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アーティストレジデンシー『Almost Perfect』からこんにちは。Eva Kellyが語る創作活動と地元ダブリン

アーティストレジデンシー『Almost Perfect』からこんにちは。Eva Kellyが語る創作活動と地元ダブリン

上野や浅草からもほど近い、なのになんだかのんびりした下町・新御徒町。『Almost Perfect』は、小さな商店やアパートが立ち並ぶ通りにポツンと佇むアーティストレジデンシー。古い元お米屋さんを改装して、イケてるギャラリーも併設したこのレジデンスに、海外からたくさんのアーティストが続々と。そこで彼らの創作活動やホームタウンについて、色々質問しちゃおう、という本企画。第一回目のゲストは、アイルランド・ダブリンからやって来たイラストレーターのエヴァ・ケリーです。

Almost Perfect 外観

Eva Kellyさん

「都市の建物や人々の“行動”から自分なりのメッセージを探り出すの。」

アイルランドから初来日したエヴァ・ケリーは、ダブリンを拠点に活動するイラストレーター。主にドローイングで、ストリートの人たちを観察しながらスケッチするのがいつものスタイルだ。
「私は根っからの“シティアドベンチャラー”。テーマはアーバンランドスケープを描くこと。でも、ただ街を描くのではなくて、人がその環境で、どんな風にふるまうのかに興味があるの。人は都市の一部分で、そこにどんなメッセージが込められているのかを、自分なりに探りながら描く感じね。今回はたまたまネットで『Almost Perfect』のことを知って、ここに滞在することに決めたのだけれど、東京の下町は人がとても親切で、ウェルカミングな雰囲気。ホストのルイスとユカも、友達みたいに接してくれるしね。だからここで描くと、自然と色使いがカラフルで、ポジティブになるみたい。そういう作者の心持ちとかアティテュードって、作品にそのまま反映されるの。だから私はいつも、自分に正直でありたいって思っているのよ」

Eva Kellyさん 作品作成の風景

もともとはグラフィックデザイナーとして活動していただけあり、アナログとデジタルをミックスして作品に取り組む。候補となるロケーションでスナップ写真を撮ったら、それをもとにスケッチ。カラーはビビッドな発色が気に入っている〈Ecoline〉のインクのほか、フォトショップで重ねたり。でも、何よりも重きを置いているのは、ライン(線)の使い方。

「ラインには命がこもる。ラインを何度も、何度も重ねることによって、一つの表現が生まれるの。造語だけれど、私はそれを『ラインエナジー』って呼んでいるわ。そうすることで完成した作品は、私の視点や経験を、全く知らない人たちに伝えてくれる。私が東京で目にした小さなティーハウスだとか、何気ないビルに掲げられた古ぼけた看板みたいなオブジェクトが、作画というプロセスを経て、人と人とがコミュニケーションするためのツールになるなんて、素敵よね」

エヴァがこれまでに描いた作品たち。今回初めて滞在した東京をはじめ、地元ダブリンの街角や、そこに集う人々の表情まで、描き出している。「大都会の風景は似ているってよく言われるけれど、建築物やその中身はそれぞれ個性がある。たとえば日本のコンビニのレイアウトは独特だし、お客さんが秩序に沿ってきちんと並んでお会計する様子なんか、とてもジャパニーズで新鮮だったわ」

 

エヴァ流、ダブリンの過ごし方。

エヴァが暮らすのはアイルランドの首都・ダブリン。人口55万人ほどと、サイズ的には東京よりはずっと小さいけれど、現在ヨーロッパのハブ都市として、IT企業が続々と転入中。かつてないほどに活気付いているのだそう。「クリエイティビティがムクムクと湧いてくる場所」だと語るこの街のお気に入りと、いつもの過ごし方を教えてもらいました。

 

1.『BEWLEY’S Grafton Street』でケーキ&お茶ざんまいの週末

1840年に創業した老舗カフェがリノベーションされ新たにオープン。建物はオリジナルで、外壁のモザイク装飾がキュート。「土曜日の午後はここでお茶をするのが定番。ダブリンに遊びにきた友人を案内すると、すごく喜ばれるのよ」

住所: 78- 79 Grafton Street, Dublin, D02 K033
TEL:  +353 1 564 0900
時間: 7:30〜19:00(木〜21:00、金〜20:00)、土8:00〜20:00、日9:00〜20:00
休: 無休

 

2.クラシックな『George’s Street Arcade』をぶらぶら

ジョージズストリートマーケットは、1881年に『South City Market』としてオープンした歴史あるマーケット。「現在は、当時のままの赤煉瓦の建物を利用したショピングモールになっていて、クラフトやアートを扱うショップもたくさん。古本店やヴィンテージショップ巡りも楽しいわよ」

住所: South Great George’s Street, Dublin
TEL: +353 1 283 6077
時間: 9:00~18:30頃(ショップによって異なる)
休: 無休(ショップによって異なる)

3.『WHELAN’S』でイケてるミュージシャンを発掘

「今ダブリンではインディーの音楽シーンがすごく熱いの」とエヴァ。なかでもライブベニュー『WHELAN’S』は、若手ミュージシャンの登竜門的存在で、ここでギグをすることがキャリアに箔をつけることになるのだそう。毎晩何かしらのイベントが開催。最近レトロなインテリアの「パーラーバー」が新設されて、ますます話題に。

WHELAN’Sの外観

住所: 25 Wexford St, Portobello, Dublin, D02 H527
TEL: +353 1 478 0766
時間: 17:00~2:00(金土3:00、日1:30)
休: 無休

 

4.『The Icon Factory』でローカルアーティストの作品に触れる

地元のアーティストの活動をサポートすることを目的に設立された非営利の組織で、アーティストたちとボランティアにより運営されている。「エキシビションも定期的に開催しているし、小規模だからイベントに参加すればローカルのアーティストとも繋がりができる。外壁のペイントはちょっとどキツいけど(笑)、勇気を出して入ってみて」

住所: 3 Aston Place, Temple Bar, Dublin
TEL: +353 862024533
時間: 10:00~18:00
休: 不定休

 

5.『Ha’penny Bridge』から南北ダブリンをお散歩

「ダブリンの街はリフィー川を隔ててサウス(南)とノース(北)に分かれていて、私が暮らすのは、よりクラシックなサウスエリア。ノースはちょっとラフだけど、まだまだ未開拓な部分が多くて面白いの」。川にかかる(通称)『ハーフペニーブリッジ』は、1816年にウィリアム・ウォルシュによって建造された、この街のアイコン。

 

Profile

Almost Perfect

スペイン出身のイラストレーター、Luis Mendoと、妻のYuka Okada Martin Mendoによるクリエイティブレジデンシー。アーティストは2階と3階にあるワークスペース付きのゲストルームにステイ。滞在の終わりに1階のギャラリーでエキシビジョンを開催することができる。イベント情報はインスタに随時アップ

住所: 東京都台東区小島2-3-2
HP: https://www.almostperfect.jp

Eva Kelly

アイルランド・ダブリン近郊のサガート出身。地元の大学でビジュアルアート教育とイラストレーションの修士号を取得。ストリートを題材にしたドローイングを数多く発表している。Instagram: @evakellyillustration10

photo: Ryosuke Kikuchi  text: Hiroko Yabuki

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