Comme des Garçons(川久保玲) 2020 年春夏 © 京都服飾文化研究財団、撮影_来田猛
2024年11月24日(日)まで、京都国立近代美術館で展覧会『LOVE ファッションー私を着がえるとき』が開催中。京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する衣装コレクションを中心としたファッション、そして現代アーティストの作品から“私”という存在を考える。
京都服飾文化研究財団が所蔵する衣装コレクションから現代の“私”を見つめ直す
Comme des Garçons(川久保玲) 2020 年春夏 © 京都服飾文化研究財団、撮影_来田猛
2024年11月24日(日)まで、京都国立近代美術館で展覧会『LOVE ファッションー私を着がえるとき』が開催中。京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する衣装コレクションを中心としたファッション、そして現代アーティストの作品から“私”という存在を考える。
1980年以降、8度に渡って共同でファッションの展覧会を開催してきた京都国立近代美術館(MoMAK)と京都服飾文化研究財団(KCI)。これまでに、『モードのジャポニスム』(1994)、『身体の夢』(1999)など、いろいろな切り口で“美術館における衣装展”を行ってきた。
新しくはじまる展覧会のテーマは“LOVE”。京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する18世紀から現代までの衣装コレクションとともに、人間の根源的な欲望を照射する現代アートも紹介。ファッションとともに21世紀の絵画や写真を通して、さまざまな“LOVE (情熱や願望)”の形を考える内容になっている。
本展を構成するのは、着ることにまつわる欲求。「自然にかえりたい」「綺麗になりたい」「ありのままでいたい」「自由になりたい」「我を忘れたい」という5つのキーワードから成る。
はじまりを飾るのは、「自然にかえりたい」と題したセクション。各時代に現れた動物素材や植物柄のファッションが展示される。華やかな花柄が刺繍された18世紀の男性用ウエストコート、20世紀前半に流行した鳥の羽根やはく製が装飾された帽子、毛皮不使用や環境保護を標榜するエコファーのコートなどに加えて、人間の毛髪を素材とした小谷元彦の作品も並ぶ。
「綺麗になりたい」というセクションでは、衣服の流行を作り上げてきた美への憧れを思わせるディテールに迫る。19世紀の身体美の要を担ったコルセットや、布地の芸術作品として卓越した造形で魅惑するクリストバル・バレンシアガなど、20世紀中葉のオートクチュール作品が中心。そのほか、〈ヨウジ・ヤマモト〉や〈ジル・サンダー〉など現代ファッションとともに、衣服のかたちに現れた多様な“美しさの創造力”が集結する。
「ありのままでいたい」というのも願望の一つ。たとえば、18世紀末にフランス王妃マリー・アントワネットが好んだというシンプルな王妃風シュミーズ・ドレス、あるいは平凡さを肯定的に容認する現代服のなかには、そんな願いが垣間見える。1990年代以降に〈プラダ〉や〈ヘルムート・ラング〉らが牽引したミニマルなデザインの服や、ミニマル・ファッションの究極系とも表現できる、いわゆる“下着ファッション”にフォーカス。同じ空間には、ヴォルフガング・ティルマンスの写真や松川朋奈の絵画がかけられている。
4番目のセクションは「自由になりたい」。小説『オーランドー』(1928年)に触発された「コム・デ・ギャルソン 2020年春夏コレクション」「コム・デ・ギャルソン オム・プリュス 2020年春夏コレクション」、そして、川久保玲が衣装デザインを担当したオペラ作品《Orlando》(2019年)の三部作を一挙に紹介。異なる時代に制作された文学と衣服に通底する、アイデンティティに対する普遍的な問いかけを探るラインナップに。
最後の「我を忘れたい」というセクションでは、“まとう”という一瞬のときめきや楽しさを伝えてくれるゴージャスな装いが集められた。〈トモ・コイズミ〉によるフリルやリボンを用いたドレスや、大胆な唇が印象的な〈ロエベ〉のドレスは眺めているだけでロマンチック。その一方で、ファッションへの尽きない“目移り”も取り上げ、際限のない欲望の姿を仮託しているかのようなAKI IMONATA の彫刻も同居させている。
衣服を着る人、創作する人、それぞれの立場から注がれる情熱。そして、時代を物語る願望や葛藤が映し出される作品群は、目の前にしてはじめて感じる“LOVE”があるかもしれない。
日程_2024年9月13日(金)~11月24日(日)
開館時間_10:00~18:00(金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
会場 _京都国立近代美術館(岡崎公園内)
住所_京都市左京区岡崎円勝寺町
休館日_月曜日
*ただし9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館。翌日火曜日は休館。
観覧料_一般:1,700円(1,500円)、大学生:1,100円(900円)、高校生:600円(400円)
*熊本市現代美術館、東京オペラシティ アートギャラリーに巡回予定。
Text_Nico Araki