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常田大希のサンクチュアリvol.5 PERIMETRONとつながるクリエイター、映画監督 内山拓也

常田大希のサンクチュアリvol.5 PERIMETRONとつながるクリエイター、映画監督 内山拓也

2021年2月12日発売のGINZA3月号「いちばん気になる人」特集では、常田大希率いるmillennium paradeを大解剖! 特別に過去のGINZA2020年8月号「映像クリエイターズ!」特集から、millennium paradeやKing Gnuを映像面から支えるクリエイティブレーベル「PERIMETRON」に迫った記事をご紹介。

先鋭的な才能を発掘する審美眼も備え、その魅力を存分に引き出す。伝説と化しているMV「Prayer X」「The hole」「Fly with me」を手がけた3組に、クリエイションの秘密を聞いた。


映画と同じ手法で臨んだ
自身初のアーティスト動画

“一番強くて優しい歌”とは、常田大希さんの言葉だ。ヒリヒリするほどの深い愛を綴った名曲「The hole」のリリースから、4カ月の間隔を空けた2019年5月にMVを発表する。脚本&監督の内山拓也さんは落ち着けない日々を過ごしたと、笑う。

「納品した直後は感無量でしたね。これは、面白くなるって。でも、時が経つにつれて、心をえぐる物語はミュージックビデオとして受け入れられるのか?と、頭をもたげるように。ソワソワでしたねー。全貌を把握していなかった(井口)理、(新井)和輝、(勢喜)遊が喜んでくれた瞬間に、モヤモヤは吹き飛びましたけど」

King Gnuが出ない「The hole」は、お互いに実験でもあった。常田さんの要望は映画仕立てであることのみ。

「初対面の大希とスタンリー・キューブリックの話で、意気投合。他にも共通の作品やクリエイターに魅せられていることが多いんです。今回の依頼をいただいた際には、僕らが好きなNYの写真家が浮かびました。その世界観からインスパイアされて、舞台をTOKYOに置き換えたラブストーリーを紡いでいます。僕の脳内にストックしている100枚の写真をつなぎ合わせていく感覚で、構図を練っていきました。また、歌詞を咀嚼しているうちに、同性愛を含んだ三角関係に踏み込んでみたくなった。大希と(佐々木)集も賛同してくれたので、メインの人物をバイセクシャルに設定しています。男女の間で揺れる主役の青年役は、かつての現場で天才ぶりを目の当たりにした清水尋也にお願いすることに。4分48秒という短い尺で、表情だけで惹きつけていく。ハードルの高い状況でも、彼なら軽々と飛び越えてくれるんじゃないかと。PERIMETRONのプロデューサー・(吉田)健人には『尋也じゃないと話を変えた方がいい』とまで力説しましたね。本番では47時間で100カット以上を収録しています。雨も降らせたし、車も横転させた。技術的に可能なことは詰め込んでいます。膨大な場面を収めていますが、MVは尺との戦いですよね。役者の動きが1秒でもずれると、歌詞と合わなくなる。絵コンテにもフレーズと秒数を書き込んでいました。曲を聴いてテンポの軌道修正するためにも、撮影中はイヤホンを外せなかったですね」

スタッフと天気にも恵まれて生まれた

恋がもたらす幸せと痛み。愛するがゆえの狂気が激しさを増していく劇中において、澄んだ朝焼けや海のきらめきといった普遍の美しさに救われる。

「それはもう、カメラマン・今村圭佑さんをアサインできたことに尽きますね。傷つけ合いながらも穴を埋めようとするストーリーの生々しさを、グラフィカルに切り取らないと『The hole』が持つ純度の高さを損ねてしまう。今村さんは、僕の絵コンテをみごとに解釈してくれた。映像としては全体的にスモーキーで青みがかった色で仕上げました。トーンを落として、内容とは対極の冷静さを演出。曲とKing Gnuの先進性を保つためにも必要です」

メガホンを握る者として、
小さな”声”に耳を傾ける

SNSでは本作をめぐるさまざまな考察がいまも飛び交う。そして、内山さんには他のアーティストからの依頼も絶えない。感情を揺さぶる物語がMVとして認められている証だ。

「個人的にミュージックビデオは、ヴィジュアルの芸術だと捉えています。この先も挑戦をしていきたい分野ですね。自分としては畑違いの者が携わる感覚ではあるけれど。主軸の映画の話をすると、2020年秋には『佐々木、イン、マイマイン』の公開が控えています。これまで『ヴァニタス』『青い、森』を含め3本を撮り終えて、青春というジャンル以外にも、もっと踏み込んでいこうと考えています。なぜなら、社会的に弱い立場に置かれてしまっている人や、埋もれている者の声を拾っていきたいから。かっこよさは必要なくて、むしろ泥臭い部分を積極的に映し出していきたい。新型コロナの感染拡大は世界を変えてしまって、映画業界にもその影響は色濃い。作り手はいろんな岐路に立たされています。たとえば、”壁ドン”は難しくなるかも。また、内容によっては撮れる場面が限られるでしょうし。そもそも、成立しなくなるジャンルも出てきそうですね。近い将来、ウイルスを題材にしたものも出てくるでしょう。これに関してはどう向き合うかを検討しているところ。それでもやっぱり、人を見つめていきたいんですよ。この想いは変わらない。そして、和製映画を世界に発信していきたいです」

 

King Gnu「The hole」(2019.5)

2ndアルバム『Sympa』に収録。シングル盤で発売されたわけでなく、タイアップでもないのに、名バラードとしてファンからの支持が厚い。生まれた愛を必死に守ろうとして、悲しい結末を迎える動画は約2380万回(2020年6月末時点)の再生数を誇る。King GnuのMVとしては10作目。

 

 

映画『佐々木、イン、マイマイン』
(2020年)

佐々木インマイマイン

売れない役者の悠二に、高校時代のヒーロー・佐々木から着信 が。27歳を迎えたいま、彼らの人生が交錯する。俳優・細川岳 との共同プロジェクト。藤原季節、萩原みのり、遊屋慎太郎、 村上虹郎、森優作、河合優実、小西桜子といった新鋭の俳優が 集結。 King Gnuからも井口理が出演している。

 

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内山拓也 うちやま・たくや

1992年生まれ。2017年に常田大希と出会う。23歳の時に初監督作『ヴァニタス』が「PFFアワード2016観客賞」を受賞。劇場長編映画デビュー作『佐々木、イン、マイマイン』が全国にて絶賛公開中。

Photo: Mayumi Hosokura Text&Edit: Mako Matsuoka

GINZA2020年8月号掲載

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