名作、怪作そろい踏み!唯一無二の表現を磨いて人間の輪郭に光をあてる。広くて深い現代日本文学の海から編集部セレクトの小説と随筆を紹介。全32冊から今回はNo.1からNo.3の本をピックアップ。#32冊の現代日本文学
🎨CULTURE
GINZA編集部が32冊の現代日本文学をレコメンド vol.1|朝吹真理子『TIMELESS』etc.

1
『TIMELESS』
朝吹真理子
六本木を歩き広島を旅し奈良で空を仰ぎ見れば、土地の記憶が立ち上がって現在と過去と未来が交じり合う。恋愛感情もなく結婚し《交配》したうみとアミ、やがて生まれるアオ。夫婦、親子、友人。人と人を隔てる膜が言葉によって溶け落ちる。(新潮社/¥1,500)
2
『宗教が往く』(上・下巻)
松尾スズキ
舞台は伝染病の“ヒヒ熱”が蔓延する日本。巨頭のフクスケは狂犬女・ミツコと劇団『大人サイズ』を結成。奇想天外な作風で人気を獲得した後に宗教活動を始める。どんな状況でも生と性が地続きの、人間クサさが全開の長編小説。(文藝春秋/上 ¥619、下 ¥667)
3
『白蓮れんれん』
林 真理子
華族令嬢で歌人の燁子は結婚を《誰か似る泣けよ唱へとあやさるゝ緋房の籠の美しき鳥》と嘆く。九州の炭鉱王と空虚な夫婦生活を送る中で、7歳下の宮崎と恋に落ちた。家父長制が当たり前の大正時代で、抑圧に屈さずつかんだ愛の行方は…。(集英社文庫/¥670)
Photo: Natsumi Kakuto Text: Mako Matsuoka Collage: Takashi Tanaka