ニセ和宮(岸井ゆきの)と心を許し合い、仲睦まじくなってゆく14代将軍・家茂(志田彩良)。しかし王者の器も、才覚もある彼女が幕末の波に飲み込まれ……。『大奥』20話(幕末編5話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。19話レビューはコチラ。
今夜、200年以上続いた「大奥」の終焉が来てしまう
ニセ和宮(岸井ゆきの)と心を許し合い、仲睦まじくなってゆく14代将軍・家茂(志田彩良)。しかし王者の器も、才覚もある彼女が幕末の波に飲み込まれ……。『大奥』20話(幕末編5話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。19話レビューはコチラ。
慶喜(大東駿介)の安易な提案によって上洛することになった家茂(志田彩良)。髪を切り、男のなりで帝の前に現れて心を掴んだ家茂は、勝(味方良介)の助言をもとに直接帝に開国の意義を伝えて説得する。結果、帝を納得させたばかりか、ニセ和宮=親子(ちかこ/岸井ゆきの)の存在を明かし、親子が帝の妹であるという宸翰(しんかん/帝による自筆の文書)を書いてもらうことにも成功。降ってわいた、本来は“ご機嫌取り”くらいしか意味のなかった上洛に大きな意味をもたせた家茂の切れ者ぶりがここでも光っていた。
京都に残してきた本物の和宮のことを案じて取り乱すようになった親子の母・観行院(平岩紙)のため、秘密裏に京都に帰れるよう取り計らった家茂。観行院に対し、「親子さんを慈しんでさしあげて」と伝える。けれどそれを受けて観行院の放った「悪いお母さんで堪忍な」という言葉は、親子を救うどころか最後まで和宮のことだけを愛していると表明しているようなものだ。「『親子さんもかわいい』とは言ってくれなかった」という親子だが、母の愛がほしくて婿入りの身代わりを申し出たほどの執着は今は落ち着いているようだ。
家茂は相手の思いを慮り、それによって気持ちを掴むことに長けている。そんな中でも、親子の思いを深く理解していること、そして本当に胸を痛めていることが親子自身に伝わっているのだろう。血だけ繋がっていても心のない母が京都に帰ったとしても、血は繋がっていないし夫婦にはなれなくても、誰よりも自分に寄り添い、影として生きてきた自分を「私の光」と言ってくれる家茂がそばにいる。親子は家茂によって、初めて孤独を癒やされたのかもしれない。
Edit: Yukiko Arai