ロンドンを拠点として活動する、ヘアデザイナー小戸紀代子さんの新連載がスタート。小戸さんが気になるアーティストとコラボし、その人らしさをヘアで表現します。アーティストのバックボーンを探るインタビューとともにお届け。
ヘアデザイナー小戸紀代子の“WHO ARE YOu ?” vol.1
小戸紀代子 × Jewel @ロンドン
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Jewel
23歳 中国 北京出身 デザイナー/アーティスト
今月はデザイナー/アーティストとして活躍中のJewelさんとコラボレーションしました。出会いは、モデルとして来た撮影でした。スタジオに入るなり心を奪われました。なぜなら彼女がしているメイクがあまりにもカッコ良かったから。聞くと普段からアートメイクを自分にしているとのこと!それで更に驚いたのを憶えています。近い将来メイクの概念が変わって、みんな思い思いのメイクをした人達が街に溢れ出したら楽しいな~なんて想像しました。
Jewelさんは、小さい時におばあちゃんとよく観に行っていた、オペラのキャラクターがしているメイクに魅了され、それがきっかけでアートメイクをするようになったそうです。そのまま自然な流れで、遊びに行くシチュエーションに合わせて自分で考え出したメイクをして出かけるようになり、今ではそれは自分のその日のスタイルを導いてくれるものだと言っていました!この日もJewelさんのセルフメイクです。
本当にすばらしい! 90年代の原宿ブームど真ん中に青春を捧げた私からすると、 Jewelさんみたいに自由な新しい発想で自分を表現している人を見るとワクワクして、 ついつい掘り下げたくなります(笑)。

さて、ここからは私がどうやってこのヘアデザインに辿り着いたのか...の話です。Jewelさんの持っている顔のパーツや髪の毛や肌の質感、ファッションなど目に見えている情報をまずチェックすると同時に、目に見えないもの、彼女が纏っている空気みたいなものが何かを探りました。Jewelさんからは透き通った神聖な空気を感じて、顔立ちもピュアで柔らかい。そのソフトな透明感を消さずに彼女の持っているムードは強めたいなと思いました。なのでヘアプロダクトで作った人工的な艶ではなくオーガニックな柔らかい質感でいこう。そして彼女のヘアカットは後ろが大胆な細いVラインになっていて、まるで動物の尻尾のようなエイリアンのような感じ。この要素も活かしたいなと...。さらにポイントとなるメイクと彼女自身を繋ぐ掛け橋のような役割ができるヘアーデザインは何かな?っと考えて生まれたのが髪の毛で作った羽でした。

大胆なスタイルかもしれないですが、私的にはどれだけ個性的なヘアースタイルでもその人自身とどこか重なるデザインであれば不思議とその人になじんで洗練されて見える。なので三つ編みなどの従来、街や雑誌で見かけるようなTHEヘアスタイルで街に溶け込ませるより、彼女の纏っている空気も利用して「天使が人間の服を着て街に降りてきた??」みたいな一瞬、本当にそう勘違いしてしまいそうな違和感を楽しめるデザインに辿り着きました。

Photo&Text: KIYOKO ODO