猫田を目撃して動揺する。
原作では、猫田とともに動く部下は同じ部署の若き男性刑事。これまでのエピソードでも原作のさまざまな登場人物が風呂光が当てはめられてきた。このepisode2.5では特に彼女の「強くなりたい」という気持ち、「お客様体質」=「周りに助けを求めない」姿勢を乗り越えられるかに焦点が当てられている。ここで大きく成長し、時間軸としてはこの先となる様々な事件で整のバディたる存在に、ということだろうか。
整と我路との再会は……?
もうひとり、我路もこの物語にとって重要な存在だ。妹のためなら道ならぬこともする我路だが、整は自分を面白がり、意見を尊重してくれた彼をたいせつに思っている。そんな我路が3話のラストで予告されていたように、久しぶりに戻ってきた。けれど、整とはまだ再会していない。11話の整は、我路にいざなわれるように行きそびれた「印象派展」を観に大阪(原作では広島)に行っているだけだ。最終回、整はどのようにこの事件にからんでくるのか、そして原作でも解決されていない愛珠の物語はどうまとめられるのか。最終回が迫っている。
脚本: 相沢友子
演出: 松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
出演: 菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆、門脇麦 他
原作:『ミステリと言う勿れ』田村由美/小学館(『月刊フラワーズ』連載中)
主題歌: King Gnu『カメレオン』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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Edit: Yukiko Arai