朝廷から婿入りしてきた和宮(岸井ゆきの)がなんと女性! 外には決して漏らせない事態を一人受け入れる14代将軍・家茂(志田彩良)。『大奥』19話(幕末編4話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。18話レビューはコチラ。
家茂(志田彩良)が和宮(岸井ゆきの)の「光」を見出す
朝廷から婿入りしてきた和宮(岸井ゆきの)がなんと女性! 外には決して漏らせない事態を一人受け入れる14代将軍・家茂(志田彩良)。『大奥』19話(幕末編4話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。18話レビューはコチラ。
幕府の夢、公武合体を背負って朝廷から江戸城へとやってきた和宮は女だった。嫌がる弟の身代わりとしてやってきた実の姉だったのだ。
ニセの和宮(岸井ゆきの)はふてぶてしい態度を崩さない。彼女について京都からやってきた公家の人々は幕府の人間に対して見下した態度をとる。城の中は江戸VS京都、幕府VS朝廷といった趣に。瀧山(古川雄大)や天璋院(福士蒼汰)らも心配する中、家茂(志田彩良)は、朝廷から来た和宮が女であることを固く秘すよう命じ、自らもニセ和宮に終始やさしく接する。
そんななか、朝廷側が慶喜(大東駿介)を後見職につけようと画策していることを知る家茂。すかさず先手を打ち、自ら慶喜を後見職に据えると宣言する。結果としては同じことだけれど、朝廷の言いなりになったのではなく、自分たちが決めたことという形にすることができた。
19話は、家茂のこの咄嗟の判断が光る回だった。ニセ和宮への接し方といい、危機が迫ったときの機転のきかせ方といい、いかにも仕事のできる人、な振る舞いだ。それは全て幕府を保つため、つまり戦のない世の中を守るため。力のある諸外国、幕府を打ち崩そうとする朝廷や薩摩、水戸。彼らの中にあって、家茂は常に民と未来を見ている。それこそ13代将軍・家定(愛希れいか)が家茂に見いだしていた「王者の器」なのだろう。
だからこそ、家茂と目先の体面だけしか見ていない慶喜とは通じ合うことがない。家茂と慶喜が会話するシーンは、この先慶喜が15代将軍となる未来を知る視聴者にとっては虚しさが去来するものだった。慶喜の提案する229年ぶりの上洛も、ご機嫌とりでしかない。けれどそれさえも、家茂はチャンスに変えてしまう。なんてできる人!
Edit: Yukiko Arai