『すいか』は傑作。失った日常の大切さを丁寧に描いた作品の数々。脚本家・木皿泉の心に残るドラマ

『すいか』は傑作。失った日常の大切さを丁寧に描いた作品の数々。脚本家・木皿泉の心に残るドラマ

実力派の脚本家たちにより優れた作品が次々と生み出されている、 近年の日本ドラマ界。書き手の名で番組を選ぶという人も少なくない。今回はなみいる名手の中から、オリジナル脚本を得意とする人物をピックアップ。テレビドラマに造詣が深い岡室美奈子さんに、 各作家の見どころとおすすめの作品について語ってもらいました。

File 06:
木皿泉

木皿泉

ここがスゴい!
☐非日常の出来事から
日常の輝きを見出す物語
☐失ったものとどう向き合うかを
教えてくれる
☐ただ生きていることの
奇跡を痛感する


昨夜のカレー、明日のパン
『昨夜のカレー、明日のパン』第4話。ギフ(鹿賀丈史)の亡き妻・夕子(美保純)の 幽霊が現れるが生前にあった傷がない。傷は“生”の証なのだ。

 「手放すってことは裏切るってことじゃないよ。生きてるほうを選ぶってことだよ」 テツコ

───────『昨夜のカレー、明日のパン』4話より

彼らの名前でドラマを観ると決めるファンも多い、木皿泉。中でも『すいか』は傑作です。真面目で平凡な日々を過ごす信用金庫に勤めるOL早川基子(小林聡美)が、同僚の馬場ちゃん(小泉今日子)が3億円を横領して逃亡したことをきっかけに「ハピネス三茶」という食事付きの下宿に暮らし始める。最終話が特に素晴らしい。馬場ちゃんが基子を訪ねて下宿にやってくる。そして、台所で梅干しのタネを見る。朝ご飯を食べた後の食器がそのまま置かれていたんですね。そこで馬場ちゃんは自分が失ってしまった日常の輝きを感じる。非日常を通して日常こそが重要なんだということがすごく丁寧に描かれています。『昨夜のカレー、明日のパン』も名作。亡き夫・一樹(星野源)の死を受け入れられないテツコ(仲里依紗)が失ったものとどう向き合うかが描かれています。第4話が白眉。目には見えない幽霊を通して、痛みを抱えながらも、生きることの大切さを語ります。生きることは食べること、とばかりに食のシーンが魅力的なのも木皿作品の特徴です。


『すいか』(03)

賄い付きの下宿ハピネス三茶が舞台の物語。人生に行き詰まったOL基子(小林聡美)、双子の姉の死から立ち直れない絆(ともさかりえ)、3億円横領の逃亡犯馬場ちゃん(小泉今日子)、信念が強く恐れられている崎山教授(浅丘ルリ子)ら、生きづらさを抱えた登場人物が心を通わせ、自分らしく生きる道を発見する。*DVD発売中

『昨夜のカレー、明日のパン』(14)

テツコ(仲里依紗)は夫・一樹(星野源)をガンで亡くし、義父の連太郎と二人暮らし。岩井さん(溝端淳平)という恋人がいるが、一樹の骨を常に持ち歩き、岩井との結婚には踏み切れない。そんなテツコが、少しずつ前を向いて生きていく。同作家による同名小説のドラマ版。*NHKオンデマンドなどで視聴可


Profile

木皿 泉
きざら・いずみ

和泉務と妻鹿年季子夫妻の共作ペンネーム。代表作に『野ブタ。をプロデュース』(05)、『セクシーボイスアンドロボ』(07)、『Q10』(10)。

Navigator:岡室美奈子 おかむろ・みなこ

早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系教授。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長。専門は現代演劇やテレビドラマなど。演劇博物館で『大テレビドラマ博覧会』という展覧会を開催したり、ツイッターで発言するなどドラマ論に定評がある

Illustration: Tetsuya Murakami Text&Edit: Keiko Kamijo

GINZA2019年8月号掲載

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