ニッポンを背負い、世界の舞台へと躍進する話題のブランドたち。それらに共通するのは大和魂? あるいはおもてなし精神?急成長を遂げる革新的ニッポンコスメの仕掛け人と、 その舞台裏をレポート。奥が深いね、ニッポンコスメ。
歌舞伎フェイスパックの一心堂本舗を訪ねて – ビューティジャーナリスト安倍佐和子さん「ニッポンコスメの底力」

日本の伝統芸能を
コスメで世界に
知らしめた大和魂
代表
戸村憲人
2011年
和菓子製造会社をベンチャーで立ち上げる。歌舞伎座での菓子販売をきっかけに、歌舞伎の素晴らしさに目覚める。
2013年
春に〈歌舞伎フェイスパック〉の商品化に着手。年末に発売。翌年にかけて3カ月分の在庫を2日で売り切り、大ヒットに。
2016年
歌舞伎フェイスパックが伊勢志摩サミットの公式お土産に採用。
100年続く企業でありたいとの思いを込め、ロゴデザインも日本の古典様式を意識、東京・made in Japanにこだわり続ける戸村憲人さん。社内で大反対にあった歌舞伎フェイスパック実現に向け、孤軍奮闘した情熱家だ。
健康産業に従事していた経験を生かし、2011年に一心堂本舗を設立した戸村憲人さん。スタートは調剤薬局への和菓子卸業だというから驚きだ。ショウガやゴボウなどの野菜を使った養生菓子販売店を歌舞伎座に出店したことから運命が大きく転換。
「歌舞伎の魅力にすっかりはまってしまい、歌舞伎の楽しさや面白さを伝える製品を作りたいと思うように。それが〈歌舞伎フェイスパック〉の始まりです。ただ、制作までのあらゆる過程でいくつも高いハードルに阻まれ、実現までにはかなりの苦労がありました」
歌舞伎を正しく伝えるために、市川染五郎さんに監修の協力を依頼。隈取の選定や描き方などアドバイスを受け、やっと完成させたのが歌舞伎フェイスパックだ。Tokyo Midtown Awardを受賞、SNSや多くのメディアで取り上げられ、セレブたちがこぞってマスク姿を披露。伊勢志摩サミットでの公式お土産に採用されるなど、海外でも広く知られるように。
さまざまな日本のキャラクターや人物とコラボレーションしたマスクを開発し、現在、その数は50種近く。コスメを通して、日本の魅力を世界に知らしめる大きな役割を担っている。
事業の柱は和菓子卸業
江戸時代から守られてきた“養生”という健康文化を、和菓子で届けるために〈坂田金平 ごぼう煎(せん)〉〈源為朝 玉ねぎ煎〉〈麹屋三四郎 麹町あま酒〉など、健康食材を使った製品を手がけている。レトロなデザインが目印。
サミット認定バージョンがこれ
ツバキ種子エキスやチャ葉エキス、サトザクラ花エキスなど、日本由来の美容成分を配合、確かな効果でリピーターの多いフェイスパック。G7伊勢志摩サミット2016公式お土産のデザインがこれだ。
名作絵画もブームを牽引?
発売から2年8カ月で100万個以上の販売実績を誇る歌舞伎フェイスパック。最新作は12月18日まで開催の東京都美術館『ゴッホとゴーギャン展』のゴッホフェイスパック(1枚入り ¥463)だ。美術鑑賞後のお土産に。
🗣️

安倍佐和子
GINZA連載「今日もコスメを買わなくちゃ」ほか、多方面で活躍するビューティエディター。
Photo: Yuko Moriyama
Text & Edit: Sawako Abe