スケボー、F1、サッカーにバスケ…センスのいいあの人も、スポーツ観戦に夢中。その魅力を熱く語ってもらいました。観戦気分を盛り上げるファッションアイテムもご紹介!#観戦マニアの偏愛プロダクト
スケートボード観戦マニア、漫画家マキヒロチの偏愛プロダクト
きっかけは、ビースティ・ボーイズのMV
Skateboard
「自分の芸術」と
向き合う姿を応援

「私が好きなのは、常に自分の芸術と向き合っているスケーター。その姿を応援したくなるし、観ていると自分もポジティブになれるんです」
スケートボードは戦いであり表現でもある。憧れを憧れで終わらせないガールズスケーターたちを描いた漫画『Sketchy』の作者、マキヒロチさんはそう話す。スケボーに興味を持ったきっかけは90年代、中学生の時に好きだったビースティ・ボーイズだ。彼らのMVを通してスケーターカルチャーに触れ、以来ずっと憧れていた。時は流れて2017年。マキさんは、スケボーを題材に連載漫画を描くことを決意し、自身もスクールに通って練習し始める。
「その時にハマったのが、街のスケーターたちを撮ったスケートビデオです。スケボーの技はワントリックがわずか2、3秒。そのカッコいい瞬間を集めまくって作られているから、毎秒興奮するくらいすごいんです。名作では無名時代のスパイク・ジョーンズが撮った『Video Days』や、ヒップホップ黄金期の『MIXTAPE』。最近だと日本のガールズスケーターを撮った『joy and sorrow』シリーズには、次代のスケーターや新星もたくさん出ています」
そんなスケボーがカルチャーとしてだけでなくスポーツとしても注目され始めたのは7、8年前。オリンピック競技に選ばれ、「X GAMES」などの世界大会も定着した。
「私は、当時高校生だった西村碧莉ちゃんが『X GAMES』で日本人初の金メダルをとったのを観て、観戦も楽しいんだ!と知りました」
スケボーの主な競技は「パーク」と「ストリート」。パークはプールを模したボウル型のコースでトリック(技)やジャンプを競い、ストリートは、階段や縁石や手摺りで「街」を再現したコースを滑る。街は毎回変わり、選手がその回のデザインを知るのは会場入りしてからだ。
パークといえば、東京オリンピックの女子決勝では、アメリカのブライス・ウェットスタイン選手がウクレレを弾きながら登場しましたよね。ファッションも含めて楽しんでる感じ、私はすごくいいと思う。一方のストリートは、選手がその街でどうやって遊び、どんな技を繰り出すのかが見どころ。以前、都市の研究をしている方がスケーターのことを『街をこんなに面白く見ている人たちを他に知らない』と言っていたのですが、確かに彼らって、日常的に『あの建物のカーブ、滑りやすそう』『このオブジェを飛び越えたらカッコいいはず』みたいなことを言う。試合に挑むマインドにも、街で生きる視点が組み込まれているのかな。“この選手は今、街のどこを滑ってる?”と想像するとワクワクします」
ハイライトは、これと決めた難しいトリックを5本披露するターン。「一発逆転を狙うような大技に臨むことが多く、失敗も少なくない。でも会場中が緊張する中で完璧なトリックが決まった瞬間の、一気に盛り上がる空気感はすごい。当然ですけど、努力だけが報われる世界なんですよね。互いの芸術を称え合うピースフルな気持ちが根底にあるのもいいなって思います。目の前の壁を一つずつ乗り越えて大技を成功させたら、みんなが“お前すげーな”ってリスペクトする。そういう横ノリ系競技なのに、真面目な日本人が強いのも面白い。自分と真剣に向き合うマインドが合うのかもしれませんね」
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マキヒロチ
>> 漫画家。作品に『いつかティファニーで朝食を』(新潮社)、『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』(講談社)。『Sketchy』北米版はニューヨーク公共図書館2024年ベスト10に。『おひとりさまホテル』(新潮社)6巻発売中。
Photo_Ryuichi Adachi Text_Masae Wako