メインキャストを演じた野際陽子さんの友人 東海林のり子さんが語る、女優魂
6月に亡くなった野際陽子さんは、『やすらぎの郷』のメインキャストの1人、井深凉子を演じていました。最後まで「元気な凉子」を演じ切った野際さん。大学生の頃から「ノギ、ノッコ」と呼び合う仲だった芸能リポーターの東海林のり子さんにお話をうかがいました。
メインキャストを演じた野際陽子さんの友人 東海林のり子さんが語る、女優魂
6月に亡くなった野際陽子さんは、『やすらぎの郷』のメインキャストの1人、井深凉子を演じていました。最後まで「元気な凉子」を演じ切った野際さん。大学生の頃から「ノギ、ノッコ」と呼び合う仲だった芸能リポーターの東海林のり子さんにお話をうかがいました。
戦争で自由に生きられない時代を経験
度肝を抜く存在感を放つ!あの頃の女優たち
ノギ(野際さん)との出会いは立教大学のESS(英語研究部)。私が1年先輩でした。ノギはミス立教と言われた美人。頭も良くてね。学費免除の特待生にも選ばれてました。
私は大学を卒業するとニッポン放送のアナウンサーになって、ノギも翌年NHKに入局して。でも彼女は4年で辞めてしまうんです。退屈したんだと思うの。当時、アナウンサーは個性を出してはいけなかった。原稿をきちんと読むことだけが求められて。しかも女性はメインのニュースを読ませてもらえないんです。女性が読むと信憑性がないからって。ノギはそれが面白くなかったんでしょう。それでパリのソルボンヌ大学へ行ったんです。
ノギは非常に静かな人。どちらかというと引っ込み思案。そういう中で静かな闘志を抱いていたんだと思います。だから彼女がパリから帰ってきてミニスカートをはいていたのにはビックリ(笑)。見事な脱皮だったもの。
その後ノギは女優に転身して、40代を過ぎてからお母さん役でブレイクして。それまで女優として悩んだ時期もあったと思う。でも彼女は、そういった悩みは打ち明けなかった。私にも、他の誰にも。結婚したときも離婚したときも、ノギはその理由を言わない。自分の中で処理してしまう。だから最期も潔いのね。告別式もお別れ会もしない。ノギは終活プランを完璧に立てて仕事をやり遂げた。最後の収録は気力だけでやってたと思います。
私たちはね、戦争で自由に生きられない時代を経験しているんです。だからやれちゃう。頑張れちゃう。『やすらぎの郷』の女優さんたちはみんなそう。あの時代を経験しているからみんな強い。そして強烈な個性を持ってるのね。だから、いまも仕事を続けていられる。「年だからもういいわ」なんて絶対に思わないんです。最後までみんなの度肝を抜いて存在していたい。そんな強い意識が彼女たちを輝かせているんだと思いますね。
宝塚歌劇団出身の有馬稲子さんは1951年に映画デビュー。写真は59年、松竹映画の看板女優で活躍していた頃。
八千草薫さんも宝塚歌劇団出身。可憐な娘役で人気を博す。映画やドラマではおっとりした良妻賢母役が多い。
1963年、ドラマ『赤いダイヤ』でヒロインを務める野際陽子さん。NHK退職後女優活動を開始。その後パリへ。
加賀まりこさん20歳。デビューは1960年。篠田正浩と寺山修司に路上でスカウトされたのがキッカケだった。
東海林のり子 しょうじ・のりこ≫
1934年埼玉県生まれ。ニッポン放送のアナウンサーを経て、71年より芸能リポーターとして活躍。80年代は少年事件のリポートが多かった。倉本聰さんとはニッポン放送時代の同僚(倉本さんはディレクターだった)。
浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、冨士眞奈美、風吹ジュン、八千草薫。『やすらぎの郷』の出演女優8人がかつて『平凡』で見せた最上級ショットを集めた写真集。(¥2,750 マガジンハウス刊)