作家、小原晩さんのエッセイ連載。部屋という限られた空間を通して、暮らしや心のありようを見つめる「生活態度」の記録です。vol.2はこちら。
小原晩「生活態度」vol.3
わたしの季節・クリスマスのものもの

12月26日生まれである。12月26日の誕生花がクリスマスローズだと知ったときには、手抜きを感じた。もうクリスマスは終っているはずなのに、名前ばかりを借りて、翌日までも同じ鍋に放り込んでしまうのか。あなたもみんなとおんなじだ。クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントをひとまとめにして渡してくるタイプ。そりゃあそう、という顔で両手をさしだす君をわたしは密かにゆるせない。密かだったら良いのだけれど、顔に出るから、すぐバレる。そういう人生。人生はそういうもの。
こういう愚痴をにじませていたとき、「じゃあクリスマスは、小原さんの季節ということですね」と、ざっくり言い放った人がいた。雑というより他なく、わたしの誕生日はクリスマスの翌日であってクリスマスそのものではないし、クリスマスとはキリストの、あれであるし。そう思いながらも、しかし意外と、ほんとうはそうなのかも、と心がどこかでうなずいた。わたしの季節なのか。そうだ、と言われれば、少しうれしい。そういうわけで、その日以来、クリスマスがすきになった。
一昨冬、クリスマスがさし迫ったころ、花屋でもみの木の形をしたキャンドルを買った。レジで「クリスマスに火をつけてくださいね」と言われたが、つけません、と心の中で返事をした。火をつけるつもりで買ったのではなく、置物として迎え入れたのである。キャンドルは一年じゅう部屋にいる。
昨冬は竹井晴日さんのクリスマスをテーマにした展示「MOON LIGHT CHRISTMAS」にて、クリスマスめいた陶器のオブジェを買いもとめた。これもまた一年じゅう飾ってある。
今年の冬は何か買うだろうか。買うとしても、いかにもクリスマスじみたものではなく、密かにクリスマスの影を帯びたものが良い。そういうものを、部屋にぽつんぽつん置いておきたいのである。
Text &Photo_Ban Obara Edit_Tomoe Miyake